あんなに感動した旅も忘れてしまう

時間が経つと忘れてしまう。

いろんなところに旅して
沢山のことを経験した。
自分なりに感じてきた。

だけど、
仕事や子育ての日常で、
日々情報がアップデートされる。
だからどんなに感動した旅も
過去の話となり
すっかり忘れてしまう。
あんなに感動したのに。

私の中で一番衝撃があったインド旅。
人々の姿勢や食べ物の風味、生活のスタイルなど
沢山のことに衝撃を受けた。
カルチャーショック。
帰国したばかりの時は
「これが当たり前じゃないんだ！」
と日本の豊かさに改めて実感した。

でも、
そんな気持ちは少しずつ薄れていって
すっかり忘れてしまった。
旅行はやっぱり非日常。感動するけれど
日常に戻ればすっかり元通りに。

でもそれらはふとした時に突然思い出される。

この間、旅番組をぼーっと見ていたら
「あぁ！私もそういえばそんな経験したなぁ！」
と急に思い出した。

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２０歳夏。
1ヶ月だけカナダのモントリオールに留学した。

その半年前にカナダの西部に位置する
カルガリーにも短期留学したが
全く雰囲気が違う。

フランス語も共用語としているモントリオール。
石畳が続く道はまるでヨーロッパ。
同じカナダでも西と東でこんなにも違うのかと
非常に驚いた。

街の中心にある
ノートルダム大聖堂。
立派な建物。

語学学校の帰りに
有名だから、と
ふらっと寄ってみた。

入場料を払い
重い扉を開け入ると、
目の前に美しいステンドグラスと
大きなパイプオルガンが表れた。
そしてちょうど演奏が始まっていた。

それを聞いた途端
涙が出た。
なんの曲かどんな意味で演奏されているのかも
わからない。

でもとにかくその空間に入った瞬間、
泣けた。
神聖な空間とパイプオルガンの重厚な音色に
一瞬で感動してしまった。

美しい音楽で人って泣けるんだな。
思わず感動した自分を
客観的に見つめる私もそこにいた。
意外な自分の発見だった。

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あの時あんなに感動したのにすっかり忘れていた私って。。。

久々に私の頭の中に現れた思い出たち。
そんなときは思い出たちを
よしよしする。
忘れていたよ、ごめんごめん。
あの時感動したんだよね、って。
よく戻ってきてくれた。

モントリオールでの感動を
久しぶりに思い出して嬉しくなったと同時に
気がついた。
忙しい毎日で埋もれてしまったのは
旅の思い出ではなく
私がどんなことに喜び、
どんなことに感動するのか。
私自身が埋もれてしまっていたようだ。

でも旅の思い出のおかげで
埋もれてしまった「自分」を掘り起こすことができる。
私ってこんな素敵な思い出を持っていたんだ！
あの景色を見て感動してたじゃん！
こういうことが好きなんだ！

旅で味わった感情や経験は紛れもなく
私自身。
急に自分が誇らしく思える。

日々、どんなに
忙しくても
大変で
しんどくても

忘れかけていた思い出たちが
思いがけないところで
心を豊かにしてくれる。

旅は続くよ、どこまでも
の所以はそこにある。

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