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読書感想文【小説8050】林真理子

このままでは、我が子を手にかけ、自分も死ぬしかない。
都内で父から受け継いだ歯科医院を営む大澤正樹。美しく従順な妻と優秀な娘にめぐまれ、完璧な人生を送っているように見えるが、決して家族以外に知られたくない秘密があった。有名中学校に合格し、医師になることを目指していたはずの長男の翔太が、7年間も自宅に引きこもったままなのだ。「弟のせいで結婚ができない」相手家族に結婚を反対された娘の悲痛な叫びに、正樹はついに息子と向き合う決意をするが。

まずこの作品の素晴らしい点は
なんといってもタイトルである
「小説8050」
タイトルだけであらすじが
想像できる小説というのは
ありそうでなかなかない
日本人だけがピンとくるワードであり
社会問題である造語をノンフィクションのようにタイトルにしているが
ど頭に「小説」とつけることで
フィクションである事を表現している
昨今のタイトルにこだわりすぎる感じの
流行りから
(これはバンド名にも言える)
逆にわかりやすく斬新と感じた

現代特有の家庭内問題をテーマにする
社会派小説

この作品はこのままでは
8050問題家庭になってしまう
手前の家族の話なので
リアルな8050家族の物語ではない

家庭によって理由や状況も様々
ひとくくりに「8050問題」と言えども
その詳細はひとつも同じ家庭はないだろう
なので問題家庭が100あれば解決策も100通り
当事者家族にとってどの方法が正解だなんてない
家族は全ての可能性を選択し
問題と向き合っていくしかない

お手本の地図もないのに
プロセスは何百とあり
その選択で正しい方向に向かわねばならない
難解な脱出ゲームとするならば
時間も根気もかなり必要になる

途中には失敗の選択もあるし
色々なことが起こるけど
やはり「やるしかない」という事がわかった

「何もしない」という選択も
もちろん愛情や気遣いなんだけれども
やはり問題解決には至らず
正解の選択ではないんだと思った

知り合いにも引きこもりの子供を
抱えている家庭がある
家が裕福なだけに
やはり選択は「何もしない」であるが
このままでは親が死んだらどうなるのか
考えないようにしているだけなのかもしれない
当事者は本当に大変だと思う
外部の助けももちろん必要なんだけど
家族みんなで向き合うところが核となっている
しかしこれも全ての家族に当てはまるのかわからない
ただ、絶望のさなかにいる家族にとったら
希望が持てる物語となっているのが良い
希望がなければ頑張れない
この小説がそういう家族の誰かの心に
寄り添うものであるといいなと思った

素晴らしい小説でした

余談だが
私は過去に1度だけ林真理子先生にお会いしたことがある
林先生は東日本大震災のチャリティーイベントを毎年開催されていて
そこで集めた募金を全額寄付する
という素晴らしい活動をしている
都内の外資系ホテルでのパーティーに
私は急遽、岩井志麻子先生の代打として
参加したのだが
林真理子先生を目の前に
固まって突っ立っている事しかできなかった
そしたらまさかの林先生から
「あら、綺麗な子ね、どちらのお嬢さん?」と
めちゃくちゃ嬉しいお言葉をかけてもらったのだ

岩井志麻子先生の代打だったので
パーティーの食事の席では
ほろ酔いの高齢男性に
「いつもテレビで見ています、テレビで見るよりお綺麗ですね」と
まさかのご本人に間違われるという場面もあり
「ほんとですか?」とも
「そんなことないですよ」とも言えない
超絶気まづい瞬間もあった
岩井先生とは15歳も歳が離れているので
岩井先生にもなりきることもできず
曖昧な笑みで過ごしてしまったことを
反省している

そんな林先生の新作
かなりおすすめです




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