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読了のおっさん4 パイナップルARMY(原作:工藤かずや 作画:浦沢直樹/ビッグコミックオリジナル)

今日も、おっさんが全巻読んで面白かった漫画をご紹介です。
個人の感想であり、感じ方はそれぞれなれどご参考に。
概要的なネタバレは含みます。

パイナップルARMY
(原作:工藤かずや 作画:浦沢直樹/ビッグコミックオリジナル)
1985年〜1988年 全8巻 完結

① タイプやテーマなど
 現代劇、青年漫画、ミリタリー、アメリカ、ヨーロッパ、兵器、東西冷戦
 70〜80年代、戦争、テロ、軍事教官、暴力、チームワーク

② 簡単な内容
 東西冷戦で世界が軍事的に緊張状態にある時代の物語。主人公は70年代に数々の戦場を傭兵として経験しており、その経歴を生かして戦闘インストラクターとして生計を立てている。依頼は、戦闘の素人に訓練をつけたり、探偵やボディガードを引き受けたりと、戦いのプロとして様々な事件や危機に立ち向かう。
 概ね、主人公と依頼人+その関係者との物語が1話完結で展開するが、傭兵時代の戦友など、全話通じて共通する人物や物語の変化・進展もある。
 

③ 読みどころ
 全編に渡り、ミリタリー関連の知識や世界観を含んでいるが、しばしば現代社会の抱える人間同士の問題(会社経営から裏町の生々しい現状まで)との絡みがあり、結末と同時に共感や考察を誘う。
 傭兵時代の仲間達は、物語の比較的早い段階で集結・顔見せがあるが、将帥(老人)からスナイパー(女性)まで、各々の立ち位置や個性が渋滞することなく、のっけから今後彼らがどう関わってどう活躍して行くのか、毎話気になって読んでしまう。ちなみに主人公は教官として、小集団の訓練や指揮に長けている他、爆発物の専門家でもある。
 東西冷戦という、きな臭い時代の軍事の話なので、その当時の時代背景を大いに含んだ内容となっている。現代史に大きな影を落とした時代でもあるので、約50年経た現在にあっても、本作は世界そのものに関心を持つキッカケになり得る作品と思う。
 少々頭に入れるのが難しい内容もあるが、話数自体は多くの完結漫画作品と比べると少なめなので、しっかりゆっくり読んでいけば問題ない。

④  雑多な感想
 作者の工藤かずや先生は「ゴルゴ13」などの原作も手がけている。本作も大いに影響を受けて(というか本家作風というか)いて、1話完結の展開や、映画的なカットを駆使しつつ、現代劇としての情報発信、問題提起的役目を果たしている。
 作画を担当された浦沢直樹先生も、絵だけではなく本編の構成その他に関わっていて、後のマスターキートンなどの名作を数多く描かれている。また、おっさん個人的にはミリタリー漫画と言ったら浦沢直樹先生の名前が真っ先に上がる程印象深い。ミリタリーを描く際の絵としても浦沢直樹作画はマイルドであり、非常に好感を持っている。
 内容面では、軍事訓練、兵器やメカ類、世界情勢と各話における舞台の描写などで一々興味をそそられる。マスターキートンが行けるのであれば、ミリタリー寄りとはいえ、受け入れられる人は多いと思う。関連作品と考えても全然違和感がないくらいだ。

⑤ その他
 案外コンピューター関連の話も出てくる。現在のインターネット社会での情報戦ではなく、フロッピーと暗号といった類のものになる。そんなものは見たことがないという人も最近は増えてきたが、学生〜社会人現役時代にこれらのテクノロジーを使って実際に仕事をしたことがある人には懐かしさやワクワク感もあるだろう。
 主人公が爆発物の専門家でもあり、こちらの話題も多い。おっさんも個人的に爆発物関連の資格をいくつか取得したり、電気関係の勉強も長いことしているので、興味が湧く内容であった。また、核兵器や核の研究者も登場し、作中で核爆弾などの説明も入ってくるなど、テクノロジー面での読み応えや面白さも十分ある。
 パイナップルARMYとはそもそも、手榴弾のことである。物語中でも沢山使われるが、タイトルは主人公のことでもあり、爆弾といえばテロや、放置された問題といった概念を彷彿とさせるところもある。なんとも言えず印象に残る作品である。
 

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