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小瀬古文庫について・深掘り編

小瀬古文庫の作品・活動に興味を持っていただきありがとうございます。より深堀りしたい方のために、活動の内容をまとめた記事を書きました。

小瀬古文庫は擬態デザイン家として、湘南を拠点に活動しています。「『もの』の見方を変える眼科」をコンセプトに、デザイン表現やツールの研究開発を行っています。



小瀬古文庫の作品

表現研究として「デザインの擬態」をテーマに実験的な作品を制作しています。擬態というと「枯れ葉そっくりの蛾」のような生物のそれを想像しますが、私は身近な静物に擬態を見出し、デザインを通じて可視化しています。私たちの生活に潜む新たな擬態を可視化し、収集することが、この活動の目的です。

私たちの作品の一部をお見せし、ここで扱う「擬態」について紹介します。

egg/moon (2021)

月と地球の写真をそれぞれ黄と白に着色し、光沢の位置に白色のタイポグラフィを配置し地名や情報を刻みました。一見すると普通の玉子ですが、細部を眺めるとそれは月と地球であることがわかります。

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一見すると生卵ですが・・・
スクリーンショット 2021-12-23 22.38.57
細部を拡大すると月が現れます。光沢に見えた部分はすべて文字であることがわかります

このように、惑星の写真が玉子に擬態する、という現象をデザインで作り出すことで、惑星の見え方を変えています。10人中9人が玉子の作品だと思ってその正体に気づかない。。眼を欺くような作品作りを心がけています。


planets/ham(2020)

玉子の他にも、お肉、年輪、雪、都市、ハムなど、およそ一年ごとにテーマを変えて、さまざまな「擬態」を発表しています。下の作品は同じ惑星シリーズで、ハムに擬態する太陽系惑星です。惑星の写真をピンクに染め、ラベルとトレーを描き加えました。

ラベルも半径や質量など惑星の情報になっています
火星、冥王星、水星など、さまざまな惑星がハムになりました

雪華する擬態地図(2019)

先のハムや玉子は自分の中では「派手もの」と呼んで、キャッチーでヒトの五感を喚起させる「シズル感」を重要視していますが、対して下の結晶のようなシリーズは「地味もの」と呼んでいます。各地の地図を6枚回転させながら重ねて架空の雪の結晶を作る、オリジナルの擬態のコンセプトが強く出ているシリーズです。

左から日本、台湾、パームジュメイラ(ドバイ)、香港

平たくいうと一風堂の新味と元味みたいな関係です。新味がないと表現の豊かさが失われ、元味がなくなると骨となる軸が見えにくくなる、相補関係に位置付けています。表層と本質、皮膚と骨、女と男。どちらが欠けても成立しません。

サンプリングという制作手法

擬態シリーズの作品は「サンプリング」という手法を使っています。ペンや筆で描くのではなく、写真などのデータを加工することで作品を制作しています。例えば、下の年輪の作品は山の地形図がベースです。富士山の地形図を着色すると等高線が年輪に見え、地図記号や登山道も年輪が持つノイズに見立てられます。

地形図を着色することで年輪を表現
富士山の地形図

生物が進化によって身体組織を擬態を獲得した代わりに、「もの」はデザインによって擬態を獲得する。誰も見たことのない新たな擬態を発見するべく、研究のようなクリエイションを続けています。


擬態を扱った背景

ヒトの視覚への関心とコンセプト構想が統合して、擬態のプロジェクトに繋がっているように思います。

私たちの生活に視覚を欠かすことはできません。眼のその精度の高さがある反面、意外と見てない、という二面性も持っています。生物の擬態の他にも錯視やエッシャーの作品など、眼そのものに問いを投げかける作品に魅力を感じてきました。また、その職能によって何が見えるのかも変化します。建築家であれば計測なしで寸法が、グラフィックデザイナーであれば造形のバランスが見えてきます。眼そのものが面白いということに他なりません。

2015年に開発した書体「still motion suns」。夕暮れ空の色彩のような「認識しない変化」をテーマとした作品。
180秒経つとaがdになっている。一見すると普通の文字だが、目を離した隙にその文字の形状が変化する

また、コンセプトを作るのが好きで、大学生の時は商品企画の研究をしていました。その後、自身の目に対する問いをコンセプトとしてグラフィックデザインを通じて、作品化することで、表現の研究をみんなで共有する。という方向性を取るようになりました。

擬態デザイナーのエコシステム考

グラフィックデザイナーはデザインの受注でエコシステムを形成します。擬態デザイン家となり、デザインの受注の他、アートブックの出版、作品の制作販売、プロダクトの開発など、個人でどのようなエコシステムを形成できるか、自分自身を実験台として活動しています。その一部を紹介します。

Publication|出版する

「デザインの力で『もの』に潜む擬態を可視化する」をテーマに不定期に発行する実験的なアートブックマガジン「gitai」を中心にアートブックの企画・製作を行い、国内外の書店・アートブックフェアを通して展示・販売しています。表現の研究や書籍デザインの経験から、高品質かつ新たな視点を読み手にもたらす本づくりを心がけています。


NFT|デジタル作品として販売する

デジタルアートで知られる非代替性トークン (Non Fungible Token)を利用した、新たな視点の社会実装を手掛けています。デジタルアートの販売に始まり、デザインという職能について、仮説に基づいた検証・再定義を行うべく、実験的な作品を発表しています。NFTを利用したアートブック出版を予定しています。


Design|デザインの企画制作

ロゴ・名刺・書籍など、紙ものを中心にデザインを請け負っています。長く愛される美しさ、読みやすさ、そして遊び心を品質と捉え、大切にしています。予算と規模に応じた建設的なプランを提案させていただいています。また、ZINEなどアートブック制作も承っています。

擬態のプロダクト開発や、一点ものの作品など、さまざまな実験を通して、デザインの新たな社会的役割を模索しています。クライアントワークも含め、実験的なプロジェクトを立ち上げ、新たなエコシステムの形成と創造性の流通に寄与したいと考えています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

小瀬古に関するリンク

Webサイト(ポータル)
https://koseko.asia

小瀬古文庫(アートブック・NFT)
https://gitaipress.com/ja/index2021/

Twitter
https://twitter.com/kosekobooks

NFT関連はこちら
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Instagram
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