見出し画像

絵にまつわる記憶たち

 作家である江國香織さんは絵についてこんなことを言っている。

 私はよく、絵がかけたらいいなと思う。絵は、ただそこにあるだけのものを、ただそこにあるだけの風に描ける。文章ではそうはいかない。

 そんな江國さんが古今東西27人の画家の作品をとりあげて書き上げたエッセイ集が『日のあたる白い壁』だ。

 この本を通して知ったことはたくさんある。
 ゴーギャンの描くオレンジがいかにおいしそうかとか、『民衆を導く自由の女神』を描いたドラクロワの素朴で愛らしい花の習作とか、ゴッホの『夜のカフェテラス』の明るさだとか、オキーフの描く桃の信じられないほどのみずみずしさだとか。

 1つ1つのエッセイには該当の絵と、それにまつわる江國さんの思い出や見方が綴られていて、江國さんと一緒に絵画鑑賞をしている気持ちになる。

 もし自分が絵にまつわるエッセイを書くしたら、誰の絵について書こう。クリムトの『接吻』は欠かせない。ロッソ・フィオレンティーノの『音楽の天使』も。

 『日のあたる白い壁』はポケットに入る小さな展覧会だ。学芸員をつとめるのは江國香織さん。ようこそ、この小さな展覧会へ。


この記事が参加している募集

#推薦図書

42,566件

ありがとうございます。いつかの帰り道に花束かポストカードでも買って帰りたいと思います。