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映画『きっと、うまくいく』

■はじめに
インドの名門理系大学に通う学生が繰り広げる波乱万丈の青春劇。

*製作などプチ情報(wikipediaより)
・2009年の公開時、インド映画歴代興行収入1位を記録
・スティーヴン・スピルバーグは「3回も観るほど大好きだ」と絶賛

■感想

①風のような不思議な存在・ランチョー

英題が「3 idiots」であったり、
日本版のプロモーションでも学生3人を並べて
「学生3人が織りなす群像劇」などとして"3人”という見せ方をしているものの
実際の関係性は破天荒で全く掴めない、それなのにさわやかで
風のような不思議な存在・ランチョー
を軸に、
振り回される友人2人、という構図である。

このランチョーが何とも言い難い存在だ。
周りは"変わり者"と白い目で見る、
ところが彼の行動は一貫していて人の心に真っ直ぐに刺さる。
その理由をざっと羅列すると以下だ。

・人一倍頭がキレて発想力が豊か
(寮の先輩が新入生をしごくシーンで、科学の力を駆使して1人だけ免れる)
・教師全員、どころか大学長にも全く怖じけず物申せる
(それゆえに何かと目の敵にされる、学長↔︎学生という上下関係なのに
 完全に相手を対等な土台に乗せて戦わせる天才…)
・「教育」とは、「学び」とは、といった壮大なテーマに自分なりの答えを持っている
(学長から罰として教壇に立たされるシーンで学生に向かって雄弁)
・大事な友人にはとことん尽くし、とことん向き合う
(喧嘩中にも関わらず危篤の父をバイク便で運ぶほか、
 大きな進路の選択に迷う友人に
 「自分に正直に生きるんだ」と正論をくじけずに伝えられる)
・女性に対してのアプローチもスマート
(自分のスタンスだけ明示して諭し、上手い距離感を保って
女性側から追いかけさせることができる。放って置けないってやつ…?)

そんな彼の姿に、臆病になったり警戒していたりした周りも
次第に心を開いていく。
彼のような人が近くにいたら、夢中になってしまうと思う。
以下は、彼の人間性を表すとても好きな台詞だ。

友人「彼(ランチョー)は
世の中の全てに挑戦していた」

ランチョー「心はとても臆病だ。
だからマヒさせる必要がある。
困難が発生した時にはこう唱えるんだ
"うまーくいーく""うまーくいーく"」
友人「それで困難が去る?」
ランチョー「無視する勇気が出るんだ」

②コメディではない、全部入りのザ・マサラムービー

日本ではジャンル:コメディに分類されているようですが、
とてもコメディと表現するにはチープで畏多くなる、
コメディ以外の要素が盛りだくさんの超大作でした。

こういった作品を"マサラムービー"と呼ぶようで
その意味は、
マサラムービー=
ドラマ、友情、恋愛、サスペンス、アクション、音楽、などもうとにかく全部入り!!のボリウッド映画
なので、これが適切なジャンルの表現かなと。

自分は1回ではその全ての要素を咀嚼しきれなかったので、
そのまま2回見ました…一つ一つのシーンが重要なメッセージを持っていて
インド映画のクオリティの高さに改めて感動。。

特に、全体を通して明るく楽しい気持ちで見れる作品だというのに、
・自殺大国インドの社会問題も浮き彫りにする側面
(インドでは90分に1人学生が自殺するそう)
・学生時代から10年後の時間軸を交差させながらミステリー的に描く
・まさかの学生総出の出産シーン
などなどハラハラどきどきで見ている側を全く飽きさせません。。

インド映画ならではのミュージカル調の物語の進行も健在で
楽しい曲がたくさん流れます。

お気に入りは、やっぱり
♫ “Aal Izz Well”(アール・イーズ・ウェル)

これは“all is well”=うまくいく、が訛った方言だそう。
物語の中でランチョーが語り広め、次第に皆が口ずさむようになります。

「おーるいーずうぇーる♫」
こう唱えておけば、
どんな困難があっても悠々と乗り越えて
人生を好転させていける気がするーー
そんな素敵な素敵な作品でした。

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