見出し画像

往復書簡⑫小齋→清尾 玉座へ向け、新たなる一歩

清尾さん、こんにちは!
往信にて書かれている通り、隣国とはいえソウルからさらに移動となると結構大変でしたよね。
取材ノートを見返したところ、チームスケジュールはこんな感じでした。

・9月23日練習終了後、羽田近くのホテルへ
・9月24日09:20発の飛行機でソウルへ
・11:20金浦国際空港到着、荷物をピックアップした後、ソウル市内で昼食
・14:30 KTX韓国高速鉄道にて太田へ
・15:27 太田着、バスに乗り換えて全州へ
・17:14 滞在予定のホテルに到着

現地入りした24日は、ホテルにて宴会場のような広めのスペースを借り、ストレッチなどして約1時間身体をほぐして終了。
試合前日となる翌25日、16時から全州ワールドカップスタジアムのサブグラウンドで最終調整を行いました。
このとき、スタジアムの外周や近隣のW杯関連のモニュメントなどを目にして、清尾さんと同じような感想を私も抱いていました。気候的な要素の違いもあるのかもしれませんが、特に塗装の色褪せを感じる箇所が多く、そこに若干のわびしさのようなものを感じさせられました。


さて、前置きはこのくらいにして本題の試合へ。
試合は9月26日19時、埼スタでの第1戦から7日後。
第1戦は長谷部と達也のゴールで2点先取、試合終了間際に1点を返されて2-1という展開。
レッズとしては、この第2戦は0-0でも先へ進める状況。
一方の全北はもう後がありません。
しかし、先制したのはレッズ。
水曜日にもかかわらず3,000人を超す浦和サポーターが駆け付けた側のゴールに、前半3分、ポンテが右足を一閃。
ペナルティアーク手前からのシュートはGKがキャッチしきれず、こぼれたところを詰めてきた達也が右足インサイドで確実に押し込んでネットを揺らします。
これでトータルスコアは3-1に。

第2戦、開始早々に達也がネットを揺らして全北現代の出鼻をくじく(撮影:清尾 淳)


全北サイドにとっては「最悪」としか言いようのないの立ち上がりでした。
以降、彼らの攻撃は激しさを増し、時間が経過するにつれて激しさの内「乱暴さ」の占める割合が増えていきます。
足ごと刈り取るかのようなボールへのチャレンジ、主審への抗議、シミュレーションなどが積み重なり、結果、22分にはひとりが退場に。その際、主審が赤いカードを掲げた位置が全北サポーターの目の前だったこともあり、フィールドにはペットボトルをはじめとして様々な物が投げ入れられる状態に。さらに38分にはポンテがオジェック監督の目の前で倒され、文句を言った監督にも相手選手が喰ってかかる始末。

レッドカードを機に、荒れ模様の試合はさらにエスカレートしていくことに(撮影:清尾 淳)

1-0でレッズがリードしたままゲームは後半へ。
「ひとつの決着」がついたのは22分でした。
レッズCKからの相手オウンゴールで2-0に。トータル4-1、さらに全北としてはひとり少ない状況。
この時点で試合は終わりました。
そこから先はもう「サッカー」と呼べるような代物ではありませんでした。重傷者が出ることなく帰国できるよう、祈るだけの長い長い20数分間。
歯に衣着せない物言いをする長谷部などは、試合後、率直にこう口にするほどでした。

「ケガしたくなかったんで、なるべく早くボールを離すように心がけていました」

その後のスコアは動かないまま、レッズが勝利。
たとえば闘莉王のように唇の端を血で赤黒く染めた選手もいましたが、幸いにも以降の試合出場に支障があるほどの負傷者は出ず、チームは帰国の途につけることとなりました。

こうしてノックアウトステージ初戦の相手である全北現代を破ったレッズは、大会のベスト4へと駒を進めます。
以下はあくまで個人的な心象です。
いわゆる予選リーグとなるグループステージを振り返ったとき、守備陣をはじめとした全選手の高い貢献度は前提として、その上でキーマンとなったのは誰か?
ポンテと永井のふたりだったと、私は思っています。
苦境に立ったチームをゴールへ向かう強気のプレーで鼓舞したポンテ。
ポンテのチャンスメイクからゴールネットを揺らした永井。
この2人がいなければ、アウェイでのシドニーFC戦とペルシク・ケディリ戦で得た勝ち点2は手に入らず、グループステージで敗退していたかもしれないからです。

ACL前半の戦いを牽引したポンテと永井(撮影:清尾 淳)

そして新たにはじまったノックアウトステージ、チームにはさらに達也と長谷部ふたりの力が上乗せされた。
このことが、玉座への道を大きく切り拓いたのではないか。
私には、そう思われてなりません。
全州から大原サッカー場に戻ってきて数日後、達也はこんなふうに語っています。

全州でのゴール後も、いつもの口づけパフォーマンスを見せた達也(撮影:清尾 淳)

「得点できたのは、自分だけじゃなくてチーム全体が集中しているおかげ。僕だけが貢献してるわけじゃなくて、他の人も貢献してるし、逆に自分ももっと他の部分で貢献しないといけないと思っています。自分はなるべく出られるときに出て、活躍というか、チームに貢献しないといけない。レギュラーだなんて思っていないし、良い準備をしないといけない。気を抜けないです。そういうのもあって、良い緊張感でサッカーできています」

いわゆる『ビッグマウス』とは程遠い内容。
しかしながら、常々「自分が得点できたのはそもそもボールを奪ってくれたDFのおかげ」と口にしてきた彼らしい、『達也節』に溢れた言葉でした。

(了)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?