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起業のレバレッジ#6 価格のレバレッジ

スタートアップ支援で最も多い相談の1つが価格の決定についての相談です。結論から言うと、多くの場合、価格をもっと上げるべきです。今日は、価格を上げることがいかにレバレッジが効くかということについて書きたいと思います。

あなたのサービスを10倍の価格で売れば、売上は10倍になる可能性がある

あなたのサービスに2倍、あるいは10倍の価格を設定したら、あなたのサービスは売れなくなるでしょうか?競合がたくさんいる場合は価格をアップするのは難しいかもしれません。一方、とても新しいサービスの場合は、価格を上げても販売数に価格差ほどのインパクトはない場合もあります。(例えば、中〜大企業向けのサービスを売る際に5000円も5万円も決済の手間は変わらない可能性があります。5万円と50万円は大分変わる可能性があります。)

とにかく価格を10倍にすれば、あなたの売上は10倍になる可能性があります。10倍にどうやったら出来るかを考えましょう。

10倍の価格をつければ同じ売上を作るために10分の1の顧客を獲得するだけで良くなる

これはシンプルな計算ですね。月売上1000万円を作ろうと思ったら、月額5000円のサービスだと2000社に導入が必要ですが、月額5万円のサービスなら200社への導入を行えばOKです。

200社を1年間で獲得することは非現実的ではありません。1ヶ月に17-18社ほどの新規顧客を獲得する。商談数は月に50社から100社程度になるでしょう。この目標は営業マンが社長しかいなければかなりストレッチした数字ですが、決して不可能な数字でもありません。

あなたのサービスを10倍の価格で売れるにはどうしたらいい?①:機能でなく価値を売ること。

価格の決め方が難しいと感じているとしたら、今提供できている機能による価格がいくらなのかが分からないという風に考えていることが多いです。

価格の決め方として、これは間違っています。機能から価格を考えようとするのではなく、相手が得られる提供価値から価格を考えるべきです。

お客様の売上を確実に3000万円アップできるサービスがあるとしたら、そのサービスに年間500万円払うことはリーズナブル(買わない理由がない)なはずです。

あるいは、お客様の会社のコストを3000万円分カットできるサービスであれば、こちらも年間500万円払ってもらうことは難しくないはずです。

お客様の売上を確実に3000万円アップできる、またはお客様の会社のコストを3000万円分カットできるという部分が価値になります。

この価値を生み出さずに価格を設定することはそもそも不可能です。まず、お客様に提供する価値を数字で表現する必要があるのです。

あなたのサービスを10倍の価格で売れるにはどうしたらいい?②:売るべきお客さんに売ること。

同じサービスでもお客様の事業規模によって、あなたのサービスで30万円しか売上がアップしない顧客もあれば、3000万円アップする顧客もいるはずです。

つまり、正しい顧客ターゲットに売るということです。この場合には、30万円しか売上がアップしない顧客候補には売らず、3000万円アップする顧客候補に売るべきということになります。

高い価格は健全な事業構造を作り、対面営業費用の捻出を可能にする

高い価格設定は、より大きな粗利を生みます。一般的には、年間60万円未満の商材を売ろうとすると、営業人件費やマーケティングコストを計算した際には、赤字になると見込まれます。

*営業マンの人件費が2500円/hとすると、1社あたり往復時間含め3h、1案件獲得までに10回面談が発生(5社×2回面談)するとし、面談獲得単価が5万円/社とすると合計30万円強が1案件の獲得コストになります。

例えば月3万円の商材では顧客平均で1年は継続してくれなければ、案件単体でもペイしません。売っても売っても利益がでない、という状況に陥ります。(これに固定費が乗ってくるわけですから。)

高い価格を設定しなければ、対面営業のコストを捻出できないので、オンライン・マーケティングで取り切るという難易度が高いことをやらなければならなくなります。さらに難易度が高いのは、このモデルはコンシューマビジネスに近いので、かなりの赤字を掘るタイプのビジネスであり、かなりの資金量を要するビジネスになるということです。もちろん不可能ではありません。)

お客様のタイプごとに提供価値、そしてそれに紐づく価格はかわってくるので、お客様のタイプを絞り、価値と価格を見極める

当然、売上が1億円の会社と、10億円の会社と、100億円の会社では状況も提供可能な価値も制約も異なってきます。マーケティングやクロージングの方法も異なってきます。

なので、自分のサービスはどのタイプのお客様に提供するべきなのかを見極め、価値と価格を見極めていきます。

値上げをして顧客は離れないのか?

値上げは顧客が少ないタイミングの方がハレーションが少なくて済みますが、ユーザー数が増えてからでも行われている事例もあります。

値上げした事例①Yahooプレミアム

もう結構前の話ですが、料金改定が大きく業績に貢献するんだな、っていうのを初めて直接的に理解したイベントでした。

当時1000万人規模であったYahooプレミアム会員の月額会費を82値上げするとyahooの月売上が8億円伸びる計算になります。年100億円です。

当然解約が発生するのでそれよりは下がりますが、当時Yahooオークションなどを使っていたユーザーは代替手段がなく抜けられない状態だと思いますし、82円の割に解約する手間が大きいため、退会もビジネスに影響あるレベルでは発生しなかったのだと思われます。(以下参照)

値上げした事例②Best Teacher

代ゼミグループにM&Aされた英会話サービスのBestTeacherも何回か値上げを行っています。

英会話サービスはある程度勉強したら勉強を終える方が多いサービスだったりするので、新規顧客だけへの値上げを行いやすいということがあるかもしれません。

2014年の月謝5,980円(税込) ▶ 月額9,800円(税込)の価格改定は結構ビッグジャンプだったので短期的にはCVRが下がったんじゃないかなと思いますが、値上げ前の駆け込み課金なども増えプラスの影響もあったようです。

値上げした事例③freee

こちらは2020年5月1日からの変更ということで最近の事例です。

概ね20%の値上げ(スタータープランで月額払い980円 ▶  1,180円への変更)ということですが、仮にも事業をやってる方なら痛くも痒くもない金額感です。会計は標準化されているので他ソフトへの乗り換えは簡単ですが、他のソフトに慣れる方がコストが高いですよね。こちらも解約がものすごく増える、ということは無いのだろうなと思います。

価格はあなたに最もシンプルにレバレッジを与えてくれる

サービスを10倍の価格で売れば、売上は10倍になる可能性がある。こんなにシンプルなレバレッジは他にありません(笑)

価格を上げることを恐れずに、どうやったら価格を上げられるかを真剣に取り組みましょう。あなたのビジネスを殺すのも、あなたのビジネスを圧倒的に加速してくれるのも、価格なのです。


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