医学部を休学しての旅はアリ?ナシ?…医大生からの相談に回答しました
アメブロで、医学部の学生さんから質問をいただいたことがあります。
色々なご意見あると思うのですが、
数ある医師の中から、自分を選んでくださっての質問。
ここで求められているのは「私の意見」
自分の価値観を書くことにしました。
💡回答💡
まず、数あるブログの中から私の記事を読んでいただけましたこと、意を決して私に質問頂きましたこと、大変光栄に思っておりますとともに感謝申し上げます。ありがとうございます。
長文になりますが、きちんと回答させて頂きたく思いますと同時に、
他の悩める皆様にも共有させていただきます。
医大4年生ともなると、解剖が終わり、臨床実習手前の、まだ医師になる実感のあるようなないような、なんとも言えないぬるま湯生活で若干中だるみ&迷走気味でらっしゃりますでしょうか。
私も経験しました。医師になる前の猶予期間のような。不思議な時期。
5年生になって臨床実習が始まって、いろいろかったるそうだし、はたまた国家試験受かったら受かったで、そのあとの研修医生活きつそうだし…できればもう少し気楽で宙ぶらりんなこの状態でいたいなぁと思ったことも多々あります。
だからこそご相談下さった部分もあったのかな、と推測しました。
が、このままたるみきってしまうか、背すじをしゃんとするかは、ご本人しだい。
少しご自身に喝を入れて頂くためにも、真剣にお答えさせて頂きます。少々きつめの表現になることお許しください。(むしろこれが医師として後輩を指導する際の本来の私の口調です)
まず、私ですが、現役で私立の医学部に入学後、1年も遅らすことなく最短の年数で専門医、分野指導医、医学博士を取得し、医師としてのキャリアを10年間積み重ね、やれることをやり、どこでも好条件で雇ってもらえるようになってから、この生活を始めております。
相応の社会的地位や責任がございますが、それを果たしながら、「素直に感じるものを受け入れられる生活」をいたしております。そしてそれを始めたことが遅すぎたと後悔したことは一度たりともありません。逆に早く医師になり、下積みふくめて10年頑張って、キャリアを積み重ねるだけ積み重ねておいて良かった、と思っております。
この後のことは、それを前提としてお読み頂ければと思います。
あなたは、あなた1人だけの力で生かされているわけではありません
いきなり、すみません。
まず、私は、自身も両親に学費を払ってもらい、医師になってからそれなりの税金を払わされている身として、大学在学中の休学は病気の場合を除き、反対の立場を取っております。
医大生だけでなく全てに共通して言えること、それはあなた1人だけの力で大学に行かせてもらっているのではない、あなた1人のためにどれだけの人間が関わっているか、それはあなたが思うそれよりかなり多い、ということです。
それをわからない人間は社会に出ても成功していないように思うのです。
貴方を医学部に入学させ、通わせるご両親の苦労、そしてあなた1人、卒業するまでに日本の全国民が納めた税金がどれだけ補助金として使用されているのか、調べれば出てきます。私立でも上位のランクの医学部ですと国から注ぎ込まれるお金は他より高いそうです。
それを知ればとても休学なぞ考えられなくなります。
私には子がおりませんが、いたとして、果たして私が親から受けたものと同等のものがその子に与えられるか、とてもじゃないけどそのような自信はございません。
が、皮肉にもそれが実感できるのは、もう少し歳を経て、ご両親にそうそう会えなくなる、はたまた病気をされる、あるいは亡くなられるころになってやっとわかることでしょう。
医師になってからも例外ではありません。まともな医師であれば、自分1人だけでは医療は成り立っていかないことに、現場で気づかされることになります。
看護師、医療事務員、検査技師、その他多数のコメディカルの協力があってこそ、自分は医師として機能することができるのです。彼らをきちんと敬い、コミュニケーションをとることができない医師はいずれ必ず淘汰されていきます。
それを踏まえて医師としてのキャリアを考えていきましょう
私個人の見解ですが、
現行の制度では医師免許を取得し、2年間の臨床研修を終えるまでは、社会では高卒と同等としかみなしてもらえません。
さらに言えば、専門医をとって一人前というのもも勘違い。専門医を取得してやっと医師としてのスタートラインです。
しかし、そこまで行かずとも、いったん臨床研修を終えればアルバイトでも最低時給1万円の生活が送れるようになり、貴方の金銭感覚は今と1桁変わることとなります。
専門医クラスになればさらに地位や収入が安定してきます。
賢い方々は臨床研修が修了した段階で、医局や専門医のしがらみが生じる前の地点で1年休み、旅に出られてます。
中には「専門医を早く取ってから旅に出るべきだった」という輩がおることも確かですが、これは出産できる年齢にリミットがある女性に多いでしょうか。
臨床研修を終え、いったん専門の勉強を始めると、そこからは専門医や医学博士取得など、節目を迎えるまではなかなか抜け出すのは難しいでしょう。
が、これも考えれば当たり前のことです。
あなたを育てる側も相当労力がかかるからです。
ですが、それもおそらく、専門医相当か、それに近いレベルになられて、実際に下級医に指導を始めてからわかることでしょう。
「ドラマ」は何も旅行だけではありません!
「初インドを経験して今までとは全く違う世界にとてつもない刺激を受けました。」とのこと、
ですが、はっきり申し上げます。
医療の現場で受けられる刺激はそれ以上です!
そしてそれを医師の立場から味わえるのは医師のあなただけなんです!
それをどうして先送りにしますか?
こんな勿体無いことがありますでしょうか。
が、おそらくそれを心から実感できるのは臨床経験を積んで、1人で仕事を任せられる、責任を負えるレベルになってからでありましょう。
そこを味わわずに下積みの段階で嫌になってしまい、投げ出してしまう、もったいない医師がなんと多いこと。
医師になって数年でもそう思うのに、学生の、まだ国家試験を受けてもいないうちに休む、なんてそれ以前の問題なのです。
下積みの最中は延々と続くようで長いように感じますが、考えてもみてください、下積み時代、これは医師に関わらず、どの仕事においても、必ず通過して行かなくてはいけないことです。医師としてそれなりのキャリアを重ねつつある私でも、ブロガー・物書きとしては下積みの段階です。
投げ出したところで、つぎの新たなステージでの下積みが待ち構えています。
振り返れば下積みの時代なぞ、必死に毎日一つずつ課題をこなしていけば、あっという間です。
気づいたら知識がふえ、自分で決断することが可能になり、責任感が芽生えてきます。
そうなってから目の前に広がる景色…
それは私にとって、何より他に代え難いものです!
私は医師としてのキャリアが15年を超え、今現在は大病院で大きな手術はいたしておらず、クリニックでの外来診療・外来手術のみを行う身ですが、
それでも毎日毎日、院長から、看護師や事務員さん、そして何より来てくださる患者さんから学ばせていただくことばかりの素晴らしい日々の連続です。
このレベルになってから、旅など、臨床以外のことを始めても、ちっとも遅くありません。
旅だけではありません。周囲には臨床のかたわら音楽活動や執筆活動をされている医師もおります。
医療の現場がやたらとTVドラマや映画になるのにはそれだけの理由があるんです!
こんな素晴らしい医療という現場から、長期間離れて、旅行をするということは、少なくとも今の私には、考えられません。
ゆえに今は月曜の午後、火水は1日、臨床に当て、そこはなるべく休まず、残った木金土日〜月曜午前のみ(連休の際は月曜1日休みですね)を利用して旅をしているのです。
1週間以上の長期旅行は1〜2年に1回、GWやお盆などの大型連休を少しからめて(ど真ん中でなく、少しずらしてお休みが取れるので)、でも2週間以上開けることはありません。
私にとって、臨床の現場からある程度以上離れないようにするのはそれだけ重要なことなのです。
ただし、
私、大変ラッキーなことに、小学生の頃、アメリカに1年住むという経験ができております。
ゆえに、海外で長期過ごすことへのこだわりが他の方より少ないというのは確かにございます。
お時間ございましたらこちらの記事も目を通していただければ、と思います。
⇨ 『☆旅のコラム☆ 海外長期滞在や移住をせず、あくまで「トラベラー」でいる理由』
そのあたりを差し引いて、今までの文章をお読み頂ければ、とは思います。
以上、
ここまでのことの多くははあくまで私の個人的な意見です。
が、しかし、全ての人間に、全ての職業に言えることがあります。
もう一度おさらいしましょう。
あなたは、あなた1人だけの力で生かされているわけではありません
私立の医大とおっしゃいました。
決して誰もが合格できるわけではないし、誰もが通える学費ではございません。
学力じたい足らず、医学部に入ることすら叶わない方もいます。
親の経済的事情から、私立の医大を諦めざるを得ず、地元を離れて地方の国立医大に入らざるを得ない方もいます。
あなたはそんな中、学力にも家庭にも恵まれ、医学部に選ばれました。
後輩の女医で、いわゆる「毒親」に人生めちゃくちゃにされてる例もございますがww
そして、貴方をはじめとする若い皆さんの将来に期待し、
我々は必死に働き、決して少ないとは言い難い額の税金を納めています。
貴方が今どれだけの人に支えられているのか、一度見渡してみてください。
そして今貴方に与えられているものに感謝を忘れないでください。
貴方がこうして心身ともに健康で、こんな風に悩むことができること、
それは決して当たり前のことではありません。
病気やケガ、
それだけではありません。
震災、豪雨、台風、地震…
今、まさに、世の中を見渡せば当たり前にできていたことが、突然できなくなっている人が沢山います。
今貴方がこうして健康に過ごせていることは決して当然のことではないのです。
これからの長い人生、
幾度となく決断の時は訪れます。
しかし、どうかそれだけは忘れずに、
人生の選択をしていただきたいと思います。
長文になりましたが、私の回答は以上です。
質問してくださった医学生さん、
その他の将来のある若いみなさん、
今後より一層のご活躍をお祈りし、筆を置きたいと思います。
ここまでお読み頂きありがとうございました。
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