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人に振り回されないためには

 久しぶりに山に登った。
 そして8月の山は危険だと再認識した。
 暑さが尋常ではなかったのだ。

 去年熱中症になったのは八月に三日連続登った直後だった。しかもその前には毎週登ってた。よくこんな湿気と暑さの中そんなに何度も登ったなと、自分の元気さに驚く。

 たった一年でそう思うようになってしまった。死にかけると人は急激に大人になる。老け込んだとは思いたくない。状況判断を冷静にできるようになって大人な行動に変わったのだと思いたい。

 なんてことを思いながらちんたら登っていたら、前に立ち止まってスマホを覗いている人がいた。後ろから人が来たと気付くと慌ててスマホをしまい歩き出した。手をブンブン振って大股で歩く姿は、ムリして急いでいるように見えた。でも微妙な速度だった。

 私には抜かすのはムリな速さだけど、でもそんなに速くないから私との距離は縮まらない。まるで私が追い立てているような感じだった。まだコースの半分。このままこの状態が続くのだろうか。なんだか生き苦しい。この漢字でもいいけど、こっちの「息苦しい」かな。

 湿気が70%を超えてそうに暑くて、息も苦しかった。前の人を追い立てているようで心も苦しかった。なんて言うといい人みたいだけど、要は邪魔だった。

 私は後ろから人が来たら、立ち止まって先に行ってもらう。その方が気兼ねなく登りやすいから。

 それでコースを離れた。ちょうど分岐してコースとは別に道があった。上級者の人たちが登るショートカットの道だと思った。

 ところが、その道はしばらく登るとなくなってしまった。

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