私は面倒くさい人間だ

私は小学生時代から道徳がわからない人間であった。

「主人公は、ビデオゲームをすることを辞め、その時間を使って運動をすることにしました。そのかいあってか、主人公は体重も落ち、とても健康的になりました。気分も清々しくなりました。しかし、友達に新作のゲームを貸してもらったことがきっかけで、また主人公はビデオゲームにのめり込んでしまい、運動をやめてしまいました。主人公は引きこもりになり、身体も不健康になっていきました。さて、主人公はどのようにすれば良かったのでしょう」この道徳の課題は今でもよく覚えている。何故なら、私が道徳の授業で、一番疑問に思った問いだったからだ。

確かこれの模範解答は、「新作のゲームを貸してもらわないで断り、運動するという行為を貫く」とかだったと思う。あるいは、「ビデオゲームは運動や学校の宿題などのやらなければいけないことを全て行った上で、時間が余ったらやる。余らなかったらけじめをつけてやらない」とかだった。

いやはや、この模範解答はとても理解できなかったし、今でもこれが正しいとは思えない。私がこの問いに答えを出すとしたら、「どのようにもしなくて良かった」である。

私は思った。新作のゲームを誰よりも先に攻略する楽しさを知らないのか？本人が楽しいことが一番なのに、何故ビデオゲームをするという行為を否定するんだ？と。

確かに運動をした方が身体にはいいかもしれないし、規則正しい生活は送れるかもしれない。でもそんな、本当にやりたいことをやらない人生で良いのかと。運動がやりたい人は運動をすればいいが、他のことがやりたいならもっと忠実に欲望に従ってもいいのではないかと。そう思った。増してや私は生粋のゲーマーだったため、「ビデオゲームはやめて運動をする方が有意義だと思います！」とか言っている他の生徒を見て、「でも君はビデオゲームの酸いも甘いも何も知らないじゃん」と内心思っていた。

そんな私も、いや、そんな意見をもつ私だからこそ、先生には目をつけられていたし、多様な意見を尊重……はしないくせに求めてくる道徳の授業では、私に意見を求めてきた。「主人公は、どのようにすれば良かったも何も、このままで良いのではないでしょうか。」クラスの同級生は、また捻くれた意見を言ってやがると馬鹿にする。それでも自分の意見を曲げずに9年間道徳の授業を乗り越えてきた私は、立派だったと思う。

しかし、そんな私は、社会にとって「不純物」だった。常識が、真に常識だと思っている人にとっては、私なんて鬱陶しくて仕方なかっただろう。「相手の意見を認めるということをしろ。そうすれば相手の気持ちが良くなって、職場の雰囲気が良くなる。自分と意見が違っても、相手の意見には一旦従え」バイト先の嫌いな人が私に言ってきた言葉だ。こういうことを考えている人が、まあ社会でうまくやっていける人なのかなとは思う。それが例え表面上のつながりになってしまおうなってしまおうとも。

ここまで書いてきただけでも、なんかこいつ面倒臭いな……と思う人がいると思う。でも安心したまえ(？)私はもっと面倒臭い。それには性的趣向と私の抱えている病気が関わってくる。

まず、性的趣向からだ。私はアロマンティックといって、簡潔に言うと、他者に恋愛感情が向かないという性質を持っている。ただ、恋愛感情ではなくても、「人として好き」というのは分かるし、生涯独り身なのもなんだか寂しいなと思う。人に対して「かっこいいな〜、可愛いな〜、綺麗だな〜」とかは感じるのに、それが恋愛感情に向かないというのは自分でも疑問である。誰か、本当に一人でいいので、生涯寄り添えるパートナーが欲しい。自分の心の内をさらけだせる人が欲しいというのは求めすぎだろうか。愛……少なくとも「恋愛」は与えられない癖に、誰かに愛されたい、認めてもらいたい、寄り添って欲しいとか思ってしまう。私って面倒臭い。

あとは、病気についてだ。私は統合失調症である。所謂、陽性症状については幻聴が昔聞こえていたが、今は良くなってきている(幻覚もちょっとあった)。問題なのは陰性症状の方で、分かりやすく言えば鬱っぽいのである。やる気が出ない、過眠気味、集中力散漫というのもあれば、勝手に人生に絶望して、解決できないことでクヨクヨと悩み続ける。時には自暴自棄になって、自傷することもある。世の皆さまは、そんな人間と積極的に関わりたいと思うのだろうか。そして、そんな自分も認めてほしいと思っている私は傲慢だろうか。まあ、面倒臭いよね。

とりあえず、私の世間からの印象というのは悪くて。それを認めた上でどう生きていくか。どう人と接していくかが大事なのだと思う。

こんな面倒臭い私だからこそ、私に絡んでくれた人、絡もうとしてくれた人には本当に感謝している。一切人脈がなければ、私はもう死んでいたかもしれない。ただ、感謝をした上で、今絡んでくれている人とはより仲良くなっていきたいし、今の私に足りないものを与えてくれる人と出会いたい。

私って傲慢で面倒臭い。そんな私を寛容に受け入れてくれる世の中だったら良いのになあ。