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スカーレットは燃え続ける -ふたりコンテンツ会議-

いつの間にか恋人と一緒に暮らし始めて5年が経った。

洗濯機の上でまな板が踊っていた6畳1Kには1年半ほど住んだ。あの家での暮らしもすっかり懐かしい過去になっている。

カレーと同じくシチューがご飯にかかって出てくることにわたしが慣れたように、彼もきっとオムライスを和風で作ってポン酢をかけるわたしに慣れた。


この5年でわたしたちが共有してきたものは沢山ある。

食事、出かけた場所、使用する雑貨、家具、家電。
勧め合った小説、マンガ、アニメ、ドラマ、映画、音楽。

お互いの中で共通して登場人物が生きていることが嬉しい。
ふたりで感じたことを言葉にして伝え合う時間が楽しい。


たとえば、NHK連続テレビ小説『スカーレット』について。

毎日15分ドラマを観てその日の感想を話せるのは一緒に暮らしていて良かったなあと思う点のひとつ。




陶芸だけでは無かったから

大麦 面白かったね、スカーレット。

── 陶芸家の人をここまで注目して見ることが無かったから面白かった。最初から陶芸っていうわけじゃなかったから、そこが良かったな。

大麦 そうだね、荒木荘も良かったよね。荒木荘で最初は女中として働くもんね。

── 最初、荒木荘の時(喜美子:戸田恵梨香)学校行こうとしてたじゃん。

大麦 あ、そうだった!ジョージ富士川(西川貴教)の学校。

── それだって別に陶芸の専門学校って訳じゃなかったと思うし。

大麦 …ちなみに陶芸ってやったことある?

── あるよ。小学生の時かな。なんだっけ、コップ作ったけど、取っ手が取れちゃって。あと、怒った栗つくってた。

大麦 ……怒った栗?クリボーみたいな?

── 余ったやつで、栗ご飯の栗をつくって。怒った顔、描いてました。


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(恋人によるイメージ画)



悲しみを派手にし過ぎない

大麦 わたし、特別好きなエピソードがふたつあって。ひとつは、子ども喜美子の「女にも、意地と誇りはあるんじゃあ!」のシーン。

大麦 あとは最終週の直子(桜庭ななみ)が鮫島(正門良規)について語るシーン。そのふたつがすごく好きなの。直子ってさ、我が強いじゃん。

── うん。

大麦 鮫島って結構ふわっと出てきてふわっとした形で終わってるけど、すごく直子に必要なひとだったと思うんだよね。

── 別れた原因も結局分からずじまいだったね。

大麦 そうなの。別れた原因も分からないし、最終的にそのふたりがどうなったかも描かれて無くて。直子が会いに行った時にはすでに鮫島には別の相手がいたかもしれないし、直子と上手くいったかもしれないし。で、鮫島のところに行く前に交際中の布袋さんのところに直子は行ったんだろうけど、その布袋さんが一度も出てこなかったのが良かった。布袋さんの顔を知ってしまったらもっと同情心が生まれちゃったりしたのかなって思うんだけど、過剰に悲しさを煽るものじゃなくて良いなあって。

── うん、そうね。

大麦 悲しみとか、あと効果音とか演出とかが派手じゃなくて好きだった。結構BGMも無音のところが目立っていた印象なんだよね。よくあるじゃん、ドラマで悲しい気持ちの時に突然大雨が降るやつ。

── ああ、あんまりリアルじゃないやつ。

大麦 降っちゃったかぁ、って思っちゃう。逆の演出をしたら奇妙でちょっとホラーテイストになるのかな。主人公がハッピーな気持ちの時に土砂降りになったり、悲しい気持ちの時に太陽サンサンみたいな。

── 似たようなこと浅野いにおさんが言ってた気がする。

大麦 あ、そうなんだ。うん、スカーレットは無音のシーンがすごく良かった。あと好きなエピソード…あ、待って!忘れちゃいけないのが、あ、思い出しただけで泣けてくる…!あのね、草間さん(佐藤隆太)が元奥さんのお店に行くシーン。草間さんね、草間さん、わたし、めちゃくちゃ好きなの。他人の子供に対してしっかり褒めてしっかり怒ってくれるって、すごいことだと思わない?それが大人になってもずっと繋がりがあってさ。…あの、実はわたしハチさん(松下洸平)と離婚したあと再婚相手は草間さんかなって思ったりしてましたね…

── 僕の好きなエピソードは最終回付近の話なんだけど"みんなの陶芸展"の時に武志(伊藤健太郎)が夢を見たって言って「自分のコーナーはみんな素通り。誰も気にも止めてくれへん。お母ちゃんそういうの不安なったりせえへんの」って言って喜美子が「一人はいるやろ、自分や」って言うところ…めっちゃ良かったっす。

大麦 そういうところ、喜美子だよね。

── 僕はそんな風に考えたことは一度も無かったし、自己肯定感が結構低くて、絵を描いたりデザインしても自分の作ったものに自信が持てなくて。誰からも認められないんじゃないかって。

大麦 言わば武志側ってことだよね。

── うん。でも本来その何かを作るっていうのは自分が作りたくて作っている訳であって、だからせめて自分だけはね、自分の作ったものを認めて「迷ったら自分に聞け」って喜美子は言ってたと思うんだけど、なるほどなと思って。勇気が出ました。

大麦 良いことだねえ。あ、最終回の話をするね。わたし、武志が生きたまま終わるのかなって思っていたの。2年後にいかずにね。

── うん。

大麦 だからびっくりしてしまったし、悲しかったんだけど、武志の亡くなるシーンが描かれていなくて良かったなって思った。そういう悲しい場面をあまり見せない…いや、なんていうのかな。やっぱり、さっきも言ったけど悲しさを派手にし過ぎないドラマだったかなって感じがする。



今後はサイコパスな役が観たい

大麦 あれ、みっちゃん(黒島結菜)が好きなんだっけ。

── うん。周りに臆さずに自分の意見をはっきり言えるとこ好きなんだよね。

大麦 黒島結菜さん、声がものすごく良かった。うん、三津良かったよね。あのとき百合子(福田麻由子)の味方でいてくれたっていうのが大きいよね。

── みっちゃんがね、喧嘩別れみたいになっちゃってるけど、悪人とかでは無いと思うから…

大麦 あれ以上そばにいたらダメってことなんだろうけどね。悪人じゃ無いのは、もちろん。

── だからあんまり悪者扱いしてほしく無いというか。最後にちらっと今どうなっているか知りたかったなあ。

大麦 わたしもちょっとあるかなって思った。圭介さん(溝端淳平)が出てきたから三津もあるかなって期待しちゃった。いや、良い俳優さんたちばかりだったね。戸田恵梨香さん、すごい良かった。松下洸平さんも今後が気になるし。今後どういう役で観たいかなあ。

── サイコパス。

大麦 めっちゃ良いじゃん!怖そう!!

── 吉良吉影みたいな感じが良いと思う。

大麦 街中に潜む殺人鬼。一見普通の会社員なのに、みたいなやつね。

── ちょっと変態的な趣味を持っている。

大麦 え、怖い!怖いよね。良いじゃん。あと今も人気なんだろうけど、今後ますます伊藤健太郎くるんじゃないですかね。なんていうか"若手イケメン俳優"からの脱却というか。

── 実力派俳優?

大麦 そうそう、それそれ。がっつり人間ドラマな映画で観たいね。



炎は再び舞い上がる

── 結局スカーレットっていうタイトルは何を表しているんだろうってずっと考えていたんだけど、それは穴窯の炎だったんだろうなと僕は思うんですよ。

大麦 あれ、そもそもスカーレットってなんだっけ。

── えっ……

大麦 花の名前?

── 違うよ、スカーレットっていうのは色だよ。 

大麦 あ、色か。

── そう。赤色のこと。

大麦 (Google検索)そっか、緋色か。やや黄色みの赤。

── オープニングの歌詞の中にも「炎は再び舞い上がる」って歌詞があって(Superfly『フレア』)、最終週のタイトルも「炎は消えない」で。武志が亡くなったのはどうしようもなく悲しいことだけど、そこで喜美ちゃんは悲しいことを受け止めてそれを悲しいままで終わらせないで、作品に昇華していく強さというか。

大麦 うん。炎は喜美ちゃん自身を表しているのかな。

── 喜美ちゃんの強さを観続けたドラマというか。

大麦 "揺るぎない強さ"だね。

── だから「炎は消えない」って、さっきスカーレットは穴窯の炎なんじゃ無いかって言ったけど、喜美ちゃんの中にある強さだと思うんだよね。

大麦 喜美ちゃんの中にある強さが穴窯の炎であると。

── 喜美ちゃんの中にある強さが穴窯の炎であり、スカーレットというタイトルに繋がるんだろうなって。陶芸家もだけど、芸術家とかはやっぱりそういう強さが必要なのかなって思った。

大麦 仕事(デザイナー)的にどうなの?

── 僕は炎が消えてるというか…。

大麦 え!ダメじゃん!消さないで!笑

── 炎が自分の中にあって消えない人は「絶対良いもん作ってやるぜ」っていう気持ちがどこかしらにずっとあるんだろうね。

大麦 うん、それがアーティストなんだろうね。




スカーレットの放送は終わったけれど、わたしたちの中でスカーレットの炎はこれからも燃え続ける。いつか一緒に琵琶湖にも行きたいね。

ねえ、次はどのコンテンツについて喋ろうか。

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