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ひらがなしぇりーさん歌ってみたMV動画“Cncentration”の制作秘話

どこかで。
「日本人は詩を詠み、その美しさを感ずる」と、きいたことがある。詩の中で生きる言葉や形状・情調を、詠み味わいつくすことに長けているというのである。
 VTuberのひらがなしぇりーさんから動画制作の依頼を受けた。うたってみた動画のMV(ミュージックビデオ)の依頼である。
 しぇりーさんがカバーする歌はイラストレーターさいとうなおき氏オリジナル曲の『Concentration』であった。制作に取り掛かる前に、数回その曲を聴いてみて自分が感じたのは、“これは『自信』を思い出す歌だ”であった。自分や他人、未来や現在に対して信じることを放棄してしまった人間が、楽しむ心と成長したいと望む心、その二心を両輪として生きていく。がむしゃらに生きる中でふと我に返ればいつの間にか自信を感じ、そこはかとない希望をつかんでいた。そういったある種の原点回帰の歌だと感じたのである。
しぇりーさんとの出会いは、私が心因性吃音症の病に苦しんでいる最中であった。第一印象はまさしく“遠慮する人”。
MV制作の打ち合わせ会議。しぇりーさんは開口一番にこういった。「とにかく歌詞が共感できて、絶対に歌いたいと強く思ったんです」
その声には無垢な感情と思いがたかぶる躍動のようなものが帯びていた。
 その後私はMVの軸をどうするかを考えはじめた。もう一度しぇりーさんが歌っているConcentrationを聴いてみる。彼女特有のウィスパーボイスで、おしとやかであり、静けさ醸す奥ゆかさをもって歌い上げられている。“静かな空間に、躍動する情調”一見相反する二つのイメージに、はてさて私は、一層に考え込むようになっていった。
 Concentrationの歌詞に「心の色重ね合い 目の前の一歩一歩 踏み出そう」とある。この箇所で私はハッとする。心の色は混ぜるのではなく重ねるものなのだ。紫色をつくりだすには青と赤を混ぜ合わせるという感覚があったのだが、心に至っては重ねると表現しているのだ。この歌詞をそのまま受け止めた時、MVの軸が決まった。十人十色の心をもった人物を元にそれぞれにストーリー性を当て、どことなく距離感があるものではなく、今もこれからも共にがんばっていこう!と語りかけるひらがなしぇりーさんの心を重ねたMVにしようと。
 人は過去にあった嫌な出来事を多く覚えていて、嬉しかったこと楽しかったことは忘れがちだ。どれだけ明るくポジティブであっても、一瞬の出来事で心堕とし陰鬱になってしまうこともある。本来、優しく人思いの性格であっても、“人を小バカにしている生きる思想”の縁に触れて、活力を見出せず生まれてきてしまったことにあきれ果て無関心・無気力・無感動になるといったような“死んだように生きる人間”になってしまうものだ。
 そんな明るい点と暗い点、過去や現在、そういった目に見えぬ点同士をつなげて一本の線とし、ひとりひとりの人生と世界という線たちが重なり合うことで、やっぱり生きるって楽しいんだ!生きてみよう!と感じるそんな音符と旋律つまり点と線をMVに組み込んだ次第である。

おさるあにき

►【歌ってみた】Concentration-コンセントレーション-(Coverしぇりー)
-https://youtu.be/OlHvfZI_esY

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