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岡本かの子先生、カッコいいです。

今すぐスッキリさせたい! そんな方へ、小説の一片を!

ご紹介するのは、岡本かの子作「河明り」(1939年発表)から。
ある女性作家は、執筆中の小説の「娘」の性格に想を得るため、川辺にある貿易商の店の部屋を借ります。貿易商の娘は、華やかな美貌を持ちながら、「竹を割った中身の虚ろな寂しさ」を感じさせ、作家の興味を引きます。

執筆に集中しなければと思いつつ、作家は、娘の事情を知るようになります。ものごころついた頃から、娘は、船上にいることが多いある店員を気にかけてきました。しかし、男は、心の内を明らかにしないのです。

悩む娘に作家が放った言葉と、その気持ちが、次のように描写されました。

「面倒臭いじゃありませんか、そんなこといつまでもぐづぐづ云ったって・・・・・そんなこと云って、その人が陸へ寄り付かないなら、こっちから私があなたを連れて、その人の寄る船つき場へ尋ねて行き、のっぴきさせず、お話をつけようじゃありませんか」
 私も東京生まれで、いざとなると、無茶なところが出るのだが、それよりもこの得体の知れない男女関係の間に纏縛(てんばく)され、退くに退かれず、切り放しも出来ず、もう少し自棄気味になっていた。

作家と娘は、この後、シンガポールへ行き、男と会います。二人を残し、一人で帰国した作家は、思うことがあり、物語を書き直す決意をします。

作家の行動力が、気持ちのいい作品です。
遺作として1939年に発表されたことを考えると、そのような本作を描いた岡本かの子の感性に驚かされます。
岡本かの子先生、カッコいいです!

お立ち寄り頂き、ありがとうございました。

今回読んだ本 岩波文庫 「河明り・老妓抄他一篇」

物語の一片 No.12 「河明り」岡本かの子


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