小齋秀樹

浦和レッズに軸足を置いて取材・執筆するフリーライターです。心身不調のため活動を休止して…

小齋秀樹

浦和レッズに軸足を置いて取材・執筆するフリーライターです。心身不調のため活動を休止しておりましたが、復調に伴い、2024年6月から執筆活動を徐々に再開させていただいております。 Xアカウント https://x.com/uAxfuNbCU443041

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  • 『代表以外』 あるJリーガーの14年

    #浦和レッズ 、 #アルビレックス新潟 、 #モンテディオ山形 でプレーされた #宮沢克行 氏を追ったノンフィクションです。

最近の記事

『代表以外』あるJリーガーの14年 第2章 雪降る街へ:その1

 アルビレックスのセレクションから20日を経た12月26日、宮沢は再び新潟を訪れた。  新潟駅に降り立ってから向かったのは車で15分ほどの距離、信濃川にぶつかる手前にあるアルビレックス新潟のクラブ事務所。  2000年にできたプレハブ2階建ての建物だった。  青味がかったグレーの外観は、一見してプロサッカークラブのオフィスだとわかるようなものではない。    クラブハウス1階の一室に通された宮沢は、ふたり掛けのソファにひとりで腰を下ろした。  対面には強化部長の若杉と契約事務

    • 『代表以外』番外編:資料蔵出し

      「蔵出し」などと題するのはかなり大袈裟で恐縮ではありますが、他に伝わりやすい表現がなかったので、どうかご容赦ください。 「第1章『契約満了』」にて登場する「鳥屋野公園球技場」。  2001年12月に宮沢さんがアルビレックス新潟のセレクションを受けた場所です。  写真をアップロードしてみました。  私が現地を訪れたのはセレクション実施から数年後、季節も夏だった気がします。  ですので、空気感などは原稿内で描いているものと少なからぬ差異があるかと思われます。その点、ご承知おき

      • 『代表以外』あるJリーガーの14年 第1章 契約満了:その3

         アルビレックス新潟のセレクション2日目は翌12月6日10時から、前日と同じ会場で開催された。  前日とは異なるチーム編成での30分ハーフ・ゲーム。  宮沢も同行の3人も第1試合に出場。3人のうちふたりは味方、ひとりは敵だった。  11時半前には彼らのゲームは終了。  自分が出る試合が終わってしまえば帰っても構わない、と説明を受けていた。    だが、すぐに帰る気にはなれなかった。 《もし怪我人が出たら、代わりに出場してアピールするチャンスが増えるかもしれない》  宮沢は

        • 『代表以外』あるJリーガーの14年 第1章 契約満了:その2

           2001年12月5日、新潟。  宮沢がこの地を訪れるのは、2度目だった。  一度目は1年半前、浦和のJ2時代のアウェイゲーム。  その試合、宮沢は後半開始から出場。だが、チームは前半のうちに4度もゴールネットを揺らされており、最終的にはアルビレックスに1-6の大敗を喫している。    この日、宮沢たちが向かったのは、あのとき完膚なきまでに敗れさった場所・新潟市陸上競技場ではなかった。  セレクション会場となっていたのは鳥屋野運動公園球技場。    駅からタクシーに乗り10

        『代表以外』あるJリーガーの14年 第2章 雪降る街へ:その1

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        • 『代表以外』 あるJリーガーの14年
          7本

        記事

          『代表以外』あるJリーガーの14年 第1章 契約満了:その1

           2001年12月5日、埼玉県さいたま市にあるJR大宮駅。  そこで、浦和レッズに所属する宮沢克行はこれから道行きを同じくする面々と合流した。  川崎フロンターレの盛田剛平、小島徹、浦田尚希の3人だ。  盛田と小島は浦和レッズの元チームメイト。浦田は高校時代の、2学年上の先輩だった。  4人の行き先は新潟。  現地での目的については、誰も積極的に話そうとはしない。  上越新幹線の車内では、他愛もない日常会話で到着までの1時間半ほどをやり過ごした。  昼過ぎ、新潟駅に降り

          『代表以外』あるJリーガーの14年 第1章 契約満了:その1

          『代表以外』あるJリーガーの14年 序

           福田正博は、この男を次のように評している。 「ひと言で言っちゃうと、『いいヤツ』ってやつだよね。 誰に聞いても、彼のことを悪く言ったりはしない、そういう性格のヤツだと思う。人間としてキチンとしてるし、気遣いもできる。一緒にいて気分を害するような人はいない、そういう人間なんじゃないかな」  だが、そのキャラクターは、サッカー選手としての成功をなにひとつ約束してくれるものではない。  むしろ、ときにはマイナスに作用することすらある。  プロサッカーとは、Jリーグとは、そうい

          『代表以外』あるJリーガーの14年 序

          『代表以外』あるJリーガーの14年      はじめに

          ・本マガジンは 浦和レッズ 、アルビレックス新潟 、モンテディオ山形 でプレーされた 宮沢克行氏を書いたノンフィクションです。 ・『代表以外』という表題で上巻のみ電子書籍化されたのですが、その後いろいろアリ……完結しておりません。 ・上巻の焼直し、プラスそのつづきを、このマガジンで不定期掲載する予定です。 ・本文中に登場する人物の役職名、自治体や施設の名称およびその描写、規約条項、用語の適用などはすべて当時のものに準拠しています。

          『代表以外』あるJリーガーの14年      はじめに

          執筆活動の再開にあたって

          こんにちは、小齋です。 2024年6月28日、LINE『浦和レッズニュース』様にてライターとしての活動を再開させていただきました。 さかのぼること10数年前、病を発症して第一線から遠ざかっていたのですが、なんとか活動が再開できるまでになりました。 その他にも紆余曲折あったのですが、兎にも角にも、ふたたび筆を執ることとなった次第です。 こんな私を、懐かしく、また、温かく迎え入れてくださった浦和レッズファミリーの皆さまには、感謝しかありません。 本当にありがとうございます。

          執筆活動の再開にあたって

          往復書簡⑫小齋→清尾 玉座へ向け、新たなる一歩

          清尾さん、こんにちは! 往信にて書かれている通り、隣国とはいえソウルからさらに移動となると結構大変でしたよね。 取材ノートを見返したところ、チームスケジュールはこんな感じでした。 ・9月23日練習終了後、羽田近くのホテルへ ・9月24日09:20発の飛行機でソウルへ ・11:20金浦国際空港到着、荷物をピックアップした後、ソウル市内で昼食 ・14:30 KTX韓国高速鉄道にて太田へ ・15:27 太田着、バスに乗り換えて全州へ ・17:14 滞在予定のホテルに到着 現地入

          往復書簡⑫小齋→清尾 玉座へ向け、新たなる一歩

          往復書簡⑩小齋→清尾「組織の中の特別な『ふたり』」

          清尾さん、こんにちは! 今回はちょっと迂遠な導入をお許しください。 どのような組織でも、その中には馬が合う者同士もいれば、どうにも反りが合わない者同士もいるものです。 「プロサッカーチーム」と言ってもそれは当てはまり、浦和レッズにおいても例外ではありません。 さらに言えば、馬が合う者たちの中には特に「コンビ」と呼ぶのがふさわしいような組み合わせもいました。 2007年当時で言えば、坪井慶介と阿部勇樹、都築龍太と永井雄一郎、そして田中達也と長谷部誠。 ノックアウトステージでの

          往復書簡⑩小齋→清尾「組織の中の特別な『ふたり』」

          往復書簡⑧小齋→清尾「勝ち点1の価値」

          清尾さん、お疲れさまです! 2007年5月23日(水)、ACLグループステージ最終節・対シドニーFC戦。 キックオフは19:30、入場者数は44,793人。 清尾さんが 「この年のグループステージで最多でした。水曜日にこの人数はすごいと思います。」 と書かれていましたが、「ああ、やっぱりそんなにすごかったのか」というのが最初の感想です。 「やっぱり」と記したのには理由があります。 実は、試合前日の公式練習後の帰途、電車内にてある外国人記者と一緒になりました。彼の顔は練習会場

          往復書簡⑧小齋→清尾「勝ち点1の価値」

          2007ACL往復書簡特別編・小齋→清尾「ACLだからこそ」

          清尾さん、お疲れさまです PCトラブルはバックアップがあったとしても予想以上に原状回復まで日数かかりますからね。お気になさらず。 MDP連載時代の私の締め切り破り回数にくらべたら、今回の件はどうということはないですよ。 さて、本題です。 清尾さんの往信を拝読し、知らないこと・忘れていたことがたくさんあるんだなというのが最初の感想でした。 まずは北澤さんの件。 清尾さんが書かれていた 『決勝のことを取り上げた日本テレビのスポーツ番組で、北澤豪さんが「我らが浦和レッズ…」と

          2007ACL往復書簡特別編・小齋→清尾「ACLだからこそ」

          往復書簡⑥小齋→清尾 「ホーム&アウェイ」

          清尾さん、お疲れさまです。 ステーキのこと、よく覚えてらっしゃいますね(笑)。 あの一件から「インドネシアってこんな国かも?」と極論めいたことを展開することもできなくはないのですが、今回は字数を考慮して早速『本題』に入ることとします。 清尾さんが往信で記されている通り、アウェイでのペルシク・ケディリ戦は 「ホームとアウェイでこれほど違うものなのか」 と痛感させられた出来事でした。 オーストラリア、中国、韓国、そしてグループリーグ後に訪れることとなるイラン。どこへ行っても

          往復書簡⑥小齋→清尾 「ホーム&アウェイ」

          往復書簡④小齋→清尾「ACLの実感」その2

          まずは、本題の試合に入る前に「食」について。 清尾さんが仰る中華料理屋。よく覚えています。交差点の角にあった店ですよね。 前日トレーニングの帰りか、試合当日、キックオフ前の腹ごしらえとして食べたんですかね。私は牛肉の薄切りとネギらしき野菜が載った麺を頼んで、アッサリ味で美味しかった記憶があります。今だったら、たぶんスマホで撮影していてこのラーメンの写真も残ってるんでしょうね。 それと、パクチーは私も苦手だったので自分の椀には入れないように頼んだ気がします。どうやってお願いし

          往復書簡④小齋→清尾「ACLの実感」その2

          往復書簡④小齋→清尾「ACLの実感」その1

          清尾さん、お疲れさまです! レッドアイの件、私は塩もタバスコも入れますから、それを見た清尾さんがゲテモノと思っていたとしても致し方ないかと。 さて本題。 そういえば埼スタでのキックオフは19:30でしたね。 クラブが念入りに下調べをした上で開始時刻を決めた話は覚えています。調査そのものも、その後の決定もどちらも、クラブの本気度が伺える事がらでした。 19時開始の試合よりも大勢のサポーターを飲み込んで迎えた4月11日(水)、埼スタでの上海申花との一戦目。レッズはキックオフ直

          往復書簡④小齋→清尾「ACLの実感」その1

          ②小齋→清尾その2「海老と赤眼とロブソン・ポンテ」

          「レッドアイ」が通じなかったバーを辞した後、浦和からシドニーまで遠征に来ていたサポーターと合流。 今思えば、当時の私はサポーターの方々との距離はなるべく保っておこうと考え、その輪の中へ積極的に入っていくことを避けていた気がします。 自分の書き手としての立ち位置を、できるかぎり「中立」に近い場所に置いておきたいという気持ちがあったからです。 また、毎試合自腹を切ってスタジアムへ来ている彼らと、仕事とはいえタダで観戦している自分が同じような顔はできないという申し訳なさに似た感情も

          ②小齋→清尾その2「海老と赤眼とロブソン・ポンテ」