見出し画像

イギリス郵便ポストの秘密

イギリスと聞いてあなたが思い浮かべるものはなんだろう。
ビッグベン?
フィッシュ&チップス?
ビートルズ?
ユニオンジャック?
それとも、もうBMWの傘下になってしまったミニクーパーだろうか。

同じようによくキーホルダーのチャームにされる「赤い郵便ポスト」。

イギリスから郵便制度を導入した日本でも基本的にポストは赤色なので、めずらしく感じないかもしれない。
でもアメリカではポストは青い。
フランスやスペインなどでは黄色が普通。

実は赤いポストは他の国の目には「象徴的」に映るのだ。

郵便制度の基礎が確立したのは、ヴィクトリア女王の即位から3年後の1840年。
世界で初めての「切手」ペニー・ブラック(漫画マスターキートンの中にもでてきましたね)が使われたことでも有名だ。

そして1852 年。
英国領のジャージー諸島にあるチャネル島に英国初の自立型のポストが建てられた。

1853年にはカンブリア州カーライルに英国本土初の郵便ポストが設置。
そして1874 年には緑だった色が目立つよう赤に変更される。

当初の郵便ポストは六角形。
しかし、一部では、雨水が侵入したり、デザインが世間から醜いといわれたり散々だったらしい。

こうして現在の「赤い円柱形」におさまるまで、ロイヤル・メールは試行錯誤を繰り返したという。

色も形もさまざまなポストたち

現在も使われているポストの中で一番古いものは、ドーセット州(Dorset) のホルウェル(Holwell)に立っている。
1853 年設置のこのポストは、171年たったいまでも現役。
かなり傷んでいたので2014年に住民の訴えでリストアされたらしい。

塗り直された後なのでビビッドに赤い。

このポストの長い歴史、さまざまな色・形・デザインのなかで、ひとつだけすべてのポストに共通していることがある。

それが、郵便ポストの秘密だ。

VR、EVIIR、GVR、EVIIIR、GVIR、EIIR、CIIIR

郵便ポストのボディに描かれているこれらの「暗号」。
何を意味するか、おわかりだろうか?

すぐにわかった、アナタ。
相当のイギリス通。いやロイヤル通に違いない。

これは政府機関や公的書類などに使用されるロイヤルサイファ(Royal Cypher)。
いうなれば、君主を示す印だ。

ロンドン塔のガード(通称ビーフィーター)の制服にも大きく描かれている
  • VR: Victoria ヴィクトリア女王 (1837-1901)

  • EVIIR: Edward 7th エドワード7世 (1901-1910)

  • GVR: George 5th ジョージ5世 (1910-1936)

  • EVIIIR: Edward 8th エドワード8世 (1936)

  • GVIR: George 6th ジョージ6世 (1936-1952)

  • EIIR: Elizabeth 2nd エリザベス2世 (1952-2022)

  • CIIIR: Charles 3rd チャールズ3世 (2022- )

これを見るといかにジョージ5世がシンプル好きだったかよくわかる。
最後の王冠はスコットランドでしかみられないもの。
なぜならエリザベス1世はイングランドとウェールズの女王でしかなかったため、エリザベス「2」世のロイヤルサイファは受け入れがたい。よって聖アンドリューの冠が使われている。

それぞれこれらの君主のことを示す。

そしてこれがわかったところで、イギリスの街歩きをしてみると、出くわしたポストが違って見えてくるはずだ。

シェイクスピアの生誕地ストラトフォードにあったジョージ6世時代のもの。
これはエドワード7世時代
ジョージなんだけど、5世か6世かが入ってない!とずっと思っていたのだが、今回ジョージ5世はあえてシンプルなロイヤルサイファにしたのだと学んだ。
エリザベス2世のもの
ヴィクトリア女王時代のポスト。
なぜか普通の家の敷地内にあった。後世に区画整理があったのかもしれない(イギリスでは古い建造物を変えたり動かすのに申請や許可が必要なことが多い)。
しかし郵便屋さんは門から入って収集するのだろうか。
そして、かなり貴重と思われる六角形のヴィクトリア女王時代のもの。現役!
こういうレアものを見つけると、高得点を獲得した気持ちになれる

今日も私はチラチラ左右に目をやりポストをチェックしながら歩く。
レアなものは写真に撮ってコレクションを増やしつつ。

さあ、あなたもイギリスにきて、ポストの暗号を読み取りながら、街歩きをしてみてはいかがだろう。


いいなと思ったら応援しよう!

ころのすけ
いただいたサポートは、ロンドンの保護猫活動に寄付させていただきます。 ときどき我が家の猫にマグロを食べさせます。