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スーパーフォーミュラに行った。(その2)

二日目は、前日夜に急遽予約したレストラン「THE DINING」で朝食バイキングを食べて、最終戦の予選が始まるサーキットへ向かった。

起きると目の前にサーキットがあるなんて、最高だ。

快晴の日曜日

日帰りで来る時は午前中を移動時間に当てるため、鈴鹿で予選を観るのは初体験だ。

Q1が始まる。

終了時間が迫って全車がアタックラップに入ると、想像以上に一気に緊張感が高まった。

「予選ってこんなに緊張感があるのかー!」とドキドキしているうちにQ2が始まり、さらにしびれる展開となった。

野尻選手、ローソン選手、宮田選手の順でアタックラップに入る。

野尻選手が一周回ってトップに立った次の瞬間、ローソン選手がそれを上回りトップに躍り出た。

そして前日から好調の太田格之進選手が、野尻選手を抜いて2番手に食い込む。

宮田選手も好ペースで周回してくるが、スプーン出口で大きくテールスライドしてしまい、四脱は逃れたものの、4番手に沈んでしまった。

予選、面白い!

生で観ることができてとても満足したし、タイミングモニターの見方に慣れておいて良かったと思った。

決勝まで時間があるので、グランドスタンド裏のイベントスペースへ向かった。

スーパーGTの時にはイベントスペースにはなっていない、グランドスタンド裏広場から一段下がった空き地でもホンダの催しが行われていて、様々な展示や体験イベントが行われていた。

NSX TypeS。生産終了しており新車は買えない。
お値段は2,794万円。生産していても買えない。
シートへの着席はおろか、お触りすら厳禁だった。
若き日の国さんが駆ったマシン(名前失念)
RA272。元祖“チャンピオンシップホワイト”

福祉車両で車椅子を乗せる体験をしたり、シートベルトを切ったり強化ガラスを割る体験をして、楽しい時間を過ごした。

車外脱出工具で強化ガラスを割る瞬間。

観戦券は遊園地でも使えるので、サーキットのすぐ横にあるバイク型のジェットコースターや観覧車、光線銃で的を撃つアトラクションを家族で楽しんだ。

観覧車から86/BRZレースが見えた。

決勝の時間を迎え、メインスタンドの席へと移動する。

チャンピオンが決まる最終戦が、いよいよ始まる。

昨日と同じく、ドキドキのスタンディングスタート。

レッドシグナルがブラックアウトし、全車一斉にスタート!

太田選手が素晴らしい蹴り出しを見せて、ポールのローソン選手を抑えて1コーナーに飛び込んでいった。

後ろでは、3位の野尻選手を宮田選手がパスして順位を上げている。

誰も絡むことなく、キレイなスタートとなった。

太田選手がトップのまま一周回ってきて、目の前を駆け抜けていく。そして、ローソン選手、宮田選手が離されまいと駆け抜けていく。

野尻選手はペースがあまり良くないのか、少しずつ宮田選手から遅れているように見えた。

タイヤ交換が解禁となると、松下信治選手を筆頭に、アンダーカットを狙って中段グループが続々とピットに入り始めた。

先頭集団の中では、宮田選手が一番先に動きピットイン。ドキドキの瞬間。

次の周にローソン選手がレスポンスしてピットイン。さらにドキドキ。

アウトラップ勝負となるが、ローソン選手は冷えたタイヤながら宮田選手を絶妙なブロックで抑えて2位を死守した。

そしてその周にトップの太田選手がピットイン。

素早いタイヤ交換でマシンを送り出し、トップを守った。

野尻選手はタイヤ交換のタイミングを逃してしまったのか、ステイアウトし暫定トップに立ったが、オーバーカットしようにもペースが上がらない様子だった。

タイヤ交換を終えた太田選手、ローソン選手、宮田選手の3台は、タイヤ交換を終えていない同一周回のマシンたちを、まるでバックマーカーを追い越すように次々と抜いていく。

残り10周を切り、ローソン選手が太田選手にプレッシャーをかけていく。しびれる展開。

宮田選手が3位にいる以上、ローソン選手にチャンピオンの可能性は無いのだが、最後まで諦めない姿勢は素晴らしい。

これまでのローソン選手の速さを見ていると、太田選手は更に詰められてしまうのではないかと感じたが、なかなか負けていない。

注目のファイナルラップ!

差を縮められないようにOTSを上手く使った太田選手が初優勝を飾り、ローソン選手は一歩届かず2位。そして宮田選手が3位に入り、チャンピオンを決めた。

前日とは打って変わって、イエローフラッグ一つ出ないクリーンなレースで、最終戦に相応しい見どころ満載の充実したレースだった。

戦い終えたマシンが整列したホームストレートが開放され、表彰式が始まったのでコースに下りる。

1号車 野尻智紀選手
5号車 牧野任祐選手
19号車 関口雄飛選手
39号車 阪口晴南選手
4号車 小高一斗選手
55号車 ジェム・ブリュックバシェ選手

マシンの写真を一通り撮影した後、予約していたタイヤ交換体験の時間になったので、ホンダのイベントブースへ向かった。

スーパーフォーミュラの実車(ADVANカラーのSF19)と、実際にピットで使っているインパクトレンチ使ったタイヤ交換が体験できるとあって、ワクワクしながら説明を聞く。

軍手と保護メガネを受け取り、”左フロント担当“として、位置についた。

交換したか否かが分かりやすいように、レインタイヤからドライタイヤ、次の人はその逆、という感じで体験していく。

事前にレース用タイヤを持たせてもらったが、見た目より思いのほか軽い。たしかフロントタイヤで12kgと言っていたと思う。感覚的には、一般車のタイヤの方が断断然重い。

係のお兄さんのお手本の後、家族が順番に体験していく。

お兄さんの実演

女性や子供だと、立て膝姿勢でタイヤを持つのは少しキツそうだ。

自分の番が回ってきた。

インパクトレンチを持つ。ズシリと重い。

回転方向を変えるスイッチの使い方と、トリガーの位置を確認し、ホイールナットにガシッとはめる。

ホイールナットとインパクトレンチの先は磁石でくっ付くようになっていて、予想以上に強力な磁力でガシッとはまる。

トリガーを引くと、「ギュン!」と音がして、一瞬でナットが外れた。

トリガーから指を外してレンチを床に置き、レインタイヤを抱えて外す。

ドライタイヤの横に外したレインタイヤを置き、ドライタイヤを手前に持って来る。

メッシュ状のホイールは、指を怪我する恐れがあるので、スポーク部分を持たないように言われていたが、立て膝姿勢から大きな丸い物を動かすのはかなり難しく、センターなら大丈夫だろうと思って真ん中の穴に指をかけて手前に引き寄せた。

大きな丸を抱え上げて寝た状態から起こし、ホイールハブにセンターの穴位置を合わせてはめるのだが、ホイールハブはホイールの向こう側で見えないので、勘で位置を合わせるしかない。

上手く穴を通っても、まだ油断できない。

タイヤを奥まで押し込んだ時に、ホイールハブの凹凸とホイールの凹凸がきちんと合わないといけない。

たまたま一発でガシッとハマったから良かったが、ズレたら少しタイヤを回しながらはめないといけない。

ドライタイヤをセットし、インパクトレンチで締める

インパクトレンチを持ち、ナットをハブに差し込んでトリガーを引く。

再び「ギュン!」と音がして、ナットが締まった。

一瞬すぎて手応えが分からず、ちゃんと締まったのかな?と思っていると、「はい!手を挙げて!」と言われたので、「あ、これでいいんだ」と思いながらレンチを置いて手を挙げた。

一連の流れはこれで終了。めちゃめちゃ面白い!

インパクトレンチのトリガーを引いた瞬間、先端の回転力の反力が本体にかかり、逆回りしようとする。

トリガーを引く瞬間に身構えていれば大丈夫だが、妻や子供は腕を持って行かれ気味だった。

これでも実際の空気圧の3分の1程度らしいので、ピットクルーは凄い。

また、インパクトレンチ先端の磁力が強く、ホイールナットを締めた後、かなり勢いよく引っ張らないと抜けない。これにも妻と子供は苦戦していた。

係のお兄さんから「もう一回ずつできますけど、やりますか?」と聞かれたので、「はい!」と即答する。

やり方はだいたい分かったので、次はスピードアップを目指す。

顔は笑いながらも早めに動いていると、妻と子供達が「パパがやる気出してる!」と笑っていた。

ドライタイヤを外してレインタイヤをはめたが、1回目はたまたま上手くいったホイールハブとの噛み合いに苦戦し、少し時間がかかってしまった。

ホイールとハブの噛み合わせに苦戦

インパクトレンチでナットを締め、先生に当てて欲しい小学生のようにパッと手を挙げたら、「おー!早い早い!」と笑いが起きた。

子供の頃の夢はレーシングドライバーだったが、アイルトン・セナが4歳からカートを始めたと知って早々に諦めた。

その後は、メカニックになりたい!サルト・サーキットを24時間走り切ったマシンの横で泣きたい!と思ったが、就職活動で自動車業界に行けず、そのまま全く違う道を歩んできた。

そんな自分が、本物のタイヤと道具でタイヤ交換を体験できたことがとても嬉しかった。

それに、こんな大変な作業を極度のプレッシャーの中、10秒とかからずやってしまうピットクルーは本当に凄いと思ったし、ナットを締めそびれてタイヤが外れてしまうトラブルは、常に起こりうるものなのだと体験してみてわかった。

二日間にわたってスーパーフォーミュラを、そして鈴鹿を堪能することができた。

やっぱりモータースポーツってめちゃめちゃ面白いし、モータースポーツが大好きで良かったと思った。

1レース、1周に命を懸けて全開で走るレーシングドライバーの凄さは、現地で体感するに限る。

来年も絶対に鈴鹿に足を運んで、スーパーフォーミュラもスーパーGTも両方楽しみたい。

Koshichi Museum by Muuseo
https://muuseo.com/Koshichi-museum

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