ころのすけ

東京出身、ロンドン在住。 アメリカとイギリスを合わせ、海外生活がもうすぐ20年になり… もっとみる

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東京出身、ロンドン在住。 アメリカとイギリスを合わせ、海外生活がもうすぐ20年になります。 旅の記憶、日々の暮らしなどを徒然なるままに。 スキのお礼には我が家の愚猫が登場します。

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誰かのなかで生きる

「朝のリレー」という谷川俊太郎の詩が好きだ。 こうやってふるさとから遠く離れたところで暮らし、テムズ川越しにのぼってくる朝日を眺めていると、しみじみとこの詩が沁みてくる。 日本で夕陽が沈むころ。 テムズ川に朝日が昇る。 ♢ 「命のリレー」というフレーズをnoteで目にしたとき、私たちが生きているなかで渡していくいろいろなバトンに思いがいった。 私のアメリカ妹は、アメリカ赤十字の緊急治療室で働いている。 彼女がカバーするたくさんの仕事のうちのひとつが、亡くなった方のド

    • 白鳥と、ネコと。

      「マシュー・ボーンの白鳥の湖」映画版を観にいった。 先日近くにあるコミュニティ映画館へ「オッペンハイマー」を観にいったとき、壁に「マシュー・ボーンの白鳥の湖」の告知を見つけ嬉しく驚いた。 昔、渋谷の文化村で舞台を観て圧倒された、男性が踊る白鳥。 その映画版が公開になるらしいと。 演出や解釈で全く違うものを生み出すというのは、料理や音楽もそうだけれど、本当にすごいと思う。「こうあるべき」を超えたところがみえるひとの才能というのには圧倒される。 ◇ そして、20年前、文

      • 離れるという勇気

        <この投稿は、映画「オッペンハイマー」のあらすじに触れています> 映画「オッペンハイマー」を鑑賞した。 映画「ひろしま」を観てから遅れること数週間。 出遅れすぎて、セントラルロンドンの大きな映画館は、ほとんど「オッペンハイマー」の上映を終えてしまっていた。 まるで夏休みの宿題をし残したように、罪悪感と焦燥感にとらわれていたら、近所のコミュニティ映画館が一日限定で木曜の夜に上映するというメールがあった。 ちゃんと観よ、という啓示かしらん。 よし、平日の夜ではあるけれど、

        • お盆の帰省はカタラン流

          8月の終わりに、ふたたび私はスペインを訪れた。 今年3月にもいった、バルセロナの南側のエリア。そう、友達の住むところだ。 イギリスの一年間の祝日は8日しかない。 元旦、イースターの金曜と月曜、5月の第一月曜、8月の最初と最後の月曜日、そしてクリスマスとその翌日。 イースターは日付が毎年変わるので忘れがち。 5月の休みも気がついたら来週じゃんという感じ。 でも、8月のお休みは最近カラダが覚えてきた。だから一か月くらい前に思い出してフライト検索をした。 ふむ。どこにいこう。

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        • 月に着くまで13分。
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          あの選択をしたから

          それは、焼き鳥好きのイギリス人だった。 「アンドリューがね、ディナーはヤキトリを食べたいらしいの。でも私は用事があるし、かといって英語ができないと彼のお相手が務まらないし。だから、お願いしていいかしら」 イギリス人の上司は、お願いとは思えない口調で、そういった。 アンドリューとは、イギリスの本社から数日だけ東京オフィスに来ているシニアバイスプレジデント、要はお偉いさんだった。 日本で使っている業務管理システムが、あまりにヨーロッパの仕様そのまますぎて、日本の現状に全く

          あの選択をしたから

          過ちは繰返しませぬから

          映画「ひろしま」の上映会へいってきた。 「Oppenheimer(オッペンハイマー)」をイギリスで観た日本人の女性が、映画の中ではオッペンハイマーが発明した原爆がどんな結果をもたらしたのかについて直接描かれていないことに「日本人として」感情を揺り動かされ、ボランティアとして働く映画館での特別上映に漕ぎつけたそうだ。 ♢ 実は、この「ひろしま」上映会を知った時に私のあたまに浮かんだのは、中学校のとき学校で観た映画だった。 いまでも思い出せる白黒なのに目に鮮明に焼きつくよう

          過ちは繰返しませぬから

          コリアンダーはどんな味?

          昔、今や廃刊となったホットドッグプレスだったろうか、そんな若い男性向け雑誌のハウツー記事に「初めてのデートで映画館に行くな」と書いてあった。 2時間あまり、言葉を発することなく、ひとつの画面、ひとつのストーリーを一緒に観る。 それではお互いの事をなにも知ることができない。 初めてのデートは、お互いをわかることが大事なんだから、と。 同じものをみているけど、相手をみないから。 同じものを見ていても、感想のギャップに気づくだけかもしれないから。 それに、そもそも。 本当に

          コリアンダーはどんな味?

          地味なオムレツ

          チャーーーーーーーッ。 熱くなっていたフライパンに卵液を流し込んだ瞬間、高めの音が鳴る。 ♢ 子供のころ、6時になると1階にある食堂へ降りていき、姉と二人で夕飯の支度を手伝うのが決まりだった。 中学に上がったあとは、電車通学なことを言い訳に、このお手伝いを避けるよう、わざと6時過ぎまで帰らなかったりしたけれど、小学校の時には当たり前のようにとらえていた。 「今日はなあに?」 姉と二人、腕をまくってシンクの前に立つ母に話しかける。 とはいっても、長い時間がかかるメニ

          地味なオムレツ

          ありがとう

          先月、そして今月と、私が過去に書いてきたnoteに、サポートをいただいた。 「いつか本社にいって、グローバルの仕事のやり方を変えてやる」 そう握りこぶしをかためてイギリスへやってきた私は、幸運にも素晴らしいプロジェクトメンバーに恵まれ、その願いをかなえた。 けれど、かなえたがゆえに、もうれつな燃え尽き感をぬぐうことができず、転職した。 そして、転職した先の会社を、コロナのまっ最中、20か月で辞めた。 そこでは、白い灰に火がつかなかったから。 打ち込むような趣味のない私。

          神さまがいる

          「あああ、お茶碗のはしっこに神さまが残ってるわよ」 小さい頃、きちんとご飯を食べ終わらないと、母親がいった。 ご飯つぶを残すなんて、目が潰れる、とも。 お米には神さまが宿っていると自然に思いながら大きくなった。 ◇ ただでさえお米にはそんな思い入れがある。 その上、いま暮らすイギリスでは日本のお米は貴重品だ。 だから、お米を計ったり、研いだあと水を流すときには、ものすごく慎重になる。 鍋を傾けすぎて、シンクに数粒でも落ちようものなら、一粒一粒拾ってしまう。 「そん

          神さまがいる

          海外転職ー採用側が見てるもの

          先週、プロジェクトがようやく稼働した日。チームをねぎらうためにみんなでパブにいった。 たまたま隣に座ったのは、うちのチームに一番最近入ったインターン。20代のアメリカ人。 「で、3か月経って、どんな感じ?一番プロジェクトがジェットコースターなタイミングで入ったから、いろいろ大変だったでしょう」 と私は彼女に話しかけた。 彼女は、どこまで本音を云おうかな…という感じに直属の上司であるインド系イギリス人のほうをチラリと見た後、私の方をむいて話をはじめた。 「確かにチャレン

          海外転職ー採用側が見てるもの

          パリは燃えているか

          燃えてなんかなかった。 デモの人影もなかった。 オルリー空港も厳戒態勢という感じではなかったし、バスで到着した14区は金曜の夜にしては少し人が少ないなというくらいで、通りにいっぱいにならんだテーブルで、ひとびとが思い思いにタバコをくゆらし、アペロールや白ワインを楽しんでいた。 前にも書いたけれど、やっぱりニュースというのはヒトの眼鏡だ。 いちばん激しいなにかが起こっているところを切り取って報道されれば、それがすべてなのかと誤解しがちだ。 とはいっても、リュクサンブール公

          パリは燃えているか

          あたし、ごくろうさん。

          今週火曜日。 去年の夏から根回しに奔走し、力技で予算をブン取ってスタートさせたプロジェクトが、ようやくシステム稼働日を迎えた。 以前の会社で世界を回ってやってきたことをミニサイズにしてヨーロッパ版でやるような感じ。 勝手はわかっているものの社内にまったく他のエキスパートがいない中、頭を下げたり時には声を荒げたり。 完全じゃないものの「今できるベスト」。少なくとも、そんな感じで、自分では出し切った気持ちがあって。 そして。 その翌夜。久しぶりに扁桃腺が腫れて、熱を出した

          あたし、ごくろうさん。

          ロンドンくるま右往左往

          2019年4月8日のこと。 大気汚染対策として「超低排出規制ゾーン(Ultra Low Emission Zone,略称ULEZ、ウレズと発音する)」がロンドンでスタートした。 これは一定の排ガス基準を充たさない車やバイクがロンドンの市街地を走る場合お金がかかるという仕組みだ。 すでにこの規制が始まる段階で、ロンドンの中心部分に乗り入れる場合は混雑回避税(Congestion Charge)が掛けられていた。 ULEZは、そこに追加してさらに1日あたり乗用車なら12.5ポ

          ロンドンくるま右往左往

          偶然の一致

          鎚起銅器。 「ついきどうき」と読む。 鎚で叩き起こして一枚の銅の板から作られる器だ。 もう10年ほど前だろうか。当時新潟に住んでいた友達夫婦を訪ねたとき、玉川堂という工房へ連れて行ってもらった。 まるで茶道の先生のおうちにお邪魔するような風情のある玄関をぬけ、さらに歩みをすすめていくと、ひろい畳敷きの作業場で、黙々と何人もの職人さんが作業をしていた。 その手元で少しずつぺらりとした金属板が個性を身に着けていく。 何と美しいんだろう。 ポンド高のいきおいもあって、最

          スペクトラムを描いて

          2週間のトルコ旅行の最後に、そのあとイズミール空港から出発する人だけバスに乗り合わせていくことになった。 人数が減ったからなのか、おかしなもので「修学旅行が終わった後」のようなすこし違う空気感が、その朝のバスには流れていた。 席も皆これまでとはかなり違う場所に座ったので、それまであまり話をしなかったカリフォルニアでランドスケープデザイン(造園業というのがいちばん近いだろうか)の仕事をしているキャロリンと初めてじっくり話すことになった。 「私は、ずっとイタリア系だといわれ

          スペクトラムを描いて