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市場価値には繋がらない「好き」の強さ

箸にも棒にもかからないしがないクリエイター活動をしている。
言葉遊びと刺繍をするのが好きで、友人の新たな門出やお祝いごとにはその友人にまつわるストーリーに掛けたプレゼントをしていた。


酸っぱいものが好きな友達に
レモンを活かしたレシピがうまい料理研究家の友人には "Top Lemonista"の称号とともに

お店を出すのでコースターを作って欲しいと言われた時には

パインの王子、ピーターパイン
防虫剤を作った時は、セーターを虫から守るmoth baster
くじらの水飛沫をお花に見立てたラベンダースプラッシュ(芳香剤)
3度の飯よりカレーが好きな友人用のカレーランチョンマット
カナダへチャレンジしにいく後輩に、カナダ国旗のサイコロと"犀は投げられた"

とにかくその人の好きなことや挑戦している姿・日常生活を思い浮かべながら手に取った時に、自分らしさを思い出してもらえるような、それでいてクスッとできるようなデザインを考え、ひと針ひと針刺していく時間が至福の時間なのです。

大抵はプレゼントとして勝手にこちらが作っているもので、たまーに”友人価格”で頼まれものをハンドメイドしていました。

そんなある日、とある人から「コッシーちゃんの刺繍で手帳カバーを作ってほしい」というメッセージをもらいました。

しかも、「金額はいくらでもいい。とにかくコッシーちゃんの作る刺繍がとても好きなので、友人価格などではなく適正価格でオーダーしたい」と。

スマホを握る手が震えるくらい嬉しかった。

彼女の持つ「自分が価値を認めるものは誰がつくったものでも正当に評価したい」という彼女のその倫理観も、好きなことが仕事になる人がもっと増えたらという心強いエールも、しばらく仕事が手につかないくらい舞い上がり、しばらくスマホの上で踊る吹き出しに目が釘付けだった。

彼女とは20年前のニュージーランドで知り合った。お互い初めての海外生活で同世代だったこともあり、それなりに仲良くなったけど、帰国してからは例に違わずお互いの生活が忙しく国内でも関西・東海と離れていることもあり、なかなか会えずにいた。3年ぐらい会わないこともあったけど、彼女の結婚式には出席したり、お互い別の旅行中で偶然近しい日程だったことからニュージーランドで再会したこともあった。

日常の細かいアップデートこそ知らないけど、節目や転機となる時の話をじっくりゆっくり語り合う、そんな友人。

彼女から「私の刺繍をオーダーしたいぐらい好きだ」と言ってもらえるのは、心の底から嬉しかった。

私と同じく旅が大好きで、保守的でありながら冒険心あふれた生き方をしている彼女の出発点とも言えるニュージーランドの景色を思い出して欲しくて、シダ植物や"Life is a journey, not a destination(人生とは旅であり目的地ではない)"を刻みました。

それから2年、彼女から「これ、手洗いしたよ♡」と青空に揺れる手帳カバーの写真が送られてきました。

「いろんなところで素敵だねって褒められるよ、ありがとう」の文字を添えて。

人生いろんなことがあるけど、こんなに自分の表現が愛されることの喜びを深く感じたことはないかもしれません。

生きててよかったぁ・・・


文章を書くとか、ダンスするとか、ビジネスに長けてる、とか、自己表現の幅はとても広いけど、私ができる表現方法はこれなのかもしれない。

人生の早い段階で「何が得意か」「自分の生業」に出会う人もいますが、一生出会えないまま死んでいく人もいます。

何歳であっても「自分を表現できる方法」に出会えたらそれだけで生きる気力が湧いてくるもんだと感じさせられた立春の夕べなのでした。

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