【ショートショート】 49日間
あまりにも短いので、ショートショートと題します。
ショートショート 『49日間』
毎日仕事で忙しく、休みもなかなか取れずに過ごしていた。
この忙しさから解放されて自由になりたかった。
それがある日突然、日々の労働から解放されることになった。
僕は晴れて自由の身となったんだ。
「でも49日間だけだからね」
と、誰かに言われた。
僕は、夢の国や別府温泉や沖縄など、今まで行きたかったいろいろな場所に行った。
ただ、海外旅行に行った時に迷子になってしまい、日本に帰国した時には49日が過ぎてしまっていた。
僕には帰る場所がなくなっていた。
49日間という約束を破ったせいか……。
はたまた自由になるということは、帰る居場所もなくなるものか──。
途方に暮れていたが、ふと、そういえば今日は母の命日だったことを思い出し、寺へ墓参りに行った。
墓の前で手を合わせた後、少しの間そこに立っていた。
僕はこれからどこへ行けばいいんだろうな?
母さん、どうやら、僕は自由と引き換えに孤独になってしまったようなんだよ…。
すると、お坊さんがこちらにやって来た。
お坊さんは挨拶もなく、僕に向かってお経を唱え始めた。
「挨拶も断りもなく、急に人に向かってお経を唱えるなて失礼なやつだな」
と思った。
………だが、
ああ、そうか……。
ここで、僕は納得したんだ。
空から暖かい光が射した。
──僕は成仏した。
[完]
[140字版]
労働から解放され僕は自由の身となった。「でも49日間だけだからね」と誰かに言われた。夢の国や沖縄などいろいろな所に行った。気がつくと49日が過ぎていて帰る場所がなくなり途方に暮れた。ふと母の命日を思い出し、墓参りに行った。するとお坊さんが来て、僕に向かってお経を唱えた。僕は成仏した。
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