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読書感想文〜月と6ペンス〜

私の人生のベスト5に入った小説
モームの天才ぶりが
これでもかと詰め込まれた作品
今日の感想文です

サマセット・モーム 「月と6ペンス」

<あらすじ>

ある夕食買いで出会った、冴えない男ストリックランド。ロンドンで、仕事、家庭と何不自由ない暮らしを送っていた彼がある日、忽然と行方をくらませたという。パリで再会した彼の口から真相を聞いたとき、私は耳を疑った。四十をすぎた男が、すべてを捨てて挑んだこととはー。ある天才画家の情熱の生涯を描き、正気と狂気が混在する人間の本質に迫る、歴史的大ベストセラーの新訳。

<感想>

素晴らしい!!!!以上!
で終わりたいほど
素晴らしい作品なのだ

1919年の作品
ちょうど100年と1年
100年前の作品が
現代小説と全く遜色なく読める
むしろその情景は色鮮やかに感じるぐらいだ

現代小説が100年読まれる作品には
敵わない
もう全くの別ジャンルと捉えて
小説を書いていくしかない

この小説のモデルの画家は
ポール・ゴーギャンである
こういう所も好きなのだ
モデルはいるんだけども
名前も変えて
ちゃんとフィクションに作り上げるのが
小説ではなかろうかと思うのです

最近、本当に多い
実在している歴史上の人物を
そのままの名前で
史実を脚色した小説を読むと
偉人の伝記読んでる感覚に陥るのが
私は嫌なのだ
それなら伝記を読めば良い
やはり小説と銘打つならば
人間の心のオリみたいな部分を
取り出して煮込むみたいな創作がほしい
完全にいち読書家としての意見なので
ならお前がそんなん書けるのかよ!
はナシでおなしゃす
こんな作品かけたら死ぬな
麻雀で九蓮宝燈(めっちゃすごい役)を出した人が
交通事故で死ぬと言われているのと
同じだろうな

この作品ももちろんだけれど
良い作品であると感じるのは
人物の心理描写の表現が正しい点というか
正確に的を射ている所な気がする
例えば男性作家が女性を描いても
違和感ない女性像だったり
もちろんまたその逆も然り

どんだけ人間観察して
人間を知るところなんだろうな
小説の特色というか
他のクリエイト作品との差異は
人物の心理描写がえぐい所だ

もうこの作品読むと
いろんな思いが溢れてきて
読んだ後は
素晴らしい!っていう感動と同時に
絶望感が入り混じる
(絶望するのは私が小説家を目指しているからなので
一般の読書家さんたちには感動しかない作品かと思います)

文庫本に折り目つけすぎて
本が閉じなくなっている
私の好きな文章を
ここにひとつ紹介したい

他人のことなど気にしないといくらうそぶいても、たいていの人間は本心からそう思ってはいない。彼らが好き勝手に振る舞うのは、自分の奇行はだれも知られていないと安心しているからだ。また多数派に背を向けるのは仲間に支持されているからにすぎない。どれだけ世間の型からはずれても、内輪の型にはまっていれば安心できるし、そのぶん大きな自尊心を得られる。危険を冒すことなく、自分は勇敢なのだと自己満足に浸ることができる。だが、世間に認められたいという欲望は、おそらく、文明人にもっとも深く根ざした本能だ。型破りを自認する女にかぎって、厳しい世間の目の批判にさらされたとたん、世間体という名の隠れ家に駆けこむ。人の意見などどうでもいいと公言する人間を、わたしは信用しない。それは無知ゆえの強がりだ。

これは主人公の言葉だが
私はモーム自身の考えだろうなと思っている
100年前のヨーロッパで書かれたこの文章が
今の私たちに当てはまるのが
もう人間ってなんだろうなのだ
国も時代も変われど
心理は変わらないという真理

ため息でるほど
素晴らしい作品です
この作品が100年前に
べストセラーとなった世の中も素晴らしい

ちなみにこの素敵なタイトルですが
作中には「月」も「6ペンス」も出て来ません
「月」は芸術への情熱
「6ペンス」は世俗的なものを象徴している
という事だそうです
こんな所のセンスも好きだーーーー!!!





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