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【映画】サマー・オブ・ソウル

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評判通り凄かった。終始エネルギッシュでリズミカルな空気に包まれた映画だ。それはライブ演奏の場面だけでなく、当時の社会情勢が語られる場面でも、要点が勢いよく投げ出される感じで心に食い込んでくる。図抜けた歌唱、熱い演奏、キレの良いダンスなどと同じテンポで迫ってくるのだ。つまり、社会への怒り、生活の苦しさ、強く生きる姿、1969年の黒人が置かれた立場が、音楽と社会情勢が組み合わさった様相で観る者に伝わる。


関係者のインタビューが挟まれるが、観客として参加していた人物たちの思い出話が特に面白かった。映画で何度も映される黒人だらけの大観衆だけ観ていると"風景"に近い感覚になるが、その中の人物にスポットを当てる事でフェスティバルを生々しく感じる事ができた。


各ミュージシャンも変化の時を迎えていた。スティーヴィー・ワンダーは新境地を目指していた。スライ・ストーンももしかしたらそうだったかも知れない。マヘリア・ジャクソンは晩年の域に達していて、若きメイヴィス・ステイプルズの力を借りて懸命に歌った。デヴィッド・ラフィンは68年テンプスを脱退したばかり。グラディス・ナイト&ザ・ピップスは最初のヒットを放ったところ。エドウィン・ホーキンス・シンガーズ「オー・ハッピー・デイ」は正に69年のヒット曲。フィフス・ディメンション「アクエリアス」も69年発。彼らはミュージカル曲を取り上げた事で、白人だと思われていたと。それが悔しかったとの事だが、映画でのステージを観る限りソウルフルだ。因みに「アクエリアス」は私が小学生の頃だったか、洋楽の魅力に引き込んでくれた一曲である。


とにもかくにも、このフェスティバルの存在自体が知られる事がなく、40時間ものフィルムが眠り続けた事に茫然自失となる。と同時に復活させてくれた事にひたすら感謝である。

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