今日の絵、今日のお話、今日の夢 2019/2/27


女の子は占い師の前に座っていた。そこは古い街だった。時間や夕方らしかった。静かだった。遠くと近くからはいろんな音が聞こていた。しかしちょっと向こうのほうで空気に紛れてしまうみたいでこの通りには微かにしか聞こえなかった。だから占い師が腕を動かしたりすると着物の擦れる音が聞こえて咳払いもよく通った。そしていろいろな匂いが混じって漂っていた。強く漂っていたのは八角だったけれど、時々線香の香りも強くなった。

占い師はウサギだった。ウサギは「あなたの夢は叶う」と言った。女の子はそれをぼんやりと聞いていた。ウサギの着物とテーブルは同じ青色だと思った。

壁にはとても小さな扉があった。

女の子は(きっと占いが終わったら占い師は小さなウサギに戻ってあの扉をくぐって家に帰るに違いない)と思った。

そしてあの扉の向こうはどんな景色が広がっているのだろうと少し想像してみた。


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