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仔犬くん。

チューしていいですか?


ちょっと酔った君が、
仔犬のように伏目がちで言った。
出張先で懇親会した帰り、
新幹線の隣の席で更に2缶飲んだ君。
人の少ない夜道。


ん〜。チューって、どんな?
あたしも酔ってたけど、笑いながら聞いた。


キス、したいです。
今、ここで、キスしたいです。
抱きしめて、チューだけしたい。


ありがと。んとさ、
チュー、していい前提で言うけど、
チューしたからって、
あたしは君のモノにはならないよ?
君には大切な人がいて、あたしもいる。

今ここで、チューするだけ。
本当、今だけ。


じゃぁいいよ。でも。
今、君とチューしたとして、
明日もし、
あたしが違う誰かとチューしても
それはそれでいいんだよね?


それは…嫌だけど…


じゃぁ、やめとこ。
君は可愛い後輩。
よしよし、だよ。
ふっと笑って仔犬の頭を撫でた。
あたしも、そこそこ酔ってる。


仔犬は、あーもう!!って言いながら、
その手を振り払って、
あたしを思いっきり抱きしめた。
そして、無理やりチューした。


分かってるよ。
でも、なんか今、チューしたかったの!
仔犬の割には冒険に出た。


ありがと。
でも君、今どーせ、
むしゃくしゃしてるだけでしょ。
それで済むならいいけどさ!
とりあえずチューはもらっとくね。
ありがと。


あー!全く響いてないのムカつく。
俺、本当にチューしたかったんだよ!


だからしたじゃん。


じゃぁ、もう一回していい?


いちいち聞かないでよ。
したくせに。


仔犬はまたチューをして、
今度は、ずっと離れなかった。
あまりに長くチューしてるから、
あたしが笑って止めてしまった。
そしたらまたチューしてきた。


君は、可愛い後輩くん。

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