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オランダの教育事情/イエナプラン

 オランダの教育は、OECDが行っている学力調査PISAでヨーロッパで常に上位を占めており、またユニセフが行っている子供の幸福度調査でも世界1位になっていることから、「学力が高くて幸せな子供が多くいる」ということで注目を集めている。そんなオランダで今注目を集めている新しい教育が、イエナプランと言われる教育方法である。
 
 そのイエナプランの特徴をいくつか挙げると、学年制でなく三学年が一つの教室で一緒に学び合うこと、決められた時間割が存在せず自分でその週、何をどのように勉強するのか決められるということ、さらに教師が教壇に立って一斉授業を行うということをせず、子どもたちは小さなグループに分かれて、それぞれのペースでお互いに教え合いながら学習を進めていくというスタイルをとることなどがある。日本の同質的・画一的な教育と比較したときに、オランダの教育は個人を重視した個別的・多様的な教育であると整理することができるだろう。
 
さて、このようなオランダの教育を日本の公教育にどのように生かしていくべきかであるが、それにはオランダの法整備についてから理解しなければならない。プロテスタント、カトリック、多様な宗教と宗派が混ざり合うオランダでは宗教観も色々あれば教育観もさまざまである。そういった事情から教育の自由が国によって広範囲に認められ、200人以上の生徒がいればどんな市民団体、あるいは教会でも学校を設立でき、そうした私立の学校であっても公立と同じだけの補助金を政府から受け取ることができる。言い換えれば、多様な教育観、最先端の理論に基づいた学校が公立の学校と同じくらいの学費で実現することができるのである。
 
むしろ全国各地なるべく同じ水準の教育レベルを維持しようとして整備された日本の公教育制度とオランダの教育制度が上手く折衷する案を考えるのは難しいのだが、一般社団法人日本イエナプラン教育協会理事の中川綾氏は「イエナプラン教育はメソッドではなくコンセプトだ」と主張する。つまり、イエナプランが大切にする20の原則(これがイエナプランの中心コンセプトだ)を尊重した学校づくりを、日本の公教育の中で進めていくことが可能で実際イエナプランの理念に基づけばそうあるべきなのである。
 
 例えば、「年齢や発達程度の違いがある子どもたちを一緒にすることでお互いの違いを学べる」という原則に基づけば、例え学年制を廃止しなくても、ある一時間だけ理科の授業を小学3年生と6年生が一緒に行ったり、算数の時間にいつもなら習熟度別に分けているクラスをたまにはごちゃ混ぜにしてみて、発達度の違う子供同士で教えあう時間を確保したり、工夫すれば改善していくことができると思うのである。

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