窓際のおっさん4 果実の取り尽くされた成果主義

会社にいると色々ある。どうにもならない事ばかりで、禄を食むためだけにひたすら受け流して暮らしている。時には反撃してみたり、動き回って相手を撃ち落とすこともあるけれど、会社全体としては何らプラスがない。それでも一筆積み上げれば、誰かの一遇は照らせるかもしれない。そんな想いで今日も筆を取る。

職場によると思うが、年末に差し掛かると、人事評価が決定する。
能力評価、業績評価などに分かれており、
能力を「どのように活かして会社に貢献したか」
業績を「どの程度上げて会社に貢献したか」

これらを可能な限り数値で「定量化」して評定が決定されることになる。
実に合理的で、一見すると、働いた分だけ給与や出世に反映されるシステムであるように見えるのだが、とっくの昔に機能しなくなったシステムであるとおっさんは考える。むしろ現在では弊害の方がお多いようにも思う。
今日はその弊害の実例部分ばかりをあえて挙げて、今後の検討をしてみたい。

<能力評価の実態>

1.恣意的な匙加減
意欲〜指導力まで、それらしい評価項目があるが、数値化は難しいことも多く、結局は上司の匙加減で決まる。例えば、
① 不可抗力や上司の無茶な指示でも、ミスはミス扱い
② 安全や法律を守っても、上司の命令を拒否すれば指導力や決断力不足
③ 不必要な仕事をオミットすると、意欲が低い
このような評価が案外横行しているところがある。

2.資格は評価しない
個人の能力を数値化するのに「資格取得」は公平で便利だ。ところが資格は「資格手当」で別枠とし、能力評価と無関係のケースが多く見られる。
手当が公認された資格以外は「どう仕事に活かしたか」などと詰め寄り、なんとしても評価したがらない上司もいる。
関連知識を補ったり、新しい発想を得る目的の資格は評価して欲しいのだが、公認されていなければ、必置資格すら評価しない上司も存在する。

3.与えられた仕事にもよる
一人でもできるルーティーンを任された場合、能力を発揮することもなく、小さなミスを指摘されていきなり低い評価をつけられることもある。
逆に忙しくて発想力や人間関係調整能力を問われるものであっても、目に見えづらい人材育成や維持管理、システム開発などを担当すると「どう会社に貢献したのか」などと詰め寄られて大して評価されないこともある。

<業績評価の実態>

1.何をいつまでにどれくらい
数値目標を決めるのは容易ではない。上司は自分の欲望のために高い目標を要求し、部下はその逆になりがち。本当は本人に期待されたやや上ぐらいが良いのだが、そこを決めるためにお互いのことや仕事の全容を知る時間が足らない。

2.新しいことなんてそうはない
改善や新事業は業績評価の目標に選ばれやすいが、例えば数十年営業してきた工場に改善の余地は少ない。また、新事業は1年でできることが限られているので、中途半端になりやすく避けられがち。結果どうなるかというと、
 ① 何年か前に廃止したシステムを焼き直して業績を誇る
 ② 昔から付き合いのある、あまり意味のない外部学会や同業研修会などの
   幹事を引き受けるなどする一方、本業を部下に投げて業績だけ誇る
こういう本末転倒な蛮行が横行する。

3.減点方式になりがちで調整も多い
「目標=会社との約束」のごとく扱われるケースが案外多い。故にうまくいけば当たり前、間違ったら即低評価という、生殺与奪を握られた状態にされるため、業績目標の設定と評価時期は本当に憂鬱になる人が多い。
また、頑張っても横並びを意識され、最終的に業績評価のウエイトを下げるなどして、成績に反映させない上司もいる。なんやかんや理屈をつけた調整が多い。

<斜陽の時代、今更果実なんて残っていない>

日本では、成果主義のまま30年近く走り続けてきたので、人事目標レベルの、小改善可能なところや、低リスク短期間で新規開拓できる場所はもうない
加えて経済発展も頭打ちで、国全体として下り坂、年功序列の横並び意識も強い。
故に簡単に高評価をつけることもできず、上記のようになんとかして部下の成績を下げ、上司は保身に走る
正に手詰まりの荒野で、果実は全て取り尽くされているように思う。

<今後の人事評価はどうすれば>

仕組みが変わればそれに合わせて対処することになるが、変わらない前提で話をすると、防衛戦に特化して行くことが生存戦略ではないだろうか。
例えば、どうすれば評価Aで、何をやらかしたらCなのか、具体的に評価者である上司に尋ねて書面提出させること。
その中で、資格などを明確に評価するように訴えかけること。
成果を業績とするのではなく、当たり前を当たり前に維持することを業績とするように目標設定させること。

どこまでやりたいかにもよるが、同僚や部下後輩とも結託して、このように、なるべくみんなが幸せになるような評価を枠組みの中で醸成させるしかないだろう。

こう言うと、進歩がないとか、儲けにつながらないと言われることがあるが、そう言った前向きな話は、これからの時代は本業の外に求めた方が、恐らくはやり甲斐も成果も出せるように思う。
会社を辞めるなら別だが、多くの人はそうはいかないだろうから、会社の中においては果実を得ることよりも、樹木を維持管理することこそが正しいと再定義して行くしかないだろう。



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