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【創作夢日記】朝起きたらアザラシになっていた50〜けものみちプロ【一話完結】

※この話は夢日記風のフィクションです。実在する人物・団体名とは何ら関係ございません。100%作者の脳内妄想のみで構成されています。

朝起きたらアザラシになっていた俺は同時に芸能プロダクション「けものみちプロ」の社長兼プロデューサーでもあった。

「けものみちプロ」の由来は、アザラシな俺が己の私有地に私道を作ったはいいものの、勝手に車両が通るものだから吠えて注意していたら通称「けものみち」言われてインスタに劇バズりしてしまう。

その勢いで芸能プロを作っていまに至る。

私有地なので自社ビルで営業するが、弱小プロダクションである。

どれだけ弱小かというと、所属タレントに人間がいない。取材記者から「動物園みたいな匂いがする」など失礼なこと言われたこともある。

さて、所属タレントをざっと紹介しよう

トップはまだ横浜市ウルタールでスカウトした我が社の逸材、米倉くんだ。

下手なオスより凛々しい雌猫。
ワイルドに見えて実は飼い主からバレエを教わった毛並みの良い子。

舞台劇が好きでいつか、ブロードウェイ・ミュージカル「シカゴ」に出演するのが夢。

以上で紹介は終わりだ。
他の所属タレントもおいおい紹介してゆく。

「けものみちプロ」の活動はというと、不本意だが俺様のグラビア写真が一番のドル箱だったりする。

スペイン内戦の写真で有名な写真家ロバート・キャパは自身が経営する「マグナム・フォト」の赤字を競馬で補填したという逸話があるが、俺はギャンブルなどしない!

なぜ社長の俺がヌードにならないといけないのだ!と不平不満を並べたてつつも所属タレント食わすためと、カナダからヘリでマドレーヌ島沖の流氷に寝転がり今日も撮影。

ナショナル・グラフィック誌専属カメラマンの指示通り目薬で目を潤ませたり、上目遣いをしながら米倉くんのスケジュールを考える。

手前みそだが、米倉くんは大化けしそうな予感する。
ひたすら稼いだ金は投資と称して重点的に米倉くんのレッスン費用へ回している。

その甲斐あって巻頭カラーでグラビアデビュー。

北九州で拾ったライター、キヨハル君の原作『黒革の手帳』がドラマ化したからごり押しで出演させる。

拾った恩で『2001年宇宙の旅』『シャイニング』のスタンリー・キューブリック監督に対して無茶振りした大魔神カーク・ダグラスの如く、キヨハル君に「この通り!」と土下座して頼み込み主役にねじこんだ。

コネで主役にねじ込んだ経緯から成功するか不安だったが、米倉くん演じる悪女っぷりがどハマり!高視聴率を獲得した。

のちに『けものみち』『わるいやつら』と清張三部作に出演が決まる。

その後も女医を演じてはシリーズ化するなど破竹の勢いだ。

米倉くんの出演作を語り続けると夜が明けるから1作に絞ると、やはり『黒革の手帳』だろう。

マッチョイズムと「べき論」で性別の役割が強かった昔の話、銀行員の米倉くんは億単位のお金を横領して逃げる。

その後、度々銀行に現れるも、かつての上司は警察に突き出せないまま指を咥えて見るばかり。

米倉くんは銀行を辞める前、黒革の手帳に隠し口座と口座名義人、金額を全てペンで書き取っていたからだ。

突き出せば銀行が脱税とマネーロンダリング(資金洗浄)に協力した不祥事が明らかになる。

あらすじはこんなところだ。この作品は何度もドラマ化されているのだが、米倉くんと男性キャストが立ち並ぶ画をみると米倉くんがデカい。

小学校3年からバレエ団に通ってた米倉くんの体幹ならば、ブロードウェイ出演を望むのも無理はなかろう。

この小説が書かれた1980年はいまよりも女性の立場が弱く、男子の庇護を受けないと生きてゆけない状況も多かった。

そんな時代に男子たちを手玉にとって強く、したたかに生きてゆこうとする逞しい女性のピカレスクロマン(悪漢小説)なので、性別問わずパワハラ上司、ブラック企業ほか抑圧された環境に身を投じている人は読んでいて共感するだろう。

悪党になりきれない主人公と社会的に弱い女性たちとのシスターフッド要素も好きな人は楽しめるだろう。

ただし、見ていて女同士の友情が保たれるようには見えない。どこで女同士の戦いになるか予想してみるのも一興だ。

男たちから脱税で貯めた汚い金を奪う時のBGMが必殺仕事人のようでもあって、そこも時代劇見ていた者には◎。

主人公の「お金に復讐」するさまも是非、本編または本書で見届けてほしい。

最近、米倉くんは東京新聞の記者をモデルに『新聞記者』の役作りをしているのだが、俺が近畿財務局から払い受けた公有地に建設予定のタレント学園について、やけに詳しく聞いてくる。

悪い予感しかしない…

おっと、長話はここまでにしてしよう。エンディングに俺の好きなサックス曲でしばしお別れだ。



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