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元高校教員がChatGPTで学習プリントを作成してみました


1. はじめに

授業準備は教員にとって最も重要な業務です。しかし、そこに費やす時間が限られているという課題もあります。高校教員の場合、学校により差はありますが、空き時間があります。それでも、1日6時間から7時間の授業のうち、平均4時間、週20時間は授業に充てられます。この限られた時間の中で、効率的に授業準備を進めることが求められます。

私は元地理歴史・公民科の教員で、新しい学習指導要領により新設された公共の授業を担当しました。新設された科目の教材を一から作り直すのは大変な作業であったことを覚えています。

このような背景から、授業準備を効率化するためのツールが求められています。近年、AI技術の進歩により、教育現場でも新しいツールの導入が進んでいます。その中で、ChatGPTは自然言語処理に特化したAIとして注目を集めています。今回は、このChatGPTを活用して公民科「公共」の学習プリントを作成し、その効果を検証します。従来の方法とChatGPTを利用した方法を比較し、どの程度業務効率化が図れるのか、また教員の負担が軽減されるのかを考察します。

この実験を通じて、ChatGPTの実用性や可能性を探り、教育現場におけるAI活用の一助となることを目指します。

2. 公民科「公共」の学習プリント作成の流れ

従来の方法と準備時間

私は教員時代には以下の方法で教材を準備していました。

  1. その単元の教科書を読む
    まず、担当する単元の教科書を熟読し、全体の流れや重要なポイントを把握します。

  2. その単元の資料集など関連教材を読み、知識を得る
    教科書に加え、関連する教材や参考書を読み込んでさらに知識を深めます。

  3. 授業の進め方(授業案)を考える
    収集した知識をもとに、生徒の理解度や学習進度に合わせた授業の進め方(授業案)を考えます。

  4. 生徒に合ったオリジナルのプリントを作る
    授業案に基づいて、生徒の理解を深めるためのオリジナルプリントを作成します。ここでは、教科書会社から提供されたデジタル教材を参考にすることもあります。

これらのステップを踏むことで、1つのプリント作成には平均して2時間から3時間ほどかかりました。プリント作成後はスライドや小テストの作成も行い、授業全体の準備を整えます。

ChatGPTの使い方と作成にかかった時間

今回は、ChatGPTを利用して学習プリントを作成する方法を検証しました。具体的な手順は以下の通りです。

  1. GPTsに作成してもらいたい単元を指示して、プリントを作成してもらう
    ChatGPTに、作成してもらいたい単元を指示し、内容を生成してもらいます。

  2. あらかじめ準備していたプリントのフォーマットにコピー&ペースト
    生成された内容を、あらかじめ用意していたプリントのフォーマットにコピー&ペーストします。

  3. プリント完成
    最終確認を行い、プリントが完成します。

この方法を用いることで、プリント作成にかかる時間は平均して15分ほどに短縮されました。今回の検証ではプリント作成のみに特化していますが、スライドや小テストの作成についても、今後ChatGPTを活用して準備を進めたいと考えています。


[プロンプトの例]
[プロンプトの例]

3. 実際に作成した学習プリントの例

ここでは、実際に作成した学習プリントの例を提示します。従来の方法で作成したプリントと、ChatGPTを利用して作成したプリントを比較することで、それぞれの特長や違いを明確にします。

従来の方法で作成したプリント

まず、従来の方法で作成したプリントを紹介します。以下のデータをご覧ください。このプリントは、以下のステップを経て作成しました。

  1. その単元の教科書を読み、重要なポイントを把握する。

  2. その単元の教材を読み、知識を深める。

  3. 授業の進め方(授業案)を考える。

  4. 生徒に合ったオリジナルのプリントを作成する。

[従来の方法で作成したプリント]

ChatGPTで作成したプリント

次に、ChatGPTを利用して作成したプリントを紹介します。以下のデータをご覧ください。このプリントは、以下の手順で作成しました。

  1. GPTsに作成してもらいたい単元と授業の進め方(授業案)を指示し、内容を生成してもらう。

  2. あらかじめ準備していたプリントのフォーマットにコピー&ペーストする。

  3. プリントの体裁を整える。

  4. 最終確認を行い、プリントを完成させる。

[ChatGPTで作成したプリント]

これらのプリントを比較することで、ChatGPTを利用した場合の利便性や効率性を具体的に確認することができます。詳細な比較は次の項目で行います。

4. ChatGPTを使った学習プリント作成のメリット

ChatGPTを活用することで、学習プリントの作成に関して多くのメリットが得られます。ここでは、具体的な業務効率化の例と教員の負担軽減について詳述します。

業務効率化の具体例

  1. 教材作成時間を大幅に減らすことができます
    従来の方法では、1つの学習プリントを作成するのに平均2時間から3時間かかっていました。しかし、ChatGPTを利用することで、プリント作成にかかる時間はわずか15分程度になりました。これにより、授業準備の効率が飛躍的に向上します。

  2. 迅速なフィードバックと修正
    ChatGPTを使用すると、生成された内容に対して即座にフィードバックを行い、修正することができます。これにより、より迅速かつ正確な教材の作成が可能になります。

教員の負担軽減

  1. 教材研究に専念できる
    授業には専門性が求められます。従来は学習プリントの作成に多くの時間を割いていたため、教材研究に十分な時間を確保するのが難しい状況でした。しかし、ChatGPTを利用することで、教材作成の時間を大幅に削減できるため、教員はその分を教材研究に充てることができます。これにより、授業の質を向上させることが可能になります。

  2. ストレスの軽減
    教材作成の負担が軽減されることで、教員のストレスも軽減されます。特に新しい単元や科目の準備は大変な作業ですが、ChatGPTのサポートを受けることで、教員はよりリラックスした状態で授業に臨むことができます。

5. ChatGPTを使う際の注意点

ChatGPTを利用する際には、以下の点に注意する必要があります。これらの注意点を把握し、適切に対処することで、より効果的にAIを活用することができます。

正確性と信頼性

  1. 教材内容が十分ではないことがある
    ChatGPTが作成したプリントは、必ずしも学校や生徒の実態・レベルに完全に適合するわけではありません。授業用プリントは、生徒の理解度や学習進度に合わせて作成する必要がありますが、ChatGPTの出力内容がそれに完全に応じているとは限りません。そのため、生成されたプリント内容が十分であるかを確認し、必要に応じて教員が修正を行うことが不可欠です。

  2. 一貫性の問題
    同じ内容を指示しても、ChatGPTが生成するプリントの内容が異なることがあります。これはAIの特性上避けられないため、教員は生成されたプリントを必ず確認し、一貫性を保つための修正を行う必要があります。

プライバシーとセキュリティ

  1. 著作権の問題
    教材は基本的に教科書に基づいた内容であるべきです。しかし、ChatGPTを利用して生成された内容が教科書会社の著作権に抵触する可能性があります。どこまでChatGPTに学習(参考)させるかという問題は、今後の課題となります。教科書に合致しないプリントを使用することは授業の一貫性に影響を与えるため、この点については慎重に検討する必要があります。

  2. プライバシーの保護
    ChatGPTを利用する際には、生徒や教員の個人情報が含まれないように注意する必要があります。特にオンラインでのやり取りが増える中、プライバシーとセキュリティの確保は重要な課題です。

これらの注意点を踏まえ、ChatGPTを効果的に活用するためには、教員自身が生成された内容をしっかりと確認し、必要に応じて修正を行うことが重要です。

6. まとめ

今回の検証では、ChatGPTを活用して公民科「公共」の学習プリントを作成し、その効果を従来の方法と比較しました。以下に、これまでの内容をまとめます。

業務効率化の比較

従来の方法では、学習プリントを作成するために多くの時間と労力が必要でした。教科書や教材を読み込み、授業の進め方(授業案)を考え、生徒に合ったオリジナルプリントを作成するには平均して2時間から3時間かかりました。一方、ChatGPTを利用することで、プリント作成にかかる時間は平均15分程度に短縮され、業務効率化が大幅に向上しました。

ChatGPTの利点と課題

利点

  1. 教材作成時間の大幅な短縮
    ChatGPTの活用により、教材作成にかかる時間を大幅に削減できました。これにより、教員は他の重要な業務に時間を割くことができるようになります。

  2. 専門性の高い授業準備への時間確保
    学習プリント作成の時間が短縮されることで、教員は教材研究や授業計画の策定により多くの時間を充てることができ、授業の質を向上させることができます。

課題

  1. 内容の正確性と信頼性
    ChatGPTが生成する内容は、生徒の実態やレベルに完全に適合するわけではありません。教員による確認と修正が不可欠です。また、一貫性を保つために生成された内容を慎重にチェックする必要があります。

  2. プライバシーとセキュリティ
    教材作成において、教科書の著作権に抵触しないように注意する必要があります。さらに、ChatGPTを利用する際には、生徒や教員の個人情報が含まれないようにプライバシー保護に努めることが重要です。

今後の展望

ChatGPTを活用することで、授業準備の効率化が期待できますが、その一方で正確性やプライバシーの問題にも注意が必要です。今後は、ChatGPTの利用方法を工夫し、さらに効果的な教材作成手法を確立していくことが求められます。また、AI技術の進展に伴い、教育現場でのAI活用の可能性が広がることを期待しています。

以上のように、ChatGPTを利用した学習プリント作成は、教員の業務効率化に寄与する一方で、いくつかの課題も存在します。これらの課題を克服しながら、教育現場でのAI活用を進めていくことが重要です。

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