奇経八脈(任脈、督脈、衝脈...)について。経絡と気功、瞑想
この瞑想する人noteでは、内丹(仙道)など気功にも触れていて、その関係で経絡という言葉が登場してきます。
今回は主に気功との関わりの深い範囲で、経絡についてのかなり初歩的な知識です。
この記事の要点は、「経絡には正経と奇経があって、内丹などマニアックな気功(瞑想)では任脈や督脈といった奇経が重視されますよ」ということです。
関連note:内丹(仙道)の 小周天。高藤聡一郎 氏の仙道など
経絡(正経と奇経)
中国伝統医学や気功では「気」の通り道とされる経絡が重視されます。
経絡は、ツボ(経穴)と臓腑を循環して走る十二正経と、少し謎めいたところのある奇経八脈に大きくは区別されます。
正経は心、肺、胃、肝、腎、大腸、、、など内臓、臓腑と関係が深いとされて、対応する経絡があります。
太陰肺経、太陽小腸経、少陰腎経、、、など。
十二正経はツボ(経穴)と臓腑、目や耳などの器官を流れ、さらに、肺経→大腸経→胃経→脾経→心経→小腸経→膀胱経→腎経→心包経→三焦経→胆経→肝経→肺経→、、、といったように循環して巡っています。
針灸指圧やマッサージ、気功、体操などで、経穴を刺激し経絡の気の流れを整え健康になろうという考えがあります。
ちなみに中国伝統医学(中医学)が日本へ渡り独自に発展したのが漢方医学とされます。
これら伝統医学における「臓腑」は、西洋医学の知見における内臓器官をそのまま指しているとは必ずしも言えないようです。しかし通じるものも多いようです。
例えば中医で「腎」という場合、必ずしも腎臓をそのまま意味するわけではないことがあります。
「腎」という言葉は文脈によっては、成育・成長する力、生命力、精、生殖能力、水分代謝、、、などの意味を持って用いられることがあります。
この「腎」に関しては、西洋医学の見解と通じるものがあるとは思います。
他には「肝陽上亢」「肝火犯肺」「心火上炎」、、、といった言葉があり、これらには「心」「肺」「脾」「肝」「胆」「腎」、、、などが用いられますが、実際に西洋医学の知見における、それらの内臓やその機能を指しているとは限らないです。
また「心包」「三焦」といったものがあり、対応する経絡もあります。厥陰心包経、少陽三焦経。
この心包や三焦は何を指すのかについては諸説あります。「実体としてあるわけでない」とされることもあります。
この経絡や経穴がどのように発見されたかについては、いろんな意見があります。
昔の気功、瞑想の修行者が「気」の活動を実際に体験して発見されたという面白い説もあります。
他にも面白い説があります。
中国大陸の一部地域には「経絡敏感人」といって、生まれつきの能力として、経絡、経穴、「気」の流れを自分の身体で敏感に感知できる人が存在してきたと言われてます。
こういった経絡敏感人によって発見されてきたという説です。
奇経八脈(主に任督衝脈)
奇経には八つの脈があります。
任脈、督脈、衝脈、 帯脈、 陽蹻脈、陰蹻脈、陽維脈、陰維脈です。
任脈、督脈、衝脈は「一源三岐」といって、下腹部内の一つの源である「胞中」より起こる、とされます。
胞中とは何かについては諸説ありますが、とりあえずは任脈、督脈、衝脈は何かといろいろ重視される下丹田から発生するということです。
中国伝統医学の経絡論では奇経の役割は、正経の「気」の流れの調整などと説明されることが多いようです。
任脈と督脈に関しては針灸でも注目されることがありますが、奇経は謎めいたところも多いとされます。
針灸など伝統医では、奇経については様々な見解、議論があるようです。
内丹(仙道)などで頻繁に言及され重視されるのは任脈と督脈です。
衝脈にも言及されることがあります。帯脈も少々。
大ざっぱに言うと任脈、督脈、衝脈は「生命力」「元気」「性・生殖」「精力」といったものと深く関わると言えます。
・任脈
任脈は身体の前面の真ん中を流れます。
「任脈は陰脈を承任し陰脈の海」と言われています。
経絡には陰と陽がありますが、陰脈を調節する、と言われ「一身の陰経を総任する」とされます。
「任は胞胎をつかさどる」とも言われます。
ここで「胞胎」が意味するのは、女性特有の周期的な変化、妊娠、胎児の生育などのことです。
・督脈
督脈は背部、身体の後ろの真ん中を流れます。
「督脈は陽脈を総督し陽脈の海」と言われています。
陽脈を調節し「一身の陽経を総督する」とされます
「腎」「髄」「髄海(脳ミソ)」「生殖器官・機能」と関わりが深いとされます。
督脈が、ヨガにあるクンダリーニの通り道の「スシュムナナディ(中央気道)」だと考える人もいるようです。
・衝脈
任脈、督脈と同様に下丹田(胞中)に始まります。そして腹胸部からノド、顔へと流れる経路、脚部へと下降する経路、背骨を上行する経路の3つの流れがあるとされます。
このように頭部から脚部まで走り、十二正経を調節することができるので、「経脈の海」「十二経の海」と言われます。
また女性特有の周期的な変化とも関わりが深いとされていて、「血海」とも言われています。
督脈と同様に、衝脈の背骨を通る経路が、クンダリニーの通り道スシュムナに該当すると考える人がいるようです。
気功と経絡
気功では「気」の通り道である経絡は理論的にも重視されます。
経絡の考え方をもとに気功の動作が組み立てられていることも多いです。
関連note:ヨガ、気功、呼吸法について。瞑想との関係
実践では経絡や経穴(ツボ)を明確に意識するかどうかについては、様々な方法があります。
あまり意識しない(意念や意守を用いない)気功もあります。
奇経を重視するかどうかについても違いがあります。
一般的な健康気功では、奇経はそれほど重視されないことが多いです。
五臓六腑や目や耳など諸器官・機能と結びつく十二正経と経穴(ツボ)の方が奇経より重視されます。
「十二正経や経穴を整え、気血の流れを良くし、内臓機能を養い、目や耳や脳の機能を保ち、健康でいましょう」というわけです。
この場合は流派によっては、上級段階の功法で奇経が重視されることもあります。
一方で内丹(仙道)など気功の中ではマニアックな実践では、奇経は重視されます。
奇経は述べたように「生命力」に関係していて、内丹などの実践は、自らの持って生まれた生命力、元気、潜在する力に向き合うといった要素があります。
このような奥深い実践では、動作のともなった気功(動功)よりも、動きの無い気功(静功、内功)つまり瞑想が重視されることが多いです。
立って行う瞑想としては站椿功がなされることがあります。
関連note:站樁功(タントウ功、立禅)について
内丹と奇経
内丹(仙道)では特に任脈と督脈は初級段階である小周天で重視されます。
、、、のようなことが言われてきて重要視されてきました。
中国の伝統的な医学、針灸、経絡理論の正当な考えに合致するのかどうか分かりませんが、内丹では実践によって奇経が活性化すると説明されます。
母親の胎の中にあって、ヘソの緒を通して栄養補給され成長しているときは、任脈と督脈は活性化していて通じているとされます。
しかし、生まれてきて、ヘソの緒が切られて、鼻口で呼吸し、飲食物で栄養を摂取するようになると徐々に任督は弱まっていき、それとは反対に「気」は十二正経に多く流れるようになるとされます。
そして身体が成長し、大脳が発達して思惟分別の能力が備わり、特に生殖器官・能力、性徴が成熟する頃(10代後半)には、完全に「気」の流れは正経優位になり、任脈と督脈の流れは弱まった状態になるとされます。
この状態は「後天(の精・気・神)」が優位の状態と表現されることもあります。
そして徐々に「気」を消耗していき、老病死につながるとされます。
内丹(仙道)では、気功の実践でこの流れを逆流させるとします。
「後天を先天に返す」「順は人を生み、逆は仙になる(丹を成す)」などと説明されます。
これは老病死につながる流れを逆流させて、根源的な元気を養い仙人になるとか、体内に丹(霊妙なる薬)を作りだすといった表現です。
後天が優位の状態で気が主に十二正経に流れ消耗していく状態から、任督二脈を通して活性化し、先天の元気を養うという意味です。
内丹の実践によって内気が充実してくると、「胎息」「亀息」「真息」といった高度な呼吸の状態があらわれると言われることもあります。
最後にちょっと小話
内丹・仙道で健康面などに関して「ホントかよ!?」と思うような奇跡みたいな話はいろいろと聞いたことはあるにはあります。
とくに大周天より進んだ段階や、「大薬」という気の塊のようなものに関する段階などで、いろいろと奇跡みたいな話があるというのは聞いたことがあるにはあります(大周天や大薬とは何かについては、いろんな人がいろんなことを言っているのですが、、)。
しかし伝え聞いたものばかりで、私自身が直接確認したわけではなく、どれも不確かな情報です。
とくに高藤聡一郎氏の仙道本を読んだ人の中には、過大な幻想を抱く人もいるのではないかと思います。
実際には高い境地に至った人であれ、みんな病気になり、老いていき、亡くなるのが現実なわけです。
・【仙道・気功】リンク集