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完璧じゃ無い、だから面白い。


主人公がいて、ヒロインがいて、当て馬的存在がいる。
よくある少女漫画の筈なのに、何故この作品は
新鮮味があって面白いのだろう。


以前少女漫画について記事を書いたことがある。
本当はその時ついでに語ろうかと思ったのだが、
ついでにするには勿体ない程良い作品ということもあり、
少し熟成させ再度読み直すことにした。
今回は菅田将暉主演で映画化もした、
『となりの怪物くん』について、焦点を当てて語ろうかと思う。

※微弱ながらネタバレっぽい文章もあります。
敏感な方はお気を付けくださいませ。

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余談だがこの作品、昔の恋人と遠距離恋愛最中に見に行った、
思い出深い作品でもある。
奇しくも映画を見た帰り道、その人に『これは原作も面白い』と熱く語られたことをきっかけに、
全巻揃える程のお気に入り作品にもなってしまったのだった。

だがそんな思い出など一蹴する程、この作品が好きだ。
何故ここまで私を虜にするか熟考してみたが、
一番は、作品に溢れる『人間らしさ』がそうさせるのでは無いだろうか。

まず主人公ハルが完璧でないところが良い。
恐らく彼がただのイケメンだったら、私は1巻を読んでそのままそっと
漫画を閉じていたことだろう。
彼は自分自身にコンプレックスを抱えていて、
最終話に近づくにつれだんだんと人格がプラスされていく。
外見だけでなくて、内面も良い男に「仕上がっていく」のがとても良い。

ハルだけではない。
登場人物はそれぞれにコンプレックスを抱えていて、
『成長』していくのが見どころである。
それも恋愛面ではなく、人間として。

ヒロインの雫だって、『何故かモテるタイプの天然系ヒロイン』では無くて、
自分の力で切り開いていくから読者は応援するのである。
最近は顔が可愛い訳では無いけど付き合う、という近しい部類の漫画はあるが、
どちらにせよ生じやすいのは『何故か好かれて付き合う』という展開だ。
雫は違う。
交際に発展するまでの道のりは長く、葛藤と成長の元に愛を手に入れようと努力する。
理由無く付き合えたと、誰が言えるだろうか。
ヒロインと自分を置き換えて読むのでは無くて、
俗に言う神視点(俯瞰)でヒロインを応援出来るといった点では、
既に恋愛漫画という枠を超えているとも思える。
少年漫画だったり、他ジャンルの良作でも共通する点だろう。
(因みにハチミツとクローバーもこれに近い感情を持つ)

それから主人公とヒロイン以外の関係性を蔑ろにしないところも
私の大好きな点である。
友人は愚か周りのサブキャラクターまで、抜かりなく描かれている。
またまた余談だが、個人的に一番好きなキャラクターはヤマケンである。
私は決して当て馬フェチでは無いのだが、報われないと思いながらも応援してしまうのだから、作者の巧妙な表現なのだろう。

最後に、この漫画の中に悪役と名のつく登場人物が居ないことはお気づきだろうか?
一見悪役らしき登場人物は出てくるが、
その人たちは皆、自分自身の正義を持っていたり、
悪役として登場したとしても、気づけば仲間になっている。
ネチネチとしていないから、最後まで気分良く読むことが出来る。
この点も恋愛映画の枠から良い意味で外れているかもしれない。
これって結構重要だ。

恋愛漫画で括るには勿体無い程良い作品。
性別問わず、是非読んで見て欲しい所存である。







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