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『グランジュ・ルノルマン・カード入門 神話と錬金術の占い』刊行記念 R.M.Bijou先生・鏡リュウジ先生トークショー②

「グラン・ルノルマン・カード」の日本初の本格的解説本『グランジュ・ルノルマン・カード入門 神話と錬金術の占い』の刊行を記念して開催された著者、R.M.Bijiou先生と占星術研究家の鏡リュウジ先生のトークショーの模様、その2回目をお届けします。
>>1回目はこちら

日時:2023年11月10日(金) 書泉グランデ7階イベントスペースにて開催

グランジュ、そしてブルトーの謎に満ちた経歴


 本題に入りましょう。グランジュの経歴というかどうやってこれが成立したかみたいな話や、このカードを最初に作ったブルトーさんという方のことを改めてご説明いただけますか。

B はい。通説によると、(マダム・)ブルトーさんというのは伯爵夫人でマドモアゼル・ルノルマンの自称弟子なんです。当時占いは良俗に反したり下手をすると社会を扇動する可能性もあるということで禁止令があって、逮捕されることもあった。女性占い師の急増とブームがあいまって、ルノルマンも何度か投獄されています。そんな中占い本を書きましたって公表するのは難しかったんですね。まして伯爵夫人というのが本当であれば尚のこと。画像にある「ラ・コンテッセ(伯爵婦人)」のあとの「※※※」というのが「作者しらず」みたいな感じで書かれているんですが、それがせいぜいなのかと。

B 1845年に発売されたブルトーさんが書いたグランジュ解説本は全部で5冊あって、その5冊のうちの一冊目にこのように各カードの解説が書かれています。「ロワドゥトレフル(Roi de Trèfle)」と書かれた部分が「キング・オブ・クラブ」の解説です。「グラン・スジェ(Grand sujet)」っていうのが真ん中のメイン・イラストの事です。この後続いてそれぞれの部分の解説が書かれているんですけど、各カードに対して1ページの半分程度しか解説されていません。

 1枚につきこの1冊ではない? 54枚のカードにつき1冊?(笑)

B いえいえ、1枚のカードの各部位に一文ずつです。一冊の内1/3程度が解説であとはスプレッドの解説やサンプルです。

 じゃあ市販のタロットカードについてくる小冊子と大差ないんですね?

B そうなんです。だからただ訳してもすごく薄い本になってしまって理解には至らない。そこで、現代でも皆様が気軽に使えるように解釈を広げたんですけど、私のオリジナルカードではないので、彼女(作者)の思想や、伝えたかったはずの意味、そういうものを組み合わせて書いたのがこの本(『グランジュ・ルノルマン・カード入門』)です。それには19世紀のフランスの生きた空気を理解し、感じる必要がありました。

 年代でいうと、ルノルマンの逝去から2年後にグランジュがフランスで発売され、3年後にドイツでプチが発売されていたわけです。だからプチのほうはルノルマン本人とは明らかに関係がない。ただ、こっち(グランジュ)はルノルマンと関係がある可能性は否定しきれない。

B そうですね。鏡先生にも教えて頂いたんですが、彼女は何種類ものカードを使って占いをしていたらしいんです。もちろん、グランジュではなく、トランプやオラクルカードみたいなものをたくさん使って、いろんな種類のカードを1枚ずつめくりながら占いをしていたようで。

 メインで使われていたのはピケカードという32枚必要なトランプだったらしいんですけど、記録では後年、タロットも使っていたし、また興味深いところでは「星座を描きこんだカードを使っていた」という記録もある。まあ、カードだけではなく手相占いや交霊術も行っていて、自分ではシビュラ(神託者)とか女預言者と自称しているので、純粋なカルトマンサー(カード占い師)といえるかどうか。

B そうなんです。

 その後いろんな人がトランプに因んだものを出していったため、トランプ占いの人になったのかなと。ただルノルマンの解説の中にも自伝的な内容がたくさん入っていますよね。僕もあまり読み込んでいるわけでもないけど、政治的な予言や有名人とからんだ予言と言いつつ、ほとんど自分の武勇伝を書いているようですね。それが独り歩きしたのか、面白がった当時の人たちが、雑誌や新聞で話を膨らませてしまったものが残っていった。占ってもらった人の日記もパラパラ出てきているんだけども、それも記憶が曖昧で真実かどうかもわからない。
 ただルノルマンの記述に絞って調べていくと、初期は32枚のカードをメインとしていたけど、後半になってはタロットも使うようになっていたことはわかっています。他にも「卵の白身占い」とか「ギリシャの32本の棒を使った占い」とか、ルーカ・ガウリコという有名なイタリアの占星術師の名称を使った占い用の鏡を用いていたり、あまり関係のないであろう物も使って占っていたと書かれていました。
 また、他の記述によると、3種類のカードを同時並行して使ったみたいな記録が残っていて、先にも述べたように星座の描かれたカードを使っていた、という記述もあるので、そうするとグランジュとの関連も想像したくなる。ただ、ルノルマンに先立ってフランスでは占い専用の絵のあるカードが19世紀初頭には現れていますから、ルノルマンはそういうものを使っていたので、グランジュそのものではなかったろう、というのが穏当な見方のようではありますが。

B 恐らくそうですね。ブルトーさんはそこに当時人気だったエジプトの思想やヘレニズム文化、オカルト思想を先人の書物から作り上げていったのじゃないかと思います。マドモワゼル・ルノルマンは胡散臭いよっていう人は当時からいっぱいいたので、ディスる本や暴露本みたいな感じのものもたくさん出されています。

 まあ、話を盛りまくっているわけですから、それは違う、と批判する人もきちんといたわけですよね。逆に言えばそれほど人気だったというわけですが。

タロットカードとは発想が異なるグランジュ・ルノルマンカード


B 当時のグランジュの1ページに“運命の輪”と書かれた円が描かれていて、これは何だろうと思い調べてみたら、おみくじなんですよ。デッキの中から12星座のカードを取り出しておいて、棒で指した数字のカードをおみくじ的に使ってねってことらしいんです。

 ランダムに棒をさすだけなんですか?

B そうです。目を瞑ってさすだけという簡単なやり方で。

 そんな簡単なやり方があるの? へぇ~。19世紀ごろの通俗的な占い書にはラファエルの輪、ペトシリスの輪という生年月日と思い浮かんだ数字を組み合わせる占いがよく載っています。近代の発明と思いきや、案外4世紀ごろにそれと類似した占いの起源は遡っていけるようなんですけどね。

B 1963年のフランス映画『5時から7時までのクレオ』でグランジュが登場するんですが、占うときに、目を瞑ってカードをさしていました。目を瞑って指さしたり、思い浮かんだ数字を使うというインスピレーション頼りのところに神秘性を感じていたのかも知れませんね。グランジュも数秘術が使えるようできているんですよ。今回の書籍では触れてないんですけども、カードごとに数秘の数字が割り当てられていて、アルファベットはもちろん、花とか星座とかにも数字が振り分けられていて、更に要素を盛るのか?!と。ただでさえ読まなきゃならない部分が多いので、泣く泣く省いたんですが。グランジュのリーディングで特につまずきがちなのが組み合わせ問題というのがあって。

 組み合わせっていうのは……?

B 例えば混在カードの下、左右を2枚以上出した時に、ハートのエースの右下とクラブのエースの左下を組み合わせて読んだ時にどういう意味になるのかなというのが組み合わせの解説になります。これがグランジュの大きな特徴になります。

 普通のタロット占いになれてしまった人間ほど、却ってグランジュをマスターするのに時間がかかるかも知れませんね。発想の仕方が全然違うんですよ。出生占星術とホラリー占星術ぐらいの大きな違いがあると思う。
 普通のタロットは場に出ているカードの位置とカードの意味を読み合わせていく。でも(グランジュは)一枚目のカードの位置とその他のカードの空間を絵として見ていくアプローチなので全然違うんですよ。
 例えるならテニスとサッカーはそれぞれ違う楽しさはあるけども、スポーツだから一緒でしょうっていわれても、全然違うものじゃないですか。タロット占いと同じ占い方もできるけど、それだとずっとテニスをやっていることになる。なので、せっかく使い方の規定があるので、グランジュもやるなら、この楽しさを身につけないともったいないなと思います。

B ありがとうございます。グランジュ自体、本当は1枚引きは推奨されていないんですが、カードの意味を知っていただくためにどんどん1枚引いて欲しいです。X(旧Twitter)のタイムラインを見てると、皆さんすごくお上手に読まれてるんです。私の解説要らないじゃん! って思うぐらいに。でもここからなんですよ。1枚引き、3枚引き、5枚引きにしていくと、もううわぁぁぁ! ってなるんじゃないかな。そこまで頑張っていただきたいなと思っているんですよね。

③に続く。。。


登壇者プロフィール
R.M.Bijou(ルージュ・メイジ・ビジュー)

占い師、グランジュ・ルノルマン・カード研究家。幼少期に父から贈られたタロットカードをきっかけに占いを始める。音楽大学在学中よりWEBデザイナー、歌手、占い師を兼業していたが、2017年、占い師に一本化。グランジュ・ルノルマン、タロット、西洋占星術、ルーンなどに加え、生来の第六感を駆使して多方面からアプローチする鑑定を行い、占術の講座も開催。フランス語の翻訳も手がける。座右の銘は「無知の知」。

鏡リュウジ(かがみ・りゅうじ)
占星術研究家、翻訳家、京都文教大学客員教授、東京アストロロジースクール主幹。10代のころより占星術や秘教などに関連してさまざまなメディアで活躍、30年以上にわたって圧倒的支持を受ける。『秘密のルノルマン・オラクル』(夜間飛行)など著書多数。責任編集にユリイカ増刊『タロットの世界』がある。

『グランジュ・ルノルマン・カード入門: 神話と錬金術の占い』
R.M.Bijou 著、鏡リュウジ 解説、AKi xenubilum イラスト
2023年10月24日発売
A5変形 344ページ
ISBN:9784909646705、定価  4,950円(税込)


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