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Web小説の感想とご紹介『第6回、平沢ヌルさまの「転生歴女」を2回読んで(ネタバレなし)』

興味を持ち、ページを開いてくださって、ありがとうございます!

今回はリンク先(↓)の平沢ヌル様の作品をご紹介します。
25万文字の読み応えのある大作となっております。
(スター特典で読める、番外編の『ヴィルヘルミーナ様の夢のお店』もお楽しみいただけます)。


それでは、投稿小説サイト「エブリスタ」から、平沢ヌルさまの『転生歴女』をご紹介させて頂きます。
しかし、これから読むのを楽しみにされている方々のために、内容ではなく、感じたことを中心に(ネタバレなく)書かせて頂きます!

このお話のテーマは、時空を超えた「男女の愛」です。
また、理系知識が豊富な作者さまらしく、歴史的な発明品が数多く登場します。

主人公のアリーシャ・ヴェーバーが、対峙する敵は圧倒的に強く、正面からでは勝てない相手。そこで、あることで得た理系知識を持って解決していく姿が、普通のテンプレ作品とは違いました。

歴史的な考察もよくされ、近代に入るまえの人々の服装や生活様式、囚われている階級や習慣などもよく描かれています。社交界のダンスパーティーや王女さまの華やかな印象が伝わってきました。

この作者さまは、綿密な下調べをされる方らしく、知識に基づく明晰なディテールの描きかたで当時の暮らしぶりが分かりやすく描かれていました。

人々が今いる現状で、乗り越えなければならない壁、そしてどうしようもない出自の苦悩。それらが絡みあい、男女の関係も加わって、アリーシャにより深い葛藤をもたらします。

(葛藤[かっとう]……いくつか意味があるのですが、この場合は、心の中に相反する動機・欲求・感情などが存在し、そのいずれを取るか迷うこと、に該当します)。



葛藤、それ自体は異世界に関わらず、私たちの住む世界でもごくありふれているものです。しかし、この作中の登場人物たちに与えられた試練(=敵)は、私たちよりも過酷なもので、それは人の力を凌駕していました。

それでも、主人公のアリーシャが、あることで受け継がれた歴史オタクの知識をもちい、力のない女性の身でありながら、試練の壁を取り払って、道を押し開く姿は快活ですらありました(知識は力に勝る、の魅せ場でもあります。それを魅せる、作者さまの力量も大したものです)。

彼女を悩ませるのは、何も敵ばかりではありません。王侯貴族をめぐる複雑な人間関係に恋も加わり、苦悶が愛に昇華するまでを見事に描かれていました。その心情吐露の語り口は、明晰でありながら、アリーシャたち(?)の女性らしさが垣間見えるところでもあります。

(「アリーシャたち」と複数形で書きましたが、この作品の女主人公はじつは二人いるのです! このことも彼女たちが持っている悩みに起因していきます)。



アリーシャともう一人の女主人公、若葉のふたりが、どうしたら、周りの人間との関係や、敵の試練を乗り越え、しあわせを掴むことができるのか?

そこへ至るまでの、理系的な知識の洞察の鋭さ、その語り口。人物に対する心理的洞察など、知恵を持って語られ、知恵によって解決していくけれど、最後には愛が勝つ!、そんなお話でした(とにかく理系SFラブロマンスの金字塔がここに打ち建てられたことは確かです)。

SFも、理系も、またラブロマンスもあまり読まない、という方でも
、見事な語り口によって明かされる歴史の人々の愛とそこに生きた息吹を、ぜひご堪能されて頂きたい! そんな願いがこめられた作品でした。

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