6/26 バンドマンと優しい街

ずっと好きなバンドの人が今年の一月に亡くなっていた。


その人は、病気を理由に去年脱退をしていた。

私はその人のことが好きだった。

ライブで、誰も傷つけないように気を付けながら話すような、優しい言葉をくれる人だった。

震災のことについても「音楽はなにもできない」とおっしゃっていて、どこまでも優しい人だなと思った。

会場の物販で買ったCDについてきたサインも四人分しかない。

いつか五人分集めるのが希望だった。

どうして死ななきゃならなかったんだろう。
私がかわりに死ぬのに。

神様はあまりに平等に死を振り分ける。

悲しくて痛い。

脱退した時点で、なんとなく、治らない病気なんだろうな、というのと、死というものが絡んでいるような気がしていた。

だから私はそのバンドの情報を一切遮断した。

ファンクラブに入っているので、毎月500円が口座から引き落とされる。

同じ時期にもう一人脱退したこともあり、ショックで私はもっと離れるようになった。

見ない、きかない、見ない、きかない。

繰り返してる間にあの人は死んでしまっていた。

悔しい。できることなら、私も同じ苦しみを背負いたい。

死んだら人はそこで、ぷつん。

今、ソファの上にはティッシュの山ができている。

白いバラが咲いてるみたい。

死んだあとの世界はないと思っている。

だけど、もしあって、あの人が行けているとしたら、この世の苦しいこと、痛かったこと、辛かったことはぜんぶなくなって、記憶だけは残っていて、毎日花がたくさん降る街にすんでいるといいな。

私のティッシュの花もたまに降る街に。

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