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留学と「じりつ」

とある状況を目の当たりにして、改めて思い知らされた事があります。

それは、「じりつ」について。

留学と自立

自立:
人に頼らないで、自分だけの力でやっていく事
(小学新国語辞典 光村教育図書より)

母国、親元、親しい友人から離れ、外国という新天地で生活・勉強していく海外留学において、ある意味必然的(もしくは強制的?)に自立する力は養われていきます。

今まで朝はお母さんに起こしてもらっていたけど、ホームステイ先では自分で起きて学校に行く。朝や昼は自分で何か用意する。部屋の整頓、掃除をする。洗面所を使ったら綺麗にしておく。言われなくても自ら進んで学校の課題に取り組む、など。

《留学すると自立する》

これは、確かにそうだと思います。

多くの人は当たり前の様にそう言うし、そう言われた学生はそれを鵜呑みにしている感じもするし、「自立する為に(させる為に)留学する」と言う人もいます。これは、「留学したら英語力が付く」と似た思考回路かもしれないですね。

もちろん、学生が留学生活の中で少しずつ自立・成長していく姿は、本当に感動します。

それでも私は、「留学すると自立する」と表現するのは好きではありません。

なぜなら自立は、少しずつ階段を登っていく様に、その都度しっかりと段階を経ていける人(そもそも自分で立つ気がある人)がたどり着く、単純に留学すれば得られるものではない、そんな風に私は捉えています。

自立の階段

赤ちゃんは、少しずつ少しずつ、何か出来る様になっていきます。

言葉が思う様に通じない、物事がスムーズに行かない。でも赤ちゃんは諦めません!

日本で問題なく出来ていた事が、海外では出来ない事が多々あります。ある意味で赤ちゃん返りせざるを得ない状況です。

けれども

出来なくて当たり前なのに、現地の人と同じ様に振る舞えない事に、そして今までの様に出来ない自分に対して、私達は自己否定的になりがちです。

留学中、自立の為には、目の前の障害を一つ一つ、乗り越えていく必要があります。自分に優しくなり、時間を与えていく必要があります。

トライする際、立ちふさがるのは「不安」「勇気を出してみる一歩」「そんな感情との向き合い方」などなど・・・もちろん簡単では無いけれど、誰かに助けを求めたり、手伝ってもらったりすれば、必ず次のステップに進めます。

諦めず、赤ちゃんの様に何度も何度もトライして、一生懸命な姿を見せていけば、周りの人は助けてくれるし、応援してくれるし、喜んでくれます。

もう一つの「じりつ」

冒頭の「とある状況」で思い知らされたのは、もう一つの「じりつ」です。つまり「自律」です。

手元の小学新国語辞典には「自律」は掲載されていなかったので、子供の世界ではあまり使われない言葉なのかもしれません。

自律:
自分の行為を主体的に規制すること。外部からの支配や制御から脱して、自身の立てた規範に従って行動すること
(広辞苑より)

もう一つの意味として、

カントの倫理学の根本原理の一つ。実践理性が、欲望に動かされることなく、みずから普遍的道徳法則を立て、それによって自分の意志を規定すること

とありました。

「欲望に動かされることなく」「自分の意志を規定すること」

感情が自分をコントロールするのではなく、自分が感情をコントロールする。

「自立」のために

海外留学には、この「自律」が大きく関係している様に思います。

これは留学に限ったことでは無いはずですが、私が見ている世界は「留学」なので、そう表現します。

振り返ってみると、これまで関わってきた学生の中で、”ちょっと他の学生よりも何かが上手くいっていない”と感じる共通点は、この「自律」の部分かもしれません。(専門家でもなんでも無いから分からないけど、でもそんな気がする)

自己基盤、自分軸にも繋がる話だと思います。

多くの学生は、ある程度親の力が無くても(離れていても)自分を律する事が出来ていて、その上で段階を経て自立するし、成長しています。そうする力が眠っています。留学中は、元々ある力がさらに強化される、違う環境下にいるからこそ引き出されやすい、そんな気がします。

先ずは「自律」を考えよう

先日、この本を読みました。頷きポイントがたくさんありました。

​自律の大切さは、海外留学でも言えること。

「とある状況」は、正に自律がしっかりと育まれていない事がベースにあって生じた問題だったと感じました。

自立していると思いきや、自立も自律も、問題解決も自己決定も出来ず、そこから抜け出す方法が分からない。その時々の感情が自分をのみ込んでいる。

苦しいのはその子だし、明らかに助けが必要。カウンセリングなど適切なサポートが必須なのかもしれません。こうなってくると、留学どころではなくなってきてしまいます。

”その子には今、何が必要なのだろうか。”

色々と考えさせられました。


《自立の前に、先ず自律》

これは当たり前の事なのかもしれませんが、分かっている様で分かってなかったかも、とハッとさせられました。

実際、驚いてしまうくらい自分を律する事が出来ていない学生が留学するケースはあります。

こうしたケースに遭遇する度に、何ともやるせない気持ちになります。


この著書にもある様に、大人の言葉がけ、在り方、その影響力の大きさを日々実感します。





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