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ひげ

父が退院して2週間。敏腕ケアマネジャーFさんのおかげで、あっという間に万全の体制が整った。あとはサポートしてくれる人たち(訪問看護師さん、往診の医師、ヘルパーさん、訪問入浴の業者さん、介護器具の業者さんなどなど)に助けてもらいながら、なんとか父を生かしていく。

最初の1週間はとにかくぐったり疲れた。ハイになった母は、動きっぱなしにしゃべりっぱなしで、寝たきりの父より上手につきあうのが難しかった。そんな母もようやく落ち着き、わたしたちも泊まり込みはなくなり、今がいちばん静かなひととき。

3連休は3姉妹で仲良く順番に介護した。初日の父はよく食べ、水分も摂り、家族思いの優秀な寝たきり老人だった。しかし私が担当した2日目は、よく眠り、よく眠り、よく眠り…ときどき生存確認してしまうほどよく眠っていた。水分も栄養も思うように摂ってもらえず、いよいよだめか、と思うほど。けれど3日目、再びよいペースに戻る。こんな感じで良い日とそうでない日を繰り返し、だんだん弱っていくのだろう。

父のヒゲが伸びていた。シェーバーでじょりじょり剃ってみる。堅い。

眉毛も髪も、黒と白が混ざったまま、少しずつのびている。

どんなに死を目前にしていたとしても、人は死を迎えるその瞬間まで、たしかに生き続けている。

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