パリオリンピックの球技予測まとめ
概要
過去数年の試合結果(得失点と開催地)のみを利用してオリンピック球技5競技(バスケットボール,ハンドボール,ホッケー,バレーボール,および水球)の男女10種目の結果を予測しました.
得失点のみを利用しているにも関わらず,予測結果はそれなりに良い.ジャーナリスト・スポーツライターなど試合を大量に見れる人間であっても提案手法を明確に上回るのは難しいようです.
この結論は過去の大会(東京,リオオリンピック)と変わりません.
提案手法は「各試合の予測勝率」まで算出できるため,メダル予測などが同程度であれば公式ランキングやその他の(手法の詳細を公開していない)予測と比べて優位性があります.
一部種目の公式ランキングはその後の試合の予測勝率を計算できるモデルを採用しています.
本文
パリ五輪の球技5競技10種目の予測を公開していました.大会が終わったので結果をまとめます.
予測性能評価
330試合中予測正解249(予測正解率0.754),引き分け10でした.
横軸に予測勝率(上位評価から見た値.引き分けを考慮する種目では予測勝率+予測引き分け率/2),縦軸に割合(上図)および頻度(下図)を示したものです.上の白破線は予測勝率の値,黄色実線は各階級での実勝率を示しています.
この結果から,予測勝率と実勝率がかなり近いことが分かります.予測勝率/引き分け率/負け率の合計がそれぞれ250.12/9.36/70.52であったのに対し,実際は249/10/ 71であり,これらの総量としては予測が現実と非常によく一致していたことが分かります.したがって,提案手法は「各試合ごとの予測勝率」を限られたデータと明快なアルゴリズムで算出でき,その予測勝率が現実とよく一致していることが利点である,と結論付けられます.
しいて言えば,僅差予測(予測勝率が0.7くらいまで)では実際の勝利数が少し多く,大差予測(予測勝率が0.9に近い)では番狂わせが少し多かったです.
公式ランキング(など)との比較
今回も公式ランキングと比較します.バスケットボール,ホッケー,バレーボールはリオ~東京以降ランキングシステムを試合ごとの勝敗や得失点差に基づくものに変更しています.それに対し,ハンドボールと水球は公式サイトに公式世界ランキングが見当たりませんでした.これらについては代替ランキングとして以下を利用しています.
・ハンドボールは過去のランキング手法も見当たらなかったので,最新の世界選手権の順位
・水球は過去のランキング手法が生きていると仮定したときのランキングポイント順
予測結果は,提案手法と公式ランキングの予測正解数がそれぞれ249と245で若干提案手法が多かったですが,統計的な有意差は認められませんでした(2値マクネマー検定でp=0.53).
そもそも両手法で予測の見解が異なる試合は41試合(330試合中)しかなく,公式ランキングの改善が進んでいることが分かります.
参考
リオ 262 対 238 (370試合) 有意差あり (p<0.01)
東京 258 対 250 (354試合) 有意差なし (p=0.27)
メダル予測
30のメダルのうち,8個(金5銀1銅2)を的中しました.表彰台の的中は17でした.メダル予測として公式ランキングに加えて,Gracenote,Sports Illustratedのものを見つけることができたので比較します.(海外スポーツベッティングサイトもいくつか探しましたが,5競技10種目すべてを網羅しているサイトは見つけられませんでした)
メダル数はなんと公式ランキングが最良.でしたが,表彰台予測ではGracenoteが最良でした.提案手法はどちらもまずまず,という感じです.Sports Illustratedはスポーツ総合雑誌ですが,リオの時と同様予測性能はそこまで高くありません.
下図はメダル予測の詳細です.それぞれの種目が全体的に順当だったのか波乱だったのかが分かります.特に準々決勝は1試合の結果のみでその後の展開が大きく変わるので,試合ごとの予測性能と結果に大きな違いが出ます.
毎回金メダル予測が一番正解が多いのもこれに関係しています.金メダルはたいてい全部勝ったチームが獲得しますが,銀や銅はそこまでの対戦相手の抽選や組み合わせの影響が大きいからです.
提案手法は得失点のみを利用しているにも関わらず,予測結果はそれなりに良い.ジャーナリスト・スポーツライターなど試合を大量に見れる人間であっても提案手法を明確に上回るのは難しい.という結論はリオ・東京オリンピックから変わらず一貫している,という結果になりました.
手前味噌になるんですが,予測勝率=試合前の力関係が分かるとスポーツ観戦の楽しみって一つ増えると思うんですよね.試合状況が順当なのか番狂わせなのか,格上のチームが負けていて焦っていそうなのか…という推測が一つ増えて,普段見慣れていないスポーツでも楽しく見れるようになるんじゃないかな,と思っています.これからも様々な競技・種目・大会で予測を公開します.誰かのスポーツ観戦ライフの一助となれれば幸いです.
参考資料
東京,リオオリンピックの予測とその分析です.
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