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不登校の加藤くん 【前編】

もうすぐ一学年が終わり人によっては進学で今までの友達と離れ離れになる人もいると思います。

先日、テレビで不登校の経験がある子供を支援する活動が放送されていて、ふと学生時代の同級生の事を思い出しました。

小学校時代に転校してきた加藤くん(仮名)が今33歳になってどうなったのか。

不登校児の半生について書こうと思います。


加藤くんとの出会い

小学校5年生の時に加藤くんは僕の学校に転校してきました。

といっても、僕は実際には加藤くんに会ったことがありません。

加藤くんは転校前の学校で馴染めず、いじめに遭っていたそうで環境を変えるために転校してきました。

ですが籍としては僕と同じ小学校でしたが、一度も登校することはなく卒業を迎えます。

当時、一応同じクラスで家も近いということで連絡帳や夏休みの宿題などを持っていく役割を任されていました。

家に行くとお母さんが対応してくれて

「いつもありがとう」と優しくお礼を言ってくれる関係でした。

学校では「いじめについて」という課題で加藤くんをどうやったら学校に来れるようになるかという話し合いが何度もおこなわれました。

実際僕も以前少し書きましたがこの学校でいじめに近い嫌がらせを受けたこともありなかなかいじめと向き合うことは難しかったのですが

加藤くんの件の話し合いで一番むずかしいのは

学校にいる全員が加藤くんの事を知らないのです。

もちろん顔も、性格も前の学校で何があったのかも。

先生は立場上、加藤くんに学校に来てもらえるように努力していましたし

教育者としてとてもいい先生だったので、みんなと一緒に学ぶ機会を加藤くんにも経験してほしかったのだと思います。

みんなで話し合い小学生が考えるのは各々お手紙を書こうという案でした。

本当にどこの学校でも行き着く悪手だと僕は思っています。

僕も書くことになったからにはどうにか加藤くんが学校に来やすいようにと子供ながらに文章を考えたのを覚えていますが

一度も会ったことのない人への手紙がこんなにも感情がこもらないものなのかとも思いました。

結局、小学校には一度も来ること無く卒業を迎えました。

僕は、2年間で100回は加藤くんの家に届け物をしましたが、会うことも声すらも聞かずに終わりました。

卒業式の日、先生は僕達に泣きながらごめんなさいと言いました。

「君たちは本当に色々と頑張ってくれた。私は教師として加藤くんになんとか学校に来てみんなと勉強してもらいたかった。みんなもいつ加藤くんが来てもいいように環境を整えてくれていた。でも私の力不足で加藤くんは来れなかった。」と

僕達はほとんどが地元の中学校に進学するので、また加藤くんと同じ中学にいきます。

先生には、中学で加藤くんが来れるようになったら今まで先生が尽くしたように加藤くんを迎えるよと約束しました。

予期せぬ事態

僕の中学校は、地元の2つの小学校から進学することになっています。

なので半分はいつものメンバー半分は、はじめましてのメンバーです。

新たな出会いに胸を膨らませながら入学式を終え、なんとかもう一つの小学校出身の人とも仲良くなって初日が終わりました。

初日には、クラス委員を決めたり係を決めたり自己紹介といったどこの学校も同じようなことだったと思います。

次の日、学校に行くと僕を含め10人ほどが職員室に呼ばれました。

理由は加藤くんのことについてでした。

正直僕達も新生活のスタートで自分のことで精一杯だった点、そしてひどいのかも知れませんがどうせ加藤くんは来ないだろうと思っていました。

ですがここで予期せぬ出来事が起こったのです。

昨日の学校初日、加藤くんは意を決して学校に来ていたのです。

僕とは違うクラスだったのですが、入学式と自己紹介など1日は学校で過ごしました。

ですが二日目にはまた来れなくなったというのです。

事情を確認してみると初日のクラス委員決めの際、学級委員長の立候補がなく推薦で決めることになったそうで

偶然か必然か加藤くんが選ばれてしまいました。

ここで予期せぬこととは何だったのか。

まず①初日に加藤くんが頑張って来たこと

そして、②加藤という名字が3人いたこと

最後に③誰も不登校だった加藤くんの顔を知らなかったこと

丁度不登校だった加藤くんのクラスに伊藤さんと言う優等生がいました。

学級代表は男女一人づつなので、名前のニュアンスだけで

加藤と伊藤でええやん。と言うノリで推薦されてしまったようです。

そもそも僕達とは別の小学校出身者は加藤くんが不登校だったことは知らなかったと思います。

そして、僕達の小学校の人間の誰もが2年間みんなで頑張ったが来なかった加藤くんが初日に来るとは思っていなかったこと

そして、顔を知らなかったので自分のクラスの加藤くんが不登校の加藤くんなのかどうかがわかりませんでした。

そしてそのまま場の空気感で加藤くんが学級委員になり

プレッシャーに耐えかねて次の日からまた来なくなったというわけです。

中学時代の加藤くん

この事件以降結局一度も学校には来ませんでした。

僕は小学校の時以上に、配布物を届ける事が多くなり

お母さんとは外で会っても立ち話をするくらいの関係になっていました。

加藤くんは家で学校と同じ時間配分で勉強をして

通信教育のような問題集にも取り組んでいると

ただ、もうどうやって学校に行けばいいのかわからない

加藤くんにとって中学校進学が自分なりに区切りとして勇気を出せるタイミングだったのは確かで

ただ、また次の日に逃げてしまったのでどうしていいかわからないまま時間が過ぎてしまったと。

そして勉強はというと加藤くんはとても成績が良かったです。

正確にはテストの点数が学年でも10位以内でした。

ただ、加藤くんはいつも自宅でテストを受けていました。

僕はよくお母さんから話を聞いていたのと、お母さんがとても真剣に加藤くんの勉強に向き合っているのを知っていたのですが

それをみんなは知らないので

「絶対カンニングしてるやん。俺も家で受けたいわー」

「不登校の成績はランキング出さんでいいやろ」

「頭良くても内申点ないから意味ないやん」

言いたい放題でした。

でもそれも仕方ないと僕も思っていました。

僕達の誰かがいじめたわけでも原因があるわけでもない不登校の加藤くんを先生たちが褒めている事にとても違和感があったのです。



前編として

一気に書いていたのですが、そもそも加藤くんの存在を説明しようと書き出したもののかなり長くなりそうだったので2分割することにしました。

僕の家から30秒ほどのマンションに加藤くんは住んでいて
届け物をすることは全く苦にはならなかったのですが、本当に一度も加藤くんが出てくることはなく全てお母さんが対応していました。

途中、本当に加藤くんは存在しているのか?と思ったこともありました。

親としても子供がいじめに遭い、考えた末に転校という選択をしたのだと思うのですがそれでも1日だけしか学校に登校できなかった加藤くん。

貴重な子供時代をコミュニティに属さず成長した加藤くんが今後どうなるのか。

不登校で悩んでる人やその親御さん、また教育関係者の方々。

ある実話の一例として事の顛末を知ってもらえたらと思います。

高校入学から今にいたる後編をおたのしみに。





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