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【ショートショート】 人柱

※ 内容は大分暗めで後味も悪いかもしれません。
朝や気分の良い時にはあまり読まないことをオススメします。笑

ショートショート  『人柱』


村の存続のために10年に一度、村娘が一人、神に捧げられる。
人柱となる条件は生娘であること。

選ばれた娘は、誰もいない場所で、ただ一人、この身が捧げられることを待っていた。

人柱となった娘に近づくことは、娘にとっても人々にとっても不浄とされ禁じられていた。
よって、娘より遠く離れた場所から導火線で火を点け燃やす。
それは何とも残酷で火刑のようなやり方であった。

ただ、幼い頃から人柱の候補とされていた娘は、常に神を信奉し、自分はそういう星の下に生まれたのだと観念していた。


娘には恋い焦がれていた男がいた。
少し仲が良かったけど、あまり深く近づくことはできなかった。
そんな人も淡い思い出の中にいた。
…もう逢えることは叶わない。

しかし、その男が、今神に捧げられようとしている娘の元に来た。

男は娘を抱き寄せた。

「私は神に捧げられる身です」
と娘は言った。

「君は神様なんて信じてるの?」

そう言い、男は娘を抱いた。


「僕も君と一緒に朽ちよう」

導火線から火が伝い、二人は燃えた。


……村は滅びた。



[完]



補足


ツッコミどころが満載ですね。

時代はいつ頃か不明だけど、けっこう古い時代の日本のつもりです。

しかし導火線が発明されたのって1831年の英国なんですってね。
けっこう最近なので、それから日本に伝わったことを考えると、あまり古い時代ではなくなってしまう💦

あと人柱って、基本的に土中や水底に埋めていたらしいのです。
火炙りの刑みたいな残酷なやり方はないなって思ったんですが
最初で最期の束の間の、燃えるような恋を表現してみたくて、こうなりました。
まぁフィクションなので許してください。

これで本当に村が滅びたっていうのも酷い話だけど、理不尽な世の中の表現でもあります。
ただ単に後味悪くしてみた感じでもありますが。苦笑

これが神様の仕業だとしたら、その神様は神の振りをした悪神か、
もしくは正神だとしたら、村人の所業にいい加減怒ったのでしょう。
或いは神などいなかったのかもしれません。



[140字版]


村の存続のために10年に一度、村娘が神に捧げられる。条件は生娘であること。娘が恋い焦れてた男が娘の元に来て、娘を抱き寄せる。「私は神に捧げられる身です」「君は神様なんて信じてるの?」そう言い男は娘を抱いた。「僕も君と一緒に朽ちよう」導火線から火が伝い、二人は燃えた。
…村は滅びた。



短編小説について

現在、ゆっくりブログを更新する余裕があまりなくなっています。

それでもたまには更新したいので、軽く書く感じになりますが
最近、短編小説を書いてみたら面白くて、頭に思い浮かんだ話をメモしてたので
たまに上げていこうと思います。
最初はTwitterに140字小説として投稿しようと思い作っていました。
ただ、定期的に投稿できるほど話は出来ないし、たまにブログやnoteに上げる感じがいいのかなと思いまして
Twitterはコンテストがある時だけ投稿しようかなと思っています。
コンテストに参加中は、規約により、ブログとnoteにUPしてる同内容の小説は非公開といたします。
(盗作対策のために二重投稿はNG、過去作を応募する際は過去のデータを消す必要があるため。)



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