おじいちゃん部|#完成された物語

最近、公民館の予約表に『おじいちゃん部』がよく登場する。

「何かしら、おじいちゃん部って。老人会の男性版?」

「キャッチコピーはアンチアンチエイジングだって」
ポスターを見て私は母に答えた。

遠い耳は補聴器、曲がる腰は矯正下着、深い皺は美容整形。

この半世紀で進歩した医療や科学の技術のおかげで、老人も若者と何ら変わらない見た目と暮らしぶりをしている。

対して、この部はあるべき姿のまま自然に年を取ろうという主旨らしい。

「昔から社会が大きく変わると揺り戻しが起こるものなのよ」
遠い目をした母が教えてくれた。

「ワシが部長じゃよ」
30代に見える男性が声をかけてきた。

「あまりおじいちゃんぽくないですね」

「いやはや発足して日が浅いものでな。見た目はもう何十年かすればらしくなるじゃろう」

「ところで入部希望のもんか?おばあちゃんも大歓迎じゃよ!」

私まだハタチなのに!

勧誘される私を見て、隣の母親はつややかな髪をかき上げながら笑った。

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昨日の「しゃべるピアノ|#完成された物語」に引き続いて企画に参加。
自分では思いつかないタイトルと決められた冒頭文に頭を捻るのは非常に楽しいです。
とてもとても難しいお題でした……!

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