見出し画像

素焼き窯とオクタゴンの話

5月11日 快晴

本日のBGM Carpenters


朝起きたら天気がよかったので
昨日の時点でまだ乾き切っていなかった
小皿を天日干しに。

画像1

水分が残っている状態で焼いちゃうと
温度が上がった時に破裂してしまうので
焼く前はしっかり乾かす必要があります。

まあでもこのくらいの小皿なら
焼いてるうちに水分が抜けたりもするけど、
天日干しするのには
ちゃんと乾かしたから大丈夫と
自分を安心させてあげる効果もあります。

画像2

素焼きする窯は決まっていて
庚申窯ではこの八角形の小型の窯が
素焼き専用で動いています。

画像3

この窯は趣味で陶芸をされてた方が
亡くなられて、その奥さんから
もう使わないので引き取って欲しい
ということで庚申窯に来たものです。

この八角形式というのは業者の人に聞いたところ
アメリカなどではこの方式が多いそうで、
かなりでかい窯でもこのスタイルだから
窯に焼き物を詰めていくのに
常に腰をこごめた状態になるので
陶芸家の消耗品である腰が
すごく痛くなるということでした。

合理的な国だから それ以上の利点が
何かあるんでしょうね。
ちなみに日本は前開き式が主流だそうです。

画像4


膝上くらいまでしかないからかなり小さいです。


この電気窯が来たときは
「ちょっとの量で焼けるからいろいろ実験できるぞ」
と思ったのですが、
またしても業者の人に聞いたところ
この窯に使われている電熱線がかなり細く、
この電熱線で1200度とかまであげちゃうと
すぐに線がダメになって
温度が上がらなくなるとのこと。

実際にこの窯の電熱線も一度ダメになって
すでに張り替えられていたようでした。

画像5

じゃあ太い線に張り替えたらいいんじゃないの
と聞いたら、
この窯はレンガの溝の幅が狭いから
これ以上太い電熱線は使えないとのこと。

なのでこの窯は本焼きするごとに
どんどん性能が下がっていくということだから
800度までしかあげない素焼き専用になりました。
1000度超えなければ電熱線は
かなり長持ちするのだそうです。

窯の購入を検討されている方は
電熱線の太さをチェックされると
良いかもしれませんね。特に中古。
ていうか窯買うよりも どっかの窯元に
頼んで焼いてもらった方が
きっと安上がりですけどね。
清酒で話がつきますよ。

画像6

素焼き専用なので窯の耐用年数は
それほど計算に入れないとしても
電気代はかかりますから
一度に焼く量は多くしたいものです。
こんな風に綺麗に重なるやつだと
素焼きの窯つめは大変しやすいですね。

それに器も重なるもののほうが
収納にも良いですから、
まずは重なることを条件に
形を決めていこうと思いました
今年から。
今までは形優先でしたけど
機能性が優れたものは
長く使われるなあと思いまして。

画像7

こういう上からフタを閉めるタイプの窯は
最後に器が飛び出してないかチェックしてから
フタを閉めます。
飛び出してたら圧迫されて割れますからね。

実際に肉眼で見ると、
中に入れたものの方が
上にせり上がって見えるので、
このチェックは
もうちょっと入るよ っていう
ためのものでもあります。
このお皿の高さだと
一枚分くらい見誤りますね。

画像8

蓋をして電源を入れますが、
器の水分や窯の中の湿気は
ゼロではないので
200度くらいまでこのように
隙間を開けて蒸気を逃してあげます。
そうすると温度が上がりやすくなりますし、
窯も長持ちするようになります。
たまにそのまま800度まで忘れてたりするけど。


腰の負担になるのはいただけませんが
見た目としてはこの八角形の窯は結構好きなので
長く使っていきたいですね。

ちなみに八角形はオクタゴン、
オクトはラテン語の「8」で
オクトパス(タコ)やオクターブ(8度音程)も
同じ由来ですが、
オクトーバーも8から来ています。
でもオクトーバーは10月。
なぜなのか。


それは古代ローマでは暦というのは
今の3月から12月までしかなく
1番目の月から10番目の月という暦だったので
現在の10月というのは
8番目の月だったのですね。

なぜ1月2月がなかったのかというと
「この寒くて作物も育たない冬ってのは
なんてつまらないんだ!こんなしょうむない時期に
日付なんて必要ないわい!」
ってことで今の3月スタートだったそうです。


いやーその価値観は私は多いに歓迎ですけどね。
1月2月はもうなるべく寝て過ごす時期みたいな。
自然に左右される生活をしてると
そのような価値観になるのかもしれません。
これからの時期が私は好きですね。

おれ


高鶴裕太 コウヅルユウタ
陶芸家
1991年生まれ
2013年横浜国立大学経済学部卒業
上野焼窯元 庚申窯3代目

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?