『本屋さんのダイアナ』 柚木麻子
『本屋さんのダイアナ』 柚木麻子
生々しい
描かれる情景は物語の中のようなドラマのような
フィクションの世界
「本の中の世界」というフィルターが薄くかかっている感じ。
オレンジがかったすこし色あせたような。フィルター。
2人のメイン主人公が時が進む中で
葛藤し気を許し逃げだし強くなる
小学生、中学生、高校生、大学生、そして自立した大人へと
物理的に時が進むことにより様々な場面転換がおこり
それがひとつのドラマのように
“視聴者”は2人の姿を追う
**まるでドラマのようなフィクション
けれど、そう、生々しいのだ。**
その時の感情の動きが
理解できない主人公たちの言動が
わからなくて、生々しい。
どんなに切なくやるせないことが彼女らの身の上に起きようとも
どんなに嬉しく飛び上がりそうな出来事が起きようとも
わからない
わからないという生々しさ
共感もする
音なんて風なんてないのに
2人のいる教室に流れる空気を感じるような。
痛いところを彼女らに指摘されるような感覚も。
感じることもある。音や空気を。
でも
わからない
彼女らの中にどこまでもは入っていけない
ひとりひとりの他人として冷静に見入ってしまう
どこまでも他人事なんだ
彼女らが物語の中で本を読むように
本を読む彼女らを私も読んでいる
彼女らが読む本の世界
と
彼女らが生きる世界
と
彼女らが生きる世界を読む私の世界
3つの世界が同時並行で
どこかでリアルに存在して動いているような気がする。
彩子もダイアナもきっといる
守られていることに気づきながらも
気づかないふりをして
認めないふりをして
自分の体で心で時間で経験をして
守られていることを知り認め弱くなり
自分の足で立つ覚悟をする。
同世代にはまるで刺さるような感覚に
大人ならば未熟なころに戻される感覚に?
今読むには私の心の痛いところに刺さりすぎて若干苦しいけれど
人として「立つ」ためにも大切にしたい1冊になった。
こむぎぼん