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東京オリンピックの球技予測まとめ

概要

・過去数年の試合結果(得失点)のみを利用してオリンピック球技5競技(バスケットボール,ハンドボール,ホッケー,バレーボール,および水球)の男女10種目の結果を予測した.

・得失点のみを利用しているにも関わらず,予測結果はそれなりに良い.ジャーナリスト・スポーツライターなど試合を大量に見れる人間であっても提案手法を明確に上回るのは難しい.

・この結論は前回大会(リオオリンピック)の時と変わらない.

本文

すでに遠い過去のような気分になっている東京オリンピック.球技5競技(バスケットボール,ハンドボール,ホッケー,バレーボール,および水球)の男女10種目の予測を今大会も行ってみましたので結果を報告します.

より詳細な予測と結果については以下のサイトで公開済みです.

今大会「」ということで,前回大会(リオオリンピック)での球技5競技10種目の予測については論文のセルフ解説という形で記事を書いています.

論文は英語なのでちょっと…という方向けに,日本語ダイジェスト版スライドもあります.

予測性能評価

354試合中予測正解258(予測正解率0.729),引き分け12でした.

画像3

上図は横軸に予測勝率(上位評価から見た),縦軸に頻度(上図)および割合(下図)を示したものです.下図の白破線は予測勝率の値を示しています.

この結果から,予測勝率と実勝率が近く,少しだけ実勝率が白破線より下にある(予測勝率0.6から0.7あたりが顕著)に見えます.実際,(上位チームの勝率の和)/(上位チームの実勝利数)を計算すると1.02となり,提案手法で算出される予測勝率は(若干状チームを過大評価気味ではありますが)実際の結果によく一致していることが分かります.

(「予測正解予測」のみを評価指標としてはいけません.例えば,予測勝率が0.7のチームが10試合行い9勝1敗だった時,予測正解率は0.9と高い値になりますが,「じゃぁ予測の0.7という割合は何だったのか?」ということになります.予測勝率が0.7であれば,それが最も再現されるのは7勝3敗です.9勝1敗という結果は,偶然多く勝ってしまった,または0.7という値が過小評価であった,のいずれかを示します)

公式ランキングとの比較

今回も公式ランキングと比較します.バスケットボール,ホッケー,バレーボールはリオ以降ランキングシステムを試合ごとの勝敗や得失点差に基づくものに変更しています.それに対し,ハンドボールと水球は公式サイトに公式世界ランキングが見当たりませんでした.これらについては代替ランキングとして以下を利用しています.

・ハンドボールは過去のランキング手法も見当たらなかったので,最新の世界選手権の順位

・水球は過去のランキング手法が生きていると仮定したときのランキングポイント順

予測結果です.引き分けは「予測不正解」としています.

キャプチャ2

354試合中,予測正解は提案手法258試合,公式ランキング250試合でした.提案手法が正解率は高いですが,統計的な有意差は検出できませんでした(p=0.27).競技ごとにみると公式ランキングを修正した3競技では予測性能が提案手法と近くなっています(そもそも修正後のランキング手法と提案手法が似ているので).

メダル予測

30のメダルのうち,9個(金4銀4銅1)を的中しました.表彰台の的中は17でした.

女子バスケットボール,組み合わせの有利さとホームアドバンテージを考慮して,日本の銀メダルを的中させていることは褒めてほしいです(笑.

キャプチャ

金銀銅それぞれの予測確率の合計が4.16, 2.00, 1.47だったので,ちょっと自分の予測に近いシナリオになったかな,という感想です.

決勝進出チームはかなり当てられましたが,やはり銅メダルが難しいですね(予測でも確率の合計が一番小さい).予選ラウンドや決勝トーナメントの1試合でガラッと結果が変わってしまいます.

あと,フランスの躍進が目立ちます.予測では銀1銅1でしたが結果は金3銀1銅1.これでかなり予測が外れてしまった…(苦笑.パリ五輪への強化が早めに出たのでしょうか?通常より1年遅い開催だったので仮説としては筋が悪くないと思っています.

各種予測との比較

インターネットで見つけられる,種目ごとのメダル予測と比較します.

いずれも具体的な予測手法などについての言及は見当たりませんでした.

リオの時はSports IllustratedやGracenoteも予測を公開していましたが,今大会では見つけることはできませんでした.FiveThirtyEightやGoldman-Sachsなど有名サイト・シンクタンクなどでもメダル総数予測のみ公開しているところが多かったです.

予測結果です.

キャプチャ3

メダルおよび表彰台予測いずれもAPが最良でしたが,提案手法と有意差は認められませんでした.

提案手法は得失点のみを利用しているにも関わらず,予測結果はそれなりに良い.ジャーナリスト・スポーツライターなど試合を大量に見れる人間であっても提案手法を明確に上回るのは難しい.という結論はリオオリンピックの時と変わらず一貫している,という結果になりました.

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