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すべての子供が幸せに大人になりますように


先日仕事で訪れた渋谷区某所。

人通りも多く、プライベートでも何度が通ったことがある道。

サラリーマンもカップルも学生も行き交い、飲食店がのきを連ね、昔ながらの八百屋さんもあるし、立派なマンション、古いアパートもあり、無機質な町並みと人の生活感もある「町」という感じ。

出先に向かう前にGoogle Mapで場所を調べようとパソコンをいじっていたら、1990年代に起きた事件の記事が出てきた。

殺人事件。しかも犯人はまだわかっていない。

殺人事件現場となった古いアパートが未だに残っており、且つ今も賃貸に出ていて人が住んでいるという。

そこから事件の記事を読み漁った。

高学歴で高収入で、エリート街道を行く一人の女性が、仕事終わりに街で「立ちんぼ」をしていて何者かに殺されたという内容。

「なぜ殺されたのか」にスポットが当たる。

高学歴、高収入、なんの不満があって仕事終わりに身売りなどしていたのかと、そんな記事が大半だった。

一見すると何不自由なく見える。

その人が抱えているものは、誰にもわからない。考えてもわかるはずがないのが本当のところだと思うけど、興味や好奇心で沢山の人が事件を追った。私もその一人。

「何でそんなことしたのか」っていうのが、大半の人が持つ興味。

彼女は殺されてしまったし、犯人も未だにわからないのだから「昔起きた殺人事件」っていう、それだけのことでしか私の記憶にも残らない。

この事件が題材になった映画があるというので、そこから実在の事件から映画化されたものを調べて「幼い依頼人」というタイトルを見つけた。

子供が犠牲になる映画は見ていて本当に辛くなる。

「誰も知らない」
「トガニ」
「子宮に沈める」

いろいろあるけど、私が見た実際に事件現場となったアパートの前を行き交うサラリーマンや、カップルのように、直ぐ側にある事件やSOSを気づいてないだけ、見ないふりをしてるだけで日常にあるものなのかもしれないと思って、見てみることにした。

2013年に韓国で実際に起こった漆谷継母児童虐待死亡事件をもとに、7歳の弟を殺したという告白した10歳の少女に心を動かされた弁護士が、真実を明らかにするため奔走する姿を描いた実話サスペンス映画。

2013年って、ほんの10年前。

その映画にもこんなせりふがある。

弟を殺したと供述し、裁判所で声を絞り出す小学生の姉のせりふ。

「大人は私がどうなっても気にしなかった」
「みんな追いかけてきて理由だけ聞いた」

大人はみんな一緒だ。

興味だけで、面白がって、誰も助けてくれないと言われたような気がした。

劇中にはかなりハードな虐待シーンもある。

同じマンションの住人、担任も日常的なネグレクトに気づいていながら助けようとしない。

役所も、こんなことはたくさんあると取り合わない。

「マザー」でもそうだった。

ネグレクトの母親に気づいていながら、役所の手が入りながら、たくさんの大人の目がありながら、すり抜けてしまう安全な場所。

数年前、当時中学生だった息子が同級生を泊めてもいいかと聞いてきた。

そのあとに聞いた言葉がショックで手が震えたのを覚えてる。

「Kが親に虐待されてる」

内容を聞くと、母親からはお金だけ渡されてコンビニで食べものを買って公園で食べたり

父親が酔って手を挙げると。

息子からは「何も聞かなかったフリをして普通にしてほしい」と言われ、結局2日間我が家に泊めた。

ご飯を食べようというと「僕は買ってくるから大丈夫です」というK。

その日は息子とKを銭湯に行かせて(⚠我が家のお風呂は脱衣所もなく狭かったため)

夜はみんなで流しそうめんをした。

礼儀正しく、家で過ごした2日間は笑顔で過ごしているように見えた。

少しだけ家庭のことを聞いてみると、姉と妹は不登校だということ

ストレスで手の甲を掻きむしってしまうことがあることを話してくれた。


その2日間、私は何をするべきか考えたけれど答えは分からなかった。

温かいご飯と、安心な寝床を与えてあげることが精一杯。

友達に相談すると、児童相談所に通報するべきだと言われたが、迷ってしまった。

通報したら、何が起きるんだろう、保護されるのか、Kはそれを望んでるのか、一番どうしたいかを本人に聞いてあげれば良かった。

「またいつでも遊びに来てね」とだけ言って見送り、その夜に息子と話し合いをした。


何も知らなかったことにはできないということ

通報したほうがいい、もしくは相談ダイヤルにかけてみないか

このままではKの家は何も変わらない

学校に相談してみようかなど、夜な夜な話し合って

匿名で児童相談所に通報することにした。

電話をすると「見えるところにアザや傷はあったか」「着ている服はどうだったか」などいくつか質問をされた

そして、次回またそのようなことがあった場合は、泊めずにすぐ通報するようにとのことだった

そのあと、どうなったのか、どういう対応がされたのかは聞かれなかったけど

中学校に、児童相談所から連絡があったそうだ。

これは後日、三者面談のあとに担任の先生にKの相談をしたときに発覚した

学校でも、K本人と母親の面談が行われたらしい

「家で温かいご飯が食べたい」とKが言ってました


担任の先生からそう聞いたときに、涙があふれた。

これが正しいことだったか、方法もなにもわからない。

でも、ひとつ言えることは

すべての子どもたちを大人にしてあげることが、大人の仕事であること

すべて子どもたちが、笑って大人になれること

すべて子どもたちが、幸せに大人になって欲しい

本気でそう願っているし、SOSをもう見逃さない。

でも、やはり思い出すたびに考えるのは、何が正しかったのかということ

どこまで踏み込むのか、責任を持てるのか、何か問われたら、責められたら

そう考えてしまう気持ちがあるのも本当だった

子供が健やかな世界は幸せで、愛が満ち溢れてることに間違いはない。

あとは大人の責任と覚悟の問題なのかもしれない。

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