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内丹(仙道)の 小周天。高藤聡一郎 氏の仙道など。小周天のやり方、効果。

 内丹(仙道)、小周天についてのnoteです。 マニア向けの分野です。
多くの人は聞いたこともなく、今後 関心を持つこともないかもしれません。関心がない人はスルーして下さい。

今現在、国内外を問わず瞑想――マインドフルネス瞑想、禅、ヴィパッサナー瞑想などが人気になっています。
これは科学的にも、瞑想が心身にとって良い効果があると言われるようになったのも理由の一つだとされています。

これら広く実践されるようになった瞑想と比べると、特殊なところがあるのですが、気功の分野で内丹・小周天という実践があります。

内丹は、この「瞑想する人」note では密教に相当するとしています。 
ただそうは言っても、このnoteにおいては内丹の実践を標榜しているわけではないので、要点のみの解説にとどめています。


瞑想の書』の「【 番外編 】 内丹(仙道)の実践について」でさらに扱っています。


内丹(仙道)

中国の気功の奥深いものに内丹(内丹術 内丹功)があります。現在の数多くある気功流派の大源流の一つとなっているものです。

内丹は仙道とも言われています。日本では1980年近くに高藤聡一郎氏によって紹介され、一時期 仙道(高藤式仙道)が精神世界系でブームになりました。

小周天

多くの人は眉唾モノと思うでしょうが、内丹においては 小周天 という生命エネルギーの体験があります。
小周天というのは諸説もあるのですが、一般的には「」が、人体にあるとされる経絡のうちで奇経に属する督脈任脈を巡る体験と説明されます。

体験者は下腹(下丹田)に熱感(気、陽気真気などと呼ばれる)が発生し、それが背面中央(督脈)を上昇し、正面中央(任脈)を下降して周回する、としばしば説明します。

このような生命エネルギーの体験自体は、内丹以外の気功流派やヨガによっても体験されることがあるのですが、特に内丹においては独特の経絡説、養生思想などに絡んで「小周天」として注目されてきました。

ちなみに、中国伝統医学の古典に「腎間の動気」というのがありますが、これは文字通り、気の活動、陽気のことであり、内丹の修練によって実際に体験できると主張する人もいます。

この小周天は内丹における初級段階であり、健康法としても注目されることがあります。
実際に、正しい方法で地道に実践された場合には、健康に資することが多いという印象があります。

しかし瞑想に馴染みのない人には、達成が容易でないことが多いです。
さらに、独修には慎重な意見を持つ人もいます。というのは初級段階とはいえ、自律神経の不調や それ以上の副作用が生じることがあるとされるためです。

そしてこのような慎重な見方は、高藤式仙道の実践者よりも、伝統的な方法を尊重する中国人老師に多いという印象があります。


ちなみに大周天という言葉もあるのですが、何をもって大周天とするのかが人によって違い過ぎるので、正確な定義は私には分かりません(関心もない)。

小周天の効果

小周天の効果としては健康に関することが多いです。
小周天を達成した人には「以前よりも健康になった」と言う人が多いです。

他には「寒さに強くなった」という感想も多いです。もちろん病気が治った、持病が良くなったと言う人もいます。

私が以前 通っていた気功教室の生徒で60歳近くで小周天を達成した女性がいて、「大病したことはないけども、昔からどことなく体の調子が悪かった。小周天を達成した今が一番健康だと感じている」というような内容のことを話していました。

高藤聡一郎氏も、小周天の実践によって、どんな治療でも良くならなかった肝臓病などの病から回復したと言われています。

中国気功界でもとても有名な因是子(蔣維喬、1873-1958)という人は病弱な体質や肺病、胃腸病などを小周天で改善したとされます。
自らの体験をもとに『因是子静坐法』(1914)を著し、これは今日でも読まれています。


しかし特に高藤氏の仙道本の影響を受けた人の中には幻想を抱いている人が少なからずいるのですが、過大評価は禁物です。

実際のところは、小周天達成以降も、風邪、インフルエンザにかかったり、肺炎になったりなど病気する人はもちろんいます。
さすがに私も心配になったのですが、詳しいことも、その後の経過も聞いていないのですが、以前の気功教室の生徒の中で小周天達成後に、ガンになった人がいると、人づてに聞いたことがあります。

小周天を達成するほどの気功修練による、奇跡としか思えないような快気治癒体験も聞いたこともあるのですが、やはり、老・病・死は気功であれ、ヨガであれ、瞑想であれ避けられないことなのでしょう。

女回り・男回り

ネット上などでは、小周天の気の巡りには男女の違いがあるという意見をよく見かけます。
確かに伝統的な中医学、養生思想においても気や経絡の活動には男女の差異があるという見解があります。

小周天は通常は気が背中の督脈を上り、前面の任脈を下る体験です。
一方で、任脈を上り、督脈を下るという体験をすることがあります。この体験は女性に多いとされています。

ネット上などでは、前者の通常の周り方を「男回り」、後者を「女回り」と呼ぶ意見を見かけます。

様々な見解はあるのですが、これは浅い意見だと感じています。

小周天に関する伝統的な内丹の思想的根拠は以下のようなものが多いです ↓↓

“任脈は陰脈の海であり、三陰を孕み養う。督脈は陽脈の海であり、三陽を監督する。真気は任脈を巡り、督脈に循環し、気血を充分に満たし、百脈の流れを疎通させる。

普段、気脈は経絡にそって巡っている。これを「順道」と呼ぶ。
これは、陰陽の生滅の法則や軌道にそって巡るものであり、筋肉や皮膚に散らばっていき、自ら戻ってくることはない。 
真気は消耗し、よって老いや病、ひいては死、夭折に到る。

古くはこれを「非常」と呼んだ。「順を用いていながら、その実、身体には逆である」という意味である。

周天搬運法では、ある部分の経絡は気脈を逆に巡らせる。これを「逆道」と呼ぶ。循環させて流すのではあるが、下丹田に「還丹」でき、真気の消耗が比較的少なく、大部分の真気を保つことができる。よって長生きすることができる。

古くはこれを「真常」と呼んだ。「逆を用いながら、その実、身体には順である」という意味である”

引用:「気功の真髄 丹道・峨眉気功の扉を開く」 張 明亮 著 KADOKAWA/角川学芸出版

※周天搬運は小周天と同義。

つまり普通の人は任脈を上り督脈を下る気の巡りだが、内丹の修練者(小周天の達成者)は気の巡りがその逆になるということです。
「順は人を生み、逆は仙に成る(丹を成す)」という言葉もあります。

このような意見は、私が以前 習っていた内丹派医家気功を教える中国人老師によっても支持されていました。

その気功教室では男女ともに小周天は通常の小周天の体験でした。
しかし、上記の「女回り」を体験する人が男女ともにあり、実際に女性に多かったです。
女性に多かったのは、やはり気や経絡における男女の差異によると説明されました。

しかしこの女回りでも、修練を続けていくうちに、男女ともに通常の小周天の周り方になります。
これについて、気の活動が弱いうちは、任脈に流れやすいためで、強まるにつれ通常の小周天になる、と説明されました。

私は小周天の実践においては、「女回り」「男回り」などといったものは浅はかな見解であり、通常の小周天をもって小周天とすべきと考えています。


また気が腰部の帯脈を流れることがあります。これは小周天に付随して生じることがある現象です。異常ではないので自然に任せるようにします。
この現象も女性に多いとされます。

関連note:奇経八脈(任脈、督脈、衝脈...)について。経絡と気功、瞑想


高藤聡一郎 氏の仙道(呼吸法:武息)のやり方

日本に内丹・仙道を紹介したのは何人かいるのですが、最も有名なのが やはり高藤聡一郎氏です。
そのため日本での小周天の実践には高藤氏の紹介した方法や、それに影響を受けた方法によるのが多いです。

高藤式仙道では武息という強めの丹田呼吸が、特に初期段階では重視されます。
武息によって下丹田に陽気を発生させ、それを意識(意念)で回す方法です。

武息についてはネットでも探すと見つかりますが、要はヨガでいうクンバカ(息止め)をともなった呼吸法です。

腹式呼吸(丹田呼吸)の要領で、息を吸って下腹部を膨らまして、意識を集中しつつクンバカします。
これを繰り返します。

しばらくの期間この武息を継続すると陽気が発生するので、それから本格的に小周天の段階に移ります。

ちなみにこれと ほとんど同じような呼吸法がチベット密教のツンモ(霊的な火)の行法にあります。

関連:クンバカ(息止め)のある呼吸法は他にも。ヴィム・ホフ・メソッドの呼吸法↓↓

小周天の種類(意通、 気通、 黙想・妄想)

小周天の達成には種類があります。
大きくは意通気通黙想(妄想)の3種類があります。

高藤聡一郎氏の仙道のように、特に武息などの呼吸法を用いて陽気を発生させ、意識(意念)で小周天を通すやり方は意通周天(意念周天)と呼ばれます。

一方で、武息のような強めの呼吸を用いずに、自然な腹式呼吸をともなった瞑想によって陽気を発生させ、それが自然に巡るのを待つというのを尊重するやり方もあります。
これは気通周天(経絡周天)と呼ばれます。

ちなみに高藤氏の書籍には、意通から始めて気通もできるようにするといった内容の記述もあるようです。

また武息によって丹田に陽気を発生させることもせずに、気が任・督脈を巡るイメージをするだけの方法も小周天法などと、ネット上でよく見かけます。
それらは内丹(仙道)の小周天ではありません。

それらは黙想(妄想)周天とか、健康気功家の小周天などと言われていて、内丹の実践ではないです。

他には流派、指導者によっては「丹道」とか「真通」というようなものもあると主張されますが、これは小周天の段階に含めてよいのか、私には分かりません。
むしろ、より進んだ段階とすべきなのでは、と考えています。


伝統的な内丹法に従う中国人老師の場合には、意通は避け、もっぱら気通を実践すべきと主張することがあるようです。意通は体験が浅く、かつ副作用が生じやすいからという説明を聞いたことがあります。

以前習っていた気功教室でも気通が尊重されていて、むしろ「意通はするな」と言われました。
上で引用した書籍「気功の真髄」の張 明亮 氏も同じです。

“周天搬運は、練功が一定程度に達したときに、真気が丹田に集まり充満したあと、自然に経路にそって流れ出し体内に巡っていき、「周天運転」を形成する。

これらはすべて自然を原則とし、けっして「以意領気(意をもって気を領す)」や「黙想周天(周天を想像する)」をしてはならない”

“周天搬運は、練功が一定程度に達したときの反応や境地であり、決して練功の方法や目的ではない”

“~ かならず丹田に真気が集まり充満するのを待たなければ運搬することはできない。意念やイメージを使ってはいけない。それでは空を運んでいることになる。

運搬の目的は、ひとつは偏りを補い、陰陽のバランスをとることであり、もうひとつは気脈を自ら調整する能力を高め、いわゆる「盗天地、奪造化(天地の精気を盗み、造化陰陽の法を奪う。すなわち命を天に任せるのではなく、自らが主導する)」『陰符経』  に達することである。 ~”

引用:「気功の真髄 丹道・峨眉気功の扉を開く」 張 明亮 著 KADOKAWA/角川学芸出版


高藤式仙道などでは小周天 以上の段階には進めないという声もあります(いや、そんなことはない。高藤式仙道を馬鹿にするな!という声もありますが)。

実際に、精神世界、オカルトにハマっていた10代の頃に高藤氏の著書で小周天(意通)を達成したけれども、その後10年、20年経っても小周天どまりという人もいるようです。
武息による意通を重視する場合には、いつまで経っても小周天どまりということが、しばしばあるのかもしれません。

これについて実践者向けに、ザッと私見を述べます。↓↓

小周天は、先天・不識神の働きであり、気通を達成すべき。
その実践は、性功を重視し、性命双修を用いるべき。

武息や意通は後天・識神の要素が大きく、命功に偏る。
これではいつまでも次へは進めない。

先天・不識神は、潜在・無意識といったものを意味し、このnoteにおいては「内なる意識」を意味します。

性功は瞑想を意味しています。このnoteにおいては用語解説にあるように、安定した瞑想態を重視しています。

ちなみ「瞑想態」「内なる意識」を重視しているのが『瞑想の書』の「基本的な瞑想」です。
ただ座って心を落ち着かせるだけのシンプルな瞑想法です。


私が以前 習っていた気功教室の中国人老師は「内丹は内功(静功、瞑想)を重視する。しかし最近の生徒は、静功(瞑想)を真面目にやらないから、小周天を達成できないことが多い」と嘆くことがありました。

気通の場合は、瞑想(静功、性功)を重視すべきだと考えています。

女性と内丹法。女丹法?

意守丹田の方法および陽気(熱感)の発生は、(閉経前の)女性の、特に生理に関する体調に影響する可能性が言及されることがあります。
基本的には女性も意守丹田で行われることが多いのですが、生理など体調に悪影響がある場合には、この意守丹田は控えるべきとする見解があります。

また高藤聡一郎氏の仙道本にある武息という特殊な呼吸法なども体調に影響する可能性があるとされます。
高藤氏の書籍には女性は武息はしない方がよいという記述や、下丹田の熱感は強くしない方が良いという記述があるようです。

こういった呼吸法は身体にも負担があるので、悪影響があるのなら即刻やめるべきです。

女性向けの内丹法として「女丹法」がすすめられることがあります。
女丹法では、女性は胸部の膻中(だんちゅう)という経穴の意守がよくすすめられるようです。

他にはみぞおち付近、ヘソ、体内でヘソと骨盤上部・腰椎付近にある「命門」という経穴の真ん中付近などの意守がすすめられるようです。

私は女丹法については知識がありません。
以前通っていた内丹系の気功教室でも、女丹法はそれほど気にされてなかったようです。
女性も意守丹田で男性と同じ気功法でした。それで問題なかったようです。
気功を続けたら健康になったなどの声も多かったです。他には妊娠しにくかったのに妊娠したなどの声もあったようです。

しかしどうであれ体調不良が生じるなら実践は控えるべきです。

指導者・教室選びについて

私が以前通っていた気功教室は現在はなくて、その気功老師も随分前に中国に帰ってしまいました。

他には小周天の指導教室については直接には知りません。

でも調べると「良いんじゃないかなぁ?」と個人的に思うのがあるので、それを紹介します。

最終的な判断、選択は自己責任でお願いします。


 上述の書籍『気功の真髄 丹道・峨眉気功の扉を開く』(張 明亮 著 KADOKAWA/角川学芸出版)の「周天搬運法」の章は、小周天の真実が書かれていると考えています。

ここにある記述はマガイモノではなくて本物だと思います。

しかし気功、瞑想などまったく経験が無い人が、これを読んでも要領を得るのはなかなか難しいのではないかなぁ、と思います。

張 明亮 氏の関連団体は日本にもあるようです。小周天を指導しているか分かりませんが、関心あるようなら問い合わせてみてください。
ちなみに「峨眉派」は中国伝統医学、気功、武術の名門伝統流派です。気功は道家と仏家の流れをくんでいるようです。


 書籍『気功―その思想と実践 』(春秋社)の著者、廖 赤虹廖 赤陽の両氏も、いろいろと読む限りにおいては、伝統的な内丹法に詳しいように思われます。

両氏の指導する気功教室として「無為気功養生会」というのが、神奈川県横浜市にあるようです。
優れた功法であるとされ、気功界隈では非常に有名な「一指禅功」を指導しているようですが、小周天の指導があるかどうかは、私には分かりません。


「良いんじゃないかなぁ?」と思うのは以上です。

他にも内丹、小周天に詳しかったり、高藤聡一郎氏による仙道に通じていたりする人はいるとは思うのですが、他は私は全く知りません。


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