「靴ひもへの手紙」
「靴ひもへの手紙」
子どものころ
マジックテープ式の靴を履いていた
靴紐式のスニーカーを初めて履いたのは
たしか小学五年生のとき
おとなへの階段をすこし登った気がした
ほんの一段だけ
だけどちょうちょ結びがまだできなかったので
靴紐がほどけたときは友だちに結んでもらったりした
どれぐらい靴紐をきつくすればいいのかわからなかった
あれからたくさんの時間が流れた
正直未だによくわからない
きつくしすぎたら
脱いだり履いたりするときにたいへん
ゆるかったら
なんだか歩きにくい
あれからぼくはどのぐらいおとなの階段を登れたのだろうか?
正直未だによくわからない
わからないうちは
きっとまだおとなじゃない
みんなわかってる?
「手紙を読む」とは?
作家・菊池良によるシン・人類な朗読番組。
身近な「もの」たちにカジュアルな手紙をおくることで、新たな発見を楽しむ実験的なプログラム。
非生物な「もの」に愛着を持つことで、ニュースタンダードな共生の世界を描きだす。
人間同士が激しくチャットが交わす現代社会で、「手紙」の新たな可能性を探究する。
菊池良プロフィール
執筆、漫画原作、作詞などの分野で活躍中。2013年に公開したサイト「世界一即戦力な男」が話題になりドラマ化、書籍化。2017年、『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』(宝島社)が17万部を超えるベストセラーに。LIG、ヤフーを経て独立。ほかに『ニャタレー夫人の恋人』(幻冬舎)『タイム・スリップ芥川賞』(ダイヤモンド社)『めぞん文豪』(少年画報社)など。
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