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【第4話】空のうえから、東京を歩く。

新幹線に乗ること一時間半。

出会い系アプリで知り合った男性に会いに、東京駅へ向かう。


今回は、浅草をまわったあとの続きの話。


▼前回の記事はこちら(in浅草)


そういえばだが、前回の記事で掲載した写真に実はひっそりとスカイツリーが映り込んでいる。

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見えますか?

うんこを通り越した先にある、東京スカイツリーが。


うんこネタはもうこの辺で。


浅草をまわったあと、そんな東京スカイツリーに向かうべく東京スカイツリーラインの電車に乗った。東京スカイツリーに行くのは、今回が初めてだった。浅草に着いたときに「スカイツリーだ!」と瞳をキラキラ輝かせた少年のように心が踊った。

「犬に興味ないって言ってたけど、どうだった?」
「うん?べつに…?普通かな」
「そう?楽しそうにしてるように見えたけどなぁ」
「こっぺもなんか犬みたいだったよ」
「???」

電車のなかで、豆柴カフェでの出来事を振りかえった。彼は目を逸らしながらまたいつものように冗談をいう。


そうこう話しているうちにも、浅草からたった5分ほどでスカイツリー前に到着した。


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高っ。


真下から見上げたら、首がもげそうなぐらい、スカイツリーはデカかった。あたりまえか。でもすんごかったの。

一度は来てみたかったから、「やっと来れた!」って気持ちでここに来てまた高ぶった。僕はこの日一日少年に戻れた。ううん、人はみんないくつであろうと少年の心を持っているのだ。

「スカイツリーが出来たときは、外に長蛇の列ができてたぐらい当時は凄かったんだよ」

スカイツリーができたばかりの当初、彼はスカイツリーを訪れていたらしい。そのときは外までズラリと人が並んでいたようだ。たしかそんな様子はテレビで見たことがあるような記憶がある。

そんな彼はその長蛇の列に並んだのかというと、「そんなわけない」と。

「じゃあ、どうしたの?」と聞くと、彼はなんだか政治に興味があるようで、話に聞くと彼は顔が広い。彼は政治のニュースを毎日欠かさずチェックをしては、ごくたまにテレビを見ながらぼやくように独り言を言っているほど。政治のことは僕は詳しくないから誰だか知らないが、政治の世界の人とどうやらつながりを持っているらしく長蛇の列の人を横目に当時スカイツリーに入場したのだとか。さすが東京人。いや、いくら東京人っつったって、たぶんそんなこと、普通はない。


そんなことを話してくれながらスカイツリーの受付へ向かう。一人あたり入場料3100円。

「ここはさすがにちゃんと払うね」
「うん、そう?」

彼は僕の分まで払ってくれようとしていたけど、たぶん、ちょっと無理してたと思う。

入場してしばらく歩くと、上へあがるエレベーターに着く。スカイツリーというだけあって、普通のエレベーターとは違う。「天望シャトル」と呼ぶらしい。内装も季節によって変わるらしく、音楽が流れるなかで見て楽しみながら展望デッキへ上がっていった。

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すご!!


本当は、夜に来たかった。夜景を見てみたかった。でも、この日の太陽は眩しいくらいに天気がよくて、見晴らしがすごくよかった。夜だったらたぶん、こんなにもはっきり東京の街は見れない。

そういえば中学のときの修学旅行では、東京ツリーに行く選択もできたけれど、自由行動の時間が限られていて行けなかった。こうやって高い場所から街を見下ろすのもそういえば初めてだなと思った。

新幹線のなかで富士山も見れて、こんなふうに東京を一望できて。休みの日に出掛ける普段雨男な僕なのに。この日はスターを手にしたマリオみたいに絶好調で、最高潮、無敵な気がしてならなくて。今日のふたりのためにくれた太陽からのギフトのような気もした。

「あそこにビルが二本並んでるように見えるのが東京都庁で、あの細くて高いビルがドコモタワーだよ。」

ただ東京を眺めるだけじゃなくて、指を指して僕に東京を紹介してくれる。


「で、そこにある大きな金の置き者が、さっきのうんこだよ」

もうええわ。


ちょいちょい冗談を挟むのが彼の特技である。


「で、あのあたりがね〜、俺の実家!」


へぇ〜、さいたまってこんなに近いんだ?と思った。彼の出身は埼玉だ。だが、スカイツリーから彼の実家は見える、はずがない。

冗談を言ってケラケラ笑う彼を、なんだか憎めない僕であった。


「東京ってさ、計画性とかまったく考えずに建物つくられてきたと思わない?建物の大きさが一個一個バラバラだしさ。」

僕はただただ東京の街はすごいって思っていたけれど、たしかにそういう見方をすれば、東京の街は実にいびつだ。スカイツリーから見た東京の街並みは、広いようで、案外そうでもないような気さえした。

こんなちっぽけな場所に、人間たちの願望や欲望がかき集まって形成されたのが、この東京という街なのかもしれない。なんとなく都会に憧れは抱くものだけど、東京という街にはどこか残酷さが垣間見えた。

東京のことはもちろん僕はまだよく知らないが、上京の歌を悲しく歌うアーティストが多いのにはやはり理由があるんだろうなと。東京に住むには、田舎暮らしをしている僕にはすこし窮屈な街なんだろうなと思ったりもした。

***

スカイツリーのなかで二時間過ごしたあと、近くで見つけたカフェでひと休みをした。

スカイツリーのなかにショップを覗いたりしたけれど、なにも買わなかった。グッズを買って帰っても家でそんなに使うことないし。

そう思っていたけれど、”思い出を買って帰る”って意味で、今思えばやっぱりなにか買えばよかったかな、とちょっぴり後悔している。

だから、この日もらった小さなガイドブックだけ、そっと机のなかに今もしまったままにしている。


カフェで注文した飲み物を、彼はものの5分で飲み干した。

「ちょっと早いよ」
「そう?」
「そうだよ。ちょっとぐらい合わそうとしてよ。」

次の予定までにはまだ十分時間がある。だからゆっくり休憩しながら話したかったのだけど、彼はマイペースだった。


もうすぐ陽が沈もうとしている。しかし、まだまだこれからだ。夜は長い。

カフェを後にしたら、毎月彼が楽しみにしているというとあるライヴを聴きに会場へと一緒に向かう。




────東京【夜】編

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