sekiisekii

日本BL大好き、「インディゴの気分」の中国のファンです。

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最近の記事

往く日々と夜(21、終)(R18)

第二十一章 作者MiyaNaoki 翻訳sekii 「おい城戸!彼女ができたって!」 社長の大きな声は、数十歩の距離を置いて、会社の廊下に響き渡った。一瞬、人々は城戸に注視するようになった。城戸は、壁の隙間にでも入りたいほど恥ずかしい。しかし、社長は城戸が困っていることにも気づかず、大股で歩いてきて、豪快に肩を叩いた。 「いいぞ、坊や!両手に花じゃ!鬼島先生の本が25万以上のベストセラーになって、君自身もやっと恋愛運に巡られた。めでたし、めでたし!」 その二つのことを併せ

    • 往く日々と夜(20)(R18)

      第二十章 欠損の月 作者MiyaNaoki 翻訳sekii 城戸が木島のマンションに帰ってきたのは、夜の1時頃だった。そんなに急がなくてもよかったが、心配に耐えられず、ぐっすり眠れた夜はほとんどなかったのだ。 木島は城戸が帰郷して三日目から、まったく連絡がつかなくなってしまった。電話に出なく、メールも返事しない。城戸は北川たちに聞いても、全然ドアを開けてくれず、食べ物やタバコをドアに置いておくように言われただけで、部屋の中が物音ひとつしないこともあり、在宅しているかどうか

      • 往く日々と夜(19)(R18)

        第十九章 忘れ物 作者MiyaNaoki 翻訳sekii 「突然お訪ねして、大変失礼ですが…」 向かいの席に座った婦人は素っ気なく髪を整え、眉を下げて頷いていて、ありのあふれる日本人主婦のように温和で恭順に見えるが、時折ちらつく鋭い目つきと指でカップの縁をつまむ仕草は、木島に悪い予感をする。息子に黙ってこのマンションに来たこのおばさんは決して挨拶できたわけではない。 「士郎がいつも木島先生にお世話になっていますから、私からもお礼を言わないといけないと存じます」 まっすぐに

        • 往く日々と夜(19)(R18)

          第十九章 忘れ物 作者MiyaNaoki 翻訳sekii 「突然お訪ねして、大変失礼ですが…」 向かいの席に座った婦人は素っ気なく髪を整え、眉を下げて頷いていて、ありのあふれる日本人主婦のように温和で恭順に見えるが、時折ちらつく鋭い目つきと指でカップの縁をつまむ仕草は、木島に悪い予感をする。息子に黙ってこのマンションに来たこのおばさんは決して挨拶できたわけではない。 「士郎がいつも木島先生にお世話になっていますから、私からもお礼を言わないといけないと存じます」 まっすぐに

        往く日々と夜(21、終)(R18)

          往く日々と夜(18)(R18)

          第十八章 誕生日プレゼント 作者MiyaNaoki 翻訳sekii 「あの………それ………誰からもらったか?」 城戸はしばらく眺めて、迷っていたが、ついに口を開けた。 「え、これ?」 突然の質問に木島は戸惑ったが、城戸が自分のもてあそんでいるクリスタルリンゴを不思議そうに見ているのに気づき、笑って手のひらに載せた。 「そう、それ」 城戸は素直に頷いた。彼は前から聞きたかった。こまごまとしたものが多い部屋だが、このリンゴは特別なもので、すぐに手に届けられ、決して忘れられな

          往く日々と夜(18)(R18)

          往く日々と夜(17)(R18)

          第十七章 同窓会 作者MiyaNaoki 翻訳sekii 「まだ着替えてないのか」 片手でネクタイを結んで寝室から出た城戸はソファに腰を下ろして、クリスタルリンゴをもてあそび、今日ものんびりするという顔をしている木島を見て、ちょっとまずいなと思った。 「急に行きたくなくなったんだ」 木島はリンゴを置いて真顔で言った。城戸はこめかみがぴくぴくした。やはり、こいつを外出して、平凡なクラスメートが集まる同窓会に行かせるなんて、うまくいくわけがない。今日一日、木島は穏やかで落ち着

          往く日々と夜(17)(R18)

          往く日々と夜(16)(R18)

          第十六章 三人称  作者MiyaNaoki 翻訳sekii 「お断りいたします」 重苦しい沈黙の後、城戸はタバコをもみ消し、社長をまっすぐに見拠えて、硬い口調で言った。 「えっ?なんで?」 人に断られる経験が少なく、特に、従順な城戸に断られることが少なかった水谷社長はひどく怪訝そうな顔をしている。また、失礼な態度をとられて、びっくりした。 「今、手が回らないじゃない?鬼島先生がますます勤勉になって、原稿を催促する必要もなくなったし、あなたのようなべテラン編集者が付きそう必

          往く日々と夜(16)(R18)

          往く日々と夜(15)(R18)

          第十五章 温泉旅行(下) 作者MiyaNaoki 翻訳sekii 昼頃にホテルに着いて荷物を置いてから、二人は浄蓮の滝まで行ってみるつもりだったが、途中で時間がかかって、それに情けを交わしたあげく、お腹がすいてきたので、ラーメン屋で昼食をした。緑に覆われた水気のよどんだ山道を辿り、宿に着いたのは午後三時過ぎで、ちょうどチェックインの時間になる。 城戸が選びに選んだ旅館湯本館はまさに『伊豆の踊子』が書かれた場所で、川端が泊まっていた部屋が今も当時のまま保存されている。玄関に

          往く日々と夜(15)(R18)

          往く日々と夜(14)(R18)

          第十四章 温泉旅行(上) 作者MiyaNaoki 翻訳sekii 「カシャッ」 突然の音と光に、城戸の注意は手の中の原稿から引き離され、木島の持っているカメラのレンズに向けられた。 「いやだ…動いたから、ぼけちゃうよ」 久しぶりにカメラを手にした木島がぼやいた。 手はだいぶよくなってきたが、おせっかいな担当編集者がなんだか不安で、何も書かせなく休養しろといった。字を書くことができない時、木島は口述でいくつかのアイデアを記録したり、コラムの原稿を提出したりして、それ以外はた

          往く日々と夜(14)(R18)

          往く日々と夜(13)(R18)

          第十三章 筆、墨と刺青(下) 作者MiyaNaoki 翻訳sekii 「どうして?前に言っただろう?今はそんな自虐的なことははやってないから。やってみないとわからないじゃないか…それに、手で書いても結局本は印刷される。違わないよ。」 もう、説得をする方の城戸でもうんざりした。作家のペンやインクへの愛着が理解できるが、支障をきたすほどになってしまった今となって、ペンで書くことってそんなに譲れないものか。 木島は急に真剣になって、くっきりとした目を大きく見開き、城戸の顔をじっ

          往く日々と夜(13)(R18)

          往く日々と夜(12)(R18)

          第十二章 筆、墨と刺青(上) 作者MiyaNaoki 翻訳sekii 「まさかSM小説を3冊も書いたとは思いませんね。さすが、さすが!」城戸は分厚い原稿を整理しながら、当時のあの一言で鬼島先生がインスピレーションに恵まれ、SM三部作になったと感心する。 「編集者さんの大きな貢献にも感謝しなければならないよ」 木島はいつもの淡々とした口調で答えたが、城戸に褒められるたびに、木島はなかなか嬉しい。 『縛愛』の終わりは、思ったよりも数日かかったが、城戸の執筆協力でようやく完成さ

          往く日々と夜(12)(R18)

          往く日々と夜(11)(R18)

          第十一章 欲望のセリフ 作者MiyaNaoki 翻訳sekii 「先生、本当に骨に問題はありませんよね。本当に過労で炎症を起こしただけで、休んで薬を飲めば治るんですよね?」城戸が三度目に質問をしたら、お医者さんも、うなずきながら、不自然な微笑をする。 木島は横から城戸の腕を強く引っ張り、いい加減にしろと目で合図した。 「でも、痛いでしょう?気をつけて、気をつけたほうがいいですよ」 城戸は医者に笑顔でお礼を言ってから、木島を振り返った。 薬局を出ると、城戸はまだ落ち着かなく

          往く日々と夜(11)(R18)

          往く日々と夜(10)(R18)

          第十章 初雪 作者MiyaNaoki 翻訳sekii 「筋肉に食い込んだほどきつく締め付けられたロープがすこしずつ抜けたら、悠子は自ら蜜穴に手を入れてかき回しながら、ロープをほどいてくれる矢田さんの姿をぼんやり眺めている。その締め付けには限りない愛があるのを感じた。彼女は網のような、身体中にある鮮やかな赤い跡を大事にしている。それは深く愛された証なのだ。」 城戸が願っていた通り、先生の旧宅で行われた例の大胆な実験は、木島のインスピレーションの泉となったかのようで、新しいア

          往く日々と夜(10)(R18)

          往く日々と夜(9)(R18)

          第九章 創作実験(下) 作者MiyaNaoki 翻訳sekii 城戸は三本のろうそくに火をつけ、ずらりと一列にならべた。ろうそくがきらきらと、ぎっしりと詰められた道具戸棚を照らした。ろうそくの火がゆらゆらとゆれて、城戸の心もそうだ。 木島の弱々しい呼吸音が、彼の背後から伝わってきた。この異常な実験を続けるかどうか、城戸は木島の体を少し心配し、自分の行為の正当性を疑い始めた。また、この変態に近い行為の中で、自分の興奮と衝動が本当に合理的かどうか、彼にもわからなかった。 「こ

          往く日々と夜(9)(R18)

          往く日々と夜(8)(R18)

          第八章 創作実験(上) 作者MiyaNaoki 翻訳sekii 「はい、入っていいよ。」 木島の命令を聞いて、待ちかねた城戸はすまをひらくと、思わず目を大きく開いて唖然した。 目の前の景色があまりにもショックだ。城戸はどこを見るべきかわからない。壁にかかった不気味な形をした革のムチや棒か、棚にずらりと並べられた太い赤いろうそくか、隅にある光沢のある革の椅子か、天井から垂れ下がっている冷酷な気配のする鉄の取手か、それとも、黒い黒紋付きの浴衣を着て、帯をゆるく結び、胸元がは

          往く日々と夜(8)(R18)

          往く日々と夜(7)(R18)

          第七章 優しい人(下) 作者MiyaNaoki 翻訳sekii 階段を駆け上がってドアを開けたとき、城戸はアルコールの匂いに呟き込み、不安は雪のように重く冷たく身を巻いた。部屋には明かりがついていたが、生気はまったくなかい。木島は体を丸く縮こませてソファに倒れ、そばのサイドテーブルの上には三つのボトルが置かれている。それに、二つが空っぽで、もう一つには、少しだけ酒が残っていた。クソ、と城戸は心の中で怒った。それは木島を叱ったが、自分を叱ったのか、はっきり分からなかった。

          往く日々と夜(7)(R18)