半年後のしいたけと私
半年後私はどうなっているだろうか?
天狼院書店のライティングゼミの受講が終わり、文章を書くことに新しい意味を見つけられているだろうか?挫折しつつも16回全ての課題提出が出来たら自分は何か変われるかもしれないし、変わらないかもしれない。目の前の物事になるべく手を抜かない事、ダメな自分から逃げない事を目標に受講を進めたい。
来週の予定もわからない私には、半年後はとても遠くもあり、あっという間に来そうでもある。わからないことだらけだが、自分を変えるために勉強するのは楽しみでもある。
半年後といえば、ライティングゼミと同じくらいた楽しみな事がある。
4月2日に榾木(ほだぎ)に菌種を植えた原木栽培の椎茸で最初の収穫ができるのも、半年後の予定なのだ。
ここで唐突に登場した椎茸について説明したい。
ライティングゼミ第一回目の講義の日、私は知人と小浜でしいたけの榾木植え付け体験に行ってきた。そこで2本の原木に菌種を植えてきた。長さ1m、切り口の直径約10cmの原木は今実家の庭に覚醒の時を待ち眠っている。
作業当日は朝10時に集合。
作業は次のように進んでいった
まず直径10cm程度の原木達から好みの木を選ぶ。と言っても、選ぶのは初めてだし、大小さまざまな原木を前に何を基準にすればいいのかわからなかった。まごつく私たちを見て、指導者が選び方のポイントを教えてくれた。木の太さと節の少なさだ。より大きい原木だと木の中に栄養があり、たくさんの収穫が見込めるが、重くて管理が難しい。また節が多いと菌種を植える場所を決めにくいので避けた方が良い。この2つのポイントをもとに、私も同行者の母も選んでいった。
母は無難にちょうど直径10cmでまっすぐな木を選んだ。私はというと、悩んでいた。大きい木にした方がたくさん収穫できるけど重いから持って帰りにくい、だからといって細い木にすると、なんだか損した気分になって来た。そんなことをウダウダ考えて結局大は小を兼ねるから、と太めの木を選んだ。そしてこの直後に木を作業台に運びながら、母と同じくらい細い木にすれば良かったなと後悔することになる。
選び終わった私たちを見て、指導者から「今日は時間があるので1人1本のところ1人2本選んでください」と指示があった。嬉しいような複雑な感情に包まれる。たくさん原木栽培できるのは嬉しいが、その分持って帰る木の量も増える。車に乗り切るかな?と不安になりながらも、1本目の失敗をもとに2本目の原木は細くてまっすぐな木に決めた。太い木と細い木でどれほど収穫量が変わるのか、実物である。
選び終わったら、次は菌種を植える場所をマーキングする。そのマークに合わせてドリルで穴を開けていき、穴の中に菌種をトンカチで打ち込んでいく。
これでしいたけの榾木(ほだぎ)完成だ。
あとは、風通しがよく、湿度と日光が適度にある場所に置いて、キノコの菌が原木に行き渡るのを待つ。まあそんな森の中のような環境は住宅地にはあまり無いので、庭の一角にすのこを置き、その上に原木を置いてすだれをかけている。これで正解なのかまだ分からない。環境が悪くて椎茸菌全滅する可能性はある。
運半年ほど置くと、菌が原木に行き渡る。
ドリルは3キロほどあるので、ずっと持って作業をしたら肩が痛くなった。
実際にやってみる前の想像では、切ってからすぐの新鮮な木に菌を植えたら、次の日からキノコが生えてきて、生え終わり次第木は捨ててまた新しい木に菌を植えるんだと思っていた。今思うと、チップによる栽培を想定していたんだとわかった。
しかし実際にやって見ると予想外のことが多く、よく写真で見る木に生えた椎茸について、あまり知らなかった自分に驚いた。
とくに驚いたポイントを3つあげる。
まず、しいたけ原木は最短5年は収穫できる
植える菌の種類にもよるけれど、春に植菌して1年目の秋に最初の収穫を終え、それから毎年の春と秋の2回の収穫ができる。そのサイクルを5回繰り返してその原木は役目を終える。原木の栄養は椎茸に吸収されてだんだん枯渇していくので、3年目を境に収穫量は減っていくが5年以降でもまだ生える原木もあるらしい。実際に5年目の原木を見せてもらったが、原木10本のうちに2本の木からまだ1〜2個の椎茸が生えていた。
次に、使う原木は半年?ほど寝かせておく作業が必要になる。新しい木の方がいいんだと思っていたが、違うらしい。木の水分量がちょうど良くなるようにこの作業が必要になる。体験ではこの作業が終わった木を使話せてもらったので、実際は椎茸を原木栽培しよう!と思ったら植えるまでにもかなりの時間がかかる。
ここまで手間がかかる作業が必要な榾木によるしいたけ栽培と、菌を植えた材木チップを固めたものを購入して数週間置くだけで椎茸が栽培できる方法がある。
母は通販サイトでこの方法でしいたけやなめこ、しめじなどのキノコを収穫していた。チップを固めたものには、初めから菌が隅々まで行き渡っているので早いと数日から1週間でキノコが生えてくる。榾木は木の中に菌が行き渡るのを自然に任せている分、時間がかかる。また、菌種の埋め方が浅すぎると菌が中まで入らないし、埋め方が深すぎて、上に隙間ができてしまっても良くない。菌種を植えるスペースに隙間ができると、そこから椎茸以外の菌が入り込み、別のキノコが生えてきてしまうらしい。
自然を相手にすることによって、無駄なものを省かれたところに生きているんだなと感じた。ネットで簡単に買える栽培キットがあれば、原始的な方法でやる必要はないと思っていたが、それぞれの違いがわかって、より椎茸栽培について深く知りたくなったのは嬉しい誤算だった。
ふと思って、ドリルが発明される前の原木の植え付けはどうやっていたのか聞いてみたがわからないとのことだった。
知識や経験も本来はキノコの菌のようにゆっくり時間をかけて頭の中に染み込んでいくのが自然で、それが1番長く残ると思う。今必要な知識は今すぐに手に入れるのが1番だが、その知識は今しか使えない寿命の短い知識なのかもしれない。半年後を考える時、半年経っても変わらないものにも目を向けたい。
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