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「写真」考 04

歌とかオペラとかやっていると、
時々、おもしろい仕事が舞い込んでくる。

声を活かしてのCMの仕事しかり、
舞台人ということで
映画やTVのエキストラの仕事しかり。

私の場合は、
コンテンポラリーダンスだった。


コンテンポラリーダンスといっても、
私自身が踊るわけではない。

その舞台での私の役目は、
歌の演奏・・・も確かにあったが、
それ以上に「動くこと」、
「そこに存在すること」にあった。

つまり、
「オブジェ」とか、
「キャラもの」という類の
とてもオイシイ仕事だったのだ。


その団体の主宰者は、
世界的にも有名なダンサーで、
その人の舞台に出演できること
それ自体も大きな喜びだったが、
その人の作り上げていく世界の面白さ、
「芸術」「アート」としての、
人物や動物の配置の妙、
光の色彩感、etc, etc...
その過程の全てが新鮮で、
感動の連続だった。

そしてなにより、
「私」という素材をどのように使うのか、
それが舞台でどのような効果を上げ、
客席からはどのように見えるのか・・・

そういった
「演奏家の視点」では
決して見ることのできなかった
「演出家の視点」というものを
その人は、私に与えてくれたのだ。

その意味では、
その人はまぎれもなく、
私の「師」の一人であると言える。


さて、
そのコンテンポラリーの舞台だが、
公演である以上、
チラシやプログラムに
出演者として私の名前と写真が載ることになる。

どのような写真が良いのだろうか・・・?

確かにその舞台で歌も歌うけれど、
歌手としての出演ではなく、
かといってダンサーなどでは勿論なく、
ちょっとした
「ぬえ」のような存在の私である。

・・・ということで、
歌手としてのプロフィール写真は使わず、
パフォーマーとしての写真を
新たに作ることにした。


人には色々な表情があり、
色々な顔がある。

歌手としての私、
パフォーマーとしての私、
演出家としての私、
公演や団体主宰者としての私・・・

同じ人であっても、
それぞれの場所や、
その置かれている立場によって
それぞれ別の顔をしていたりする。

写真には、そうした
「それぞれの顔」を浮き彫りにする
「鏡」としての役目も
持ち合わせているのかも知れない。

パフォーマーとしての私の写真、
使ったのは、この一度だけだが、
結構、
気に入っている一枚になっている。



その後、
雇われで舞台に上がる時、
特に、歌手としての技量より
役者・パフォーマーとしての効果を
期待された幾つかの舞台では
この写真を用いている。

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