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【Mula Bandha】ヨガのバンダ、ムーラバンダについて

 今回は、ヨガ(ヨーガ)のムーラバンダについてです。

今後この「瞑想する人」で密教や生命エネルギーに関してムーラバンダに言及することがあるかもしれず、その説明のためのリンク用記事としてもnoteにしておきます。

関連:ヨガ、気功、呼吸法についてのnote ↓↓

バンダ(Bandha)とは?

 バンダとはヨガ(ヨーガ)の体操、主に呼吸法(プラーナヤーマ)の時に行われる身体操作のことで「引き締め、束縛、結縛」などと訳されます。

バンダの目的は呼吸を深くするためとか姿勢の安定のためなどと言われることがありますが、さらに、ヨガの神秘的な解釈によると、「エネルギーの操作」「エネルギーを導く」ためなどと説明されます。

“ ...... バンダとは束縛、結びつけるとかつかまえるという意味がある。......
 電気が生じたら、電力を目的地に運ぶために変圧器、伝導体 ...... が必要である。プラーナヤーマの実践によってプラーナがヨギの体内を流れるとき、ヨギはバンダを行ってエネルギーの分散を避け、害なく適当なところに運ぶようにバンダを適用することが必要である。...... ”

 引用:『ヨガ呼吸・瞑想百科 : プラーナによる心身のバランス回復』B.K.S.アイアンガー 著 沖正弘 監訳  沖正弘, 後藤南海雄, 玉木瑞枝 訳  白揚社 2004 p.149

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重視されるバンダは3つあります。

腹部骨盤底のバンダです。それぞれジャーランダラバンダウディヤーナバンダムーラバンダと呼ばれています。


基本的にはバンダ及び、これをともなったプラーナヤーマは熟練した指導者、できれば医学・生理学、解剖学的な知識のある指導者から学んだ方が良いと言われています。

述べたようにバンダには神秘的な説明がなされることもあり、そういったことばかりに注目するスピ系の指導者によって頓珍漢な指導がなされる場合があります。

バンダはクンバカとあわせて行われることが多く、いい加減な指導で健康被害の可能性も考えられます。


単刀直入に言うと、ヨガ系の情報でよく目にするプラーナとかクンダリニー(クンダリーニ)は、これらに関する体験については、実際にはヨガを愛好する大部分の人にとってもほとんど関係がないです。

こういったのはかなりマニアックなヨーガの領域で、少しくらい体操やプラーナヤーマをしたくらいでは、何とかなるものでは全然ないです。


 健康目的でヨガをしている場合には、ジャーランダラバンダやウディヤーナバンダは、無視しても良いのではと思っています。
ウディヤーナバンダに似ているものとしてはドローインというエクササイズもあるわけだし。


この「瞑想する人」noteにおいては、今後ジャーランダラバンダやウディヤーナバンダが必要とされる実践に言及することはありません。


ムーラバンダとは?やり方、注意点。アシュヴィニー・ムドラーについても

 ムーラバンダとは簡単に説明すると、骨盤底・会陰部付近の筋肉を引き締めることです。

細かいやり方の説明はいろいろとあって、尿意を止めるとき、もしくは途中で尿を止めるときのように締めるなどと説明されます。
体内に引き上げるように締めるなどと説明されることもあります。


ただ、骨盤底・会陰部付近の筋肉を締めるで良いです。

このムーラバンダに関連して、アシュヴィニー・ムドラーというのもあります。
これは肛門を閉じるように引き締めたり緩めたりすることなどと説明されます。


注意点についてです。
まずは実践に関しては、無理に力み過ぎないことです。


骨盤底・会陰部、肛門付近に関する何らかの疾患や障害がある場合には、この実践を避けた方が良いとされることがあります。

ヨガの座法(アーサナ)の中には、シッダアーサナ(達人座)といって踵を会陰部に当てるものがあります。
こういった状態でムーラバンダをすると、該当する筋肉・器官を痛めることもあるので気を付けて下さい。


ムーラバンダの効果

 ムーラバンダの効果についてはいろいろと説かれています。

『ハタ・ヨーガ・プラディーピカ』などハタ・ヨーガの古典では、「アパーナ気」という生命エネルギーを上昇させる効果があるとされています。

関連note:アパーナ気など生命エネルギーについて


アーサナの安定に良いと言われます。

尿失禁の予防の訓練として、ほとんど同じものが医師から指導されることもあるようです。


自律神経の訓練に良いのではという見解もあります。
これに関しては、男性のEDに適用されることもあると聞いたことがあります。
精力増強のために行う人もいるようです。
関連note

こういったことに関心がある場合には、リラクゼーション法とともに、頻呼吸系のプラーナヤーマも良いかもしれません。
カパーラバーティやバストリカです。

これらのプラーナヤーマの時に、もっと呼吸を深くするとヴィム・ホフ・メソッドの呼吸法のように、呼吸性アルカローシスになりやすくなります。

バンダに関して一応、B.K.S.アイアンガー師の見解を。大げさな気もしますが、。

“ ......たとえ正しく行ったとしても、ムーラ・バンダにはそれなりに危険がある。性欲を増加するので濫用する危険がある。この誘惑に負けてしまうと、眠っているへびが棒でつつかれたように欲望が目覚め、致命的となる。 ”
 引用:同上書 『ヨガ呼吸・瞑想百科 : プラーナによる心身のバランス回復』 p.159

“ この三つのバンダを習得したときが、ヨギにとって自分の運命の分岐点であるといえる。ひとつの道は世俗的な楽しみへとつながり、他方はヨガつまり最高の精神(神)と結びつく道である。”  同上

ムーラバンダを用いる呼吸法。仙道の武息、チベット密教のツンモなど。

 述べたようにバンダを用いるプラーナヤーマは、生命エネルギーのような神秘的なものが持ち出されて説明されることが多いです。

 ヨーガの場合にはこれによって「アパーナ気とプラーナ気(とサマーナ気)を(ヘソのチャクラで)結合させる」などと説明されることが多いです。

ムーラバンダによってアパーナ気を上昇させ、ジャーランダラバンダやウディヤーナバンダなどによってプラーナ気と混ぜ合わせるなどと説明されます。


これらは主にクンダリニー(クンダリーニ)に関するマニアックな実践で言及されます。


 気功の分野では、小周天で有名な高藤聡一郎氏の仙道において「武息」という呼吸法においてムーラバンダが用いられます。

関連:内丹(仙道)、小周天について ↓ ↓

 

 チベット密教においてはこれまたマニアックな「ナーローの六法」などのの霊的な火(ツンモ、トゥムモ、チャンダーリーの火)の実践にあります。これは仙道の武息と同じものです。

これに関して “ 臍より上の生命エネルギーを「持命風」、臍より下の生命エネルギーを「下降風」と呼ぶ ” などと言及されます(ツルティム・ケサン  正木晃  共著 『チベット密教 図説マンダラ瞑想法』 ビイング・ネット・プレス  2003   p.239)。


このツンモに関しては、酷寒の中でも凍えずに修行でき、体温を上昇させて濡れタオルを体温で乾かすことができるなどという宣伝もあります。

これをするにはヴィム・ホフ・メソッドのような方法もあわせて必要だと思われます。


 最後に繰り返しますが、バンダに関してはプラーナ、シャクティ、クンダリニー、チャクラなど神秘的なものに言及されることがありますが、実際には、こういったマニアックな領域で正当な成果をあげるのは非常に困難です。

これらに言及するヨガの書籍など情報は多いですが、スピ系エンターテインメントの雑談を超えるものは、ほぼありません。


特にバンダとクンバカのともなったプラーナヤーマは、やり方によっては直ぐさま重篤な健康被害につながることもあるので、スピ系のうわついた情報に惑わされないように気を付けたほうが良いと考えられます。